くまだから人外日記

くまだからくまなのだ。

それでいいのだ。

サウザント・クロノス・ナイツ 銀髪のノーラ『四つのクロノス その2』 55

2020-05-24 01:26:53 | 【偽書】シリーズ
「ああ。俺の爺さんはあの教皇領の塔の建立に人足として駆り出された事があるそうなのさ。その時、二つある塔のうち、東側の塔を受け持ったんだそうだ。そこで上に登る螺旋階段の回廊の途中であるカラクリを作る班に入れられたらしい。それは回廊を遮断して螺旋に登らなくても上層階と繋がる言わば近道…と言うか本来は外敵が螺旋階段を上がってきた時鉢合わせせずに下へ降りる言わば抜け道だ」
「なる程。それは興味深いな。因みに西の塔はどうなのだ」
「爺さんは東側しか加わっていないから西側については分からない。だが東側なら間違いない筈だ。目印は途中の回廊部分にある色違いのはみ出した岩場の壁石、これを押し込むと回廊が隠された壁が出て来て塞がれ、新しい階段が現れるそうだ」
「色違いの壁石か。何かの役に立ちそうだね」
「実際には試した事は勿論無いが、俺の爺さんは嘘は言わない人だった。幼い俺にも分かる様に丁寧に教えてくれた話さ。役に立てばいいがな」
「ありがとう。ボク達必ず教皇様を助け出すよ。待っていて。町の人達が互いに仲良く暮らせる様にするからね」
「しかし旦那よ。こんな若いしかも娘さんまで従軍させるとは、帝国も人手が足りないのかい?」
「だそうだ。ノーラ」
「まあ、実際ボクは女だし、元服もしていないけどね」
「息子の恩人とは言え若い娘さんが争い事など…」
「奥さん、それは大丈夫だ。このノーラは今回の騎士団の総大将、騎士団長なんだからな」
「えっ…」
「お前さん、女だてらその若さで騎士団長…?」
「お姉ちゃん、団長様なの?凄いや。だからオイラを救ってくれたんだね正に騎士中の騎士だ」
「騎士団長だからじゃないよ。君の命が危なかったから助けただけだよ。それは普通の事だろ」
「あの暴れ丑の前に躊躇なく立ち塞がれるなんて常人ではとても」
「そうですよ。やはり若くても徳ある騎士様とはそう言うものなのですね」
「まあ、ノーラは別格、特別だ。星域を治める執政官をダチ呼ばわりする奴だからな」
「それ誉めてるの?けなして居るようにしか聞こえないんだけど」
不満げな顔をしたノーラを見て少年が笑います。
「アハハ。改めてありがとう騎士のお姉ちゃん」
「ノーラでいいのに。うん。今度はちゃんと周りに気を配って歩こうね」
「それとこれは気持ちばかりのほんのお礼なのですが…」







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筆者敬白

黍(きび)色ミラージュ騎士団(四聖獣〜戦巫女の間のストーリー) 24 第2章招かれざる者 3

2020-05-18 12:05:33 | 【偽書】シリーズ
「それではクィーン。西の国境線へと出立致します」
クィーンにお目通りを願い、出発を告げるギルバートにクィーンはその労を労います。
「ギルバートよ、難事ご苦労である。私は無事西を静定し報告を待っておるぞ」
「かしこまりました。無事解決して参ります故、しばしお待ちを」
「ところでギルバート。今回の遠征にリンドバーグの姿が無い様だが」
クイーンはギルバートの配下の一人、リンドバーグの姿を探してそう言いました。クイーンは黍色騎士団の顔と名前が一致、つまりクイーン配下のいち騎士団に過ぎない彼等の事を存じていた様です。
「今回は新たに加えたこのステラの初陣として、リンドバーグは留守番を命じております」
ギルバートに促され、一歩前に進み出て、ステラは女王に名乗り出ました。
「初にお目にかかります、クィーン。私がステラ…」
「そうですか、貴女がステラ。女の身で大剣を振るうのは難儀でしょうが、騎士として出るからには相応の働きを期待しますよ、ステラ」
ステラの名乗りを遮る様にクイーンが言葉を発したのには理由があるのか、単に皇族特有の自己中心的なものから来るのかは定かではありませんが、それは現在ではあまり重要な事では無いでしょう。
ギルバートは大きく頷き回答します。
「かしこまりました。必ずや期待に応えて参ります」
「頼みましたよ」
小さく微笑むクイーンはいつものそれでありました。
「それでは我れら黍色ミラージュ騎士団、西の国境線の外敵を諫めて参ります」
騎士達は一斉にクィーンに捧げ剣を取り、一礼して扉へと向かいました。

その姿を見つめるクイーンは小さく呟きました。
「黍色を纏いし騎士に異色の騎士が加わるは残酷な事やも…それもあやつの命運か」
クイーンは初めてギルバートと対面した日を回想するかの様に。


「この人は誰?」
「この者はクイーンを守護すべく呼びよせたる者、歴史を動かす者を守護すべく帝国より招き入れたるダギリアのドルト・エンワ・ナンレートと申す騎士にてございます」
「わらわを守護じゃと」
「左様。我が太主クイーンを、です。モルザ姫様」
略装の騎士装束の若い男は一歩歩み出てそう申したそうです。
「ふうん。騎士か。ならばわらわに変わらぬ忠誠を誓え」
「いかようにして」
「決まっておろう。古来より従者はキスをするものであろう」
「忠誠の…ですね」
若い騎士は幼いモルザの前まで歩み寄り、片膝をついてモルザの右手を取り顔を近づけて軽く唇を手の甲に当てました。
「変わらぬ忠誠をお誓い致します。我が主人クイーンエルザ」




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サウザント・クロノス・ナイツ 銀髪のノーラ『四つのクロノス その2』 54

2020-05-13 10:19:27 | 【偽書】シリーズ
「フフン。どうやらあの鍛冶屋の話は真実だったか。残念だったな。守備兵達よ。我等騎士団は隠し通路より上を目指す。今から追っても無駄だ。お前らのいる先の階段よりも近道だからな」
「何をしているのだ。くそう。こいつめ。食らえ」
十数本の刃がひとり抵抗するマタワ・リド・ヒョウイリヤの身体を貫き通します。
立ったまま絶命するマタワ・リド・ヒョウイリヤ。
その瞳は最後まで閉じられる事無く大きく見開いたままでした。
「敵ながら天晴れな騎士。しかしこのカラクリは一体?」
「下へ通じる通路が塞がってしまいました。壁を崩すにはかなりの道具と人足が必要です」
「つまり我々も奴等も上を目指すしか無いのか?しかもこの壁では援軍も上がっては来れまい。まさに背水の陣か…互いに最後の一兵卒までの争いだな。こんなカラクリが施されている事を、奴等はどこで知ったのだ?」
分隊長マズカ・ガラン・ランマは眉をひそめて考え込む間もなく部隊に号令します。

(回想)
「旦那、すまねえ」
「いいって事よ。それより大丈夫なのかい?俺達帝国の騎士に救われたとか知れたら、お前さん家族は反乱軍に目の仇にされやしないか?」
「家族を助けてくれた相手が誰とか関係ないさ。礼は尽くして当然だろ」
「そうか。まあ、お前さん達夫婦の子供だ。無事で良かったよ」
「ほら、シエロ。助けてくれたお姉さんにお礼を言いなさい」
「うん。ありがとうお姉ちゃん。助けてくれて」
「良かった。どうなる事かと思ったよ」
子供の笑顔に笑顔で返すノーラ。
「それにしても、こんな所で遊んでいるなんて」
「あの反乱軍が教皇様を拉致してからというもの、街は変わってしまったんです。次第に街の者も反乱軍におもねる様になり。でもウチの主人の様に教皇様や帝国の側にありたい者も多少は居るんです」
「昔の様に反乱軍の顔色を伺う事無く活気に満ちた街を取り返したいよ。それにはあんた達騎士団が教皇様を解放してくれなきゃな」
「もっともだね、スペクター」
「そうだな、ノーラ。なあ店主よ。あの教皇領のシンボルである塔を何とかして攻略したい。知恵は無いのか」
「貴方、この騎士様達にお祖父様の話をしてあげては?息子を助けて頂いたお礼として」
「そうだな。これは確かめていない話なんだが、あの塔にはカラクリがあると俺の爺さんから聞いた事がある」
「カラクリ?」





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