くまだから人外日記

くまだからくまなのだ。

それでいいのだ。

天宮の乙女達…タジリスクの聖戦(9G) 104

2018-11-14 09:52:38 | 【偽書】シリーズ
「こんな時、ポットやクインが居てくれたなら」
「呼んだ?生憎私達は蘇生師でもネクロマンサーでもないわよ」
嘆くエイミーの背中越しにポットとクインが声をかけた。
「間に合いませんでしたか…」
「あんた達、一緒だったのかい?」
「負界領域についてジュンに連絡していたら、クインも帝国の機動艦で近くへ行くから合流してくれって」
「当のジュンはどうした?」
ミトの問いにはクインが答える。
「イコルを伴い向かっているそうです。途中フィンからも連絡を受けて、合流してから、とか」
「やっぱり脱獄したのか」
エイミーが意を得たりという表情で言う。
「どうするのさ。メリーはここには居ないし、ルリはこのザマだ。いくら医療技法に長けたポットでも仏さんは無理だろ」
このザマですいません…ティガー。

「ジュンからの、正確にはジュンと連絡が取れたフィンからティガー、あんたに伝言よ。“窓”に口づけを忘れるな、だとさ」
「窓?…フィンから?もしかして…」
「フィンを担当していた監獄の刑務官からの伝言だそうよ」
「ギムル…か」
「古い知り合いですか?」
「ああ。年の離れた幼なじみみたいなものさ」
少しはにかむ様にティガーは下を向いて、再度顔を上げた。
「で、何なんだよ。窓って」
ミトが訝しんでティガーに聞く。
「“窓”は私の星の信仰の対象…みたいなものさ」
「何の窓なの?」
ポットが問い詰める。
「過去と未来、現世と来世、もうひとつの世界を繋ぐとされる窓の例えさ。いつも我々は幾つの時間や時代と繋がっている…ってみたいな意味だよ」
「それが何を?」
「ひとりの命には限りがある。でも、もし他人が自分のそれを分け与えられたなら」
「もしやそれは…いけません。ティガー。窓を開けては」
「意味が良く解らないよ」
「失った者へ自分の命のエネルギーみたいな物を代わりに分け与える…って事だろ」
ミトの言葉にエイミーが絶句する。
「ティガーの母星ではそんな事が可能なの?俄には信じられないんだけど」
ポットは怪訝そうにティガーに言った。



「気が付いたか?」
「…座敷牢?そうですか…あの祭壇で私はクロスを…」
「愚かな事をするでない。お前の妹は…クロスは望んであの儀式を受けておるのだぞ。それを姉のお前が邪魔をして何とする」
「儀式は?」
「お前さんの無茶のせいで中断された。どうする気だ。お前のせいでクロスは今や…」
「そうだ。クロスは?クロスは無事なんですか?」










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【偽書】夏娘跳ねる 『蹴球同盟・乙女系』(夏娘2014) 25

2018-11-12 09:39:48 | 【偽書】シリーズ
「芦田さんて意外…」
「男子に向かってあんなセリフポンポン言う様には見えないけどね」
「顔は美人だけど、結構キツいし自信家ね」
女子の噂話の輪から私達女子サッカー同好会(無事生徒会に書類を出して、そう名乗れる様になった)三名は、私の作った練習メニューやらルールブックを眺める。
「始ちゃん。何だか妙な賭けをしちゃったのね」
「そう?」
始ちゃんはけそっとした顔を崩さず言う。
「ごめんよ。私が何だか余計な事を芦田さんに言ったばっかりに」
「至(いたり)は別に悪くないよ。確かに恋愛ってのは相手方がある話なんだし」
「でも、入部の賭けとか無いでしょ」
私は始ちゃんに言う。
「優美はさあ…部員欲しくないの?」
「欲しいけど、恋愛の結果を賭けにするとかはやり過ぎじゃないの?」
「ん〜。芦田さんのあの走りは欲しいよね。体育の授業で最初に基礎体力の測定での短中距離記録は凄いよ」
芦田さんは短距離で学年一位の記録をあっさり樹立して、疲れたがら手を抜いたと言う千メートル走でも楽々一番だったのだ。
他の記録もクラスで女子五番以内だし、意外だったのは、脚力だけでなく、背筋も含めた体幹のバランスが良い…つまりブレない事だった。これは対人競技であるサッカーにとって貴重な事である。
対人スポーツをする始ちゃんや至(いたり)も左右は安定していたが、彼女は陸上だから基本対人ゲームではないのに左右は勿論、上半身と下半身のバランスでは芦田さんには適わなかった。
始ちゃんは下半身が強すぎ、至(いたり)はバスケをしていただけあり上半身は文句無しだが、脚力はジャンプを抜いてやや不安があった。

「芦田さんは走るだけじゃなくて、砲丸投げもかなり飛ばしてたし、ロープもスイスイ登ってたわよね」
至(いたり)が驚いた様に言う。
「小さな頃からキャッチボールとかもしていたらしいね。同じく陸上をしていたお姉さんしか兄弟姉妹は居ないのに」
後で知ったが、芦田さんの憧れのサッカー部員の先輩の幼なじみに野球部の人がいて、よくキャッチボールやサッカーもしていたらしい。まあバランスの良い鍛え方よね。
「だから、同好会に来てくれたら即戦力だよ」
「だからって…」
「まあ、かなりの自信家みたいだから、その先輩次第だね〜結果は」
「恋愛かあ…。私には縁遠い世界かな〜」
至(いたり)は他人ごとだと言わんばかりに空を見る。
「至(いたり)、何で決めつけた様にそんな事言うわけ?」









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天宮の乙女達…タジリスクの聖戦(9G) 103

2018-11-03 03:02:50 | 【偽書】シリーズ
「ルリ。ルリ…」
誰?私の名を呼ぶのは。
「あの炎の中でよく生き延びたわね」
あれ?メリー。良かった。無事だったのね。でも目の前のメリーは何だか若返ったような。
「イコルやティガー、そしてクインも無事だったよ」
ポットが言う。
あれ?どこ?ここは…。
「よく咄嗟にあんなマジックを」
ミトが驚いた様にいう。
「流石講座のリーダーですぅ」
シャーが私に笑顔を見せた。あれ?確かシャーは今は母星で…。
そうか。やっぱり私は死んだのね。ああ、最後にママに会いたかったな。ワガママな娘でごめんねと一言謝りたかった。
「さあ。これで全員揃ったね」
ジュンが人懐っこい笑顔を見せた。
「それにしても、イコルやティガー同様にルリも見事なミイラ姿ね」
あれ?私全身包帯姿?確かこれは。
「味方を高熱などの攻撃から守る為にぃ、大気中の分子構造を変化させてぇ硬い胡桃の殻の様に皮膚の外側を覆い隠す技を使えるなんて、流石リーダーは違うですぅ」
シャーが感嘆する。
「しかもそれは自分自身には放てない騎士技。でもクインの機転でそれをルリに水晶で反転させ、ルリに跳ね返すなんて、とっさの判断とはいえ冷静ね。百列の姫様は。確かに反転させれば、技を放ったのはルリではなくてクインの扱いになるものね。結果ルリ自身も身体の外側に殻を纏う事が出来て、古龍からの高温の火炎から身を保護出来た」
「それもクインのあの身体があってこそですね」
レイミーとエイミーは交互に現れ一人会話をしてみせる。
「え…っと。クインは無事だったの?あの古龍の超高温の火炎硫から生き残れるなんて…」
「やはりルリは知らなかったのか。クインの身体の秘密を」
「秘密?何?クインの身体の秘密って…ミトは何を言ってるの?」
「クインはね…」



「駄目だ。やはり息をしていない」
ミトは私の身体を何度も揺すったり口元に耳を当てて自発呼吸の有無を確認する。
あれ?さっきは生きてるって言ってくれていなかったっけ、ミト…?
「だから早く進もうと言ったのに」
「仕方無いだろう、エイミー。私やあんた達だって負界領域の知識も無く闇雲に進むなんて無謀な賭は出来やしないよ」
ティガーは落胆を隠さない。
「折角ジュンと交信出来て、負界領域への知識を得たと言うのに手遅れだったなんて…。ルリ、返事して!ルリッ!」
「あまり激しく揺するな」
「こんな事で死ぬ様なリーダーじゃないでしょ。あの時だって…」









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