くまだから人外日記

くまだからくまなのだ。

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黍(きび)色ミラージュ騎士団(四聖獣〜戦巫女の間のストーリー) 22 第2章招かれざる者 1

2020-03-15 01:29:09 | 【偽書】シリーズ
第2章招かれざる者

「団長。我が騎士団への要請が参っております」
「クイーンからか?」
「それが…。執政官補佐ダブロフなる者の名義でして」
「ダブロフ?初耳なる名であるな」
「ダブロフだと?執政官補佐だと?あやつがか」
スダーフネスとギルバートの会話に割って入ったのは政治には無頓着と思われていたあのガイロックスでした。

「知っておるのですか?このダブロフなる執政官補佐を」
スダーフネスの問いが終わらぬうちに、ガイロックスは話始めました。
「知っているも何も。何故あやつが執政官補佐などに」
「おいおい。質問しているのはこちらだよ、ガイロックス」
「教えて頂きたいものですね。その何故執政官補佐などに着任しているのか謎なダブロフなる人物について」
「利権と名誉と金が大好きなあの俗物は…。あやつが居着いた国はいつも内紛に溢れやがて旧体制は崩壊し、怪しげな政権が取って変わり、あるいは新政権も崩壊して帝国や共和国などの指揮下に陥るのだ。その影にあやつの名前が常に付きまとう。付いた通り名が“灰色のノアール”」
「黒い灰色ですか」
「いかにも胡散臭い人物の様だな」
「そんな輩が執政官補佐だと?クイーンの側近の目は節穴か」
「ふむ。なるほど。それで」
「要請には何と?」
「西の国境線に治安を荒らす害族がはびこっており、その退治を、との要請にございます」
スダーフネスはダブロフの銘による要請書をギルバートへ手渡します。
「何故クイーン直属の我等が執政官しかも補佐の命令を聞かねばならぬ。その間クイーンの守護は誰が」
「ガイロックスよ。執政官筋は言わばクイーンら国の運営を高地から管理する言わば帝国や連邦らの派遣し者。迂闊に逆らう訳にもいかぬ。またクイーンの守護には他の騎士団もおらぬ訳ではない。まずはクイーンに確認を取ってみるがな」
「万が一他の騎士団も辺境への出立依頼が出ていたらどうするのだ」
「ガイロックスはかなりこのダブロフに懐疑的な様子ですな」
「当たり前だ」
「どうやら曰わくありげな様子ですな」
「では、私がクイーンを訪問している間、他の者に支度をさせてくれ、スダーフネス」
「かしこまりました。さあ、行こうか。ガイロックス。ステラの初陣の支度に」






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筆者敬白

黍(きび)色ミラージュ騎士団(四聖獣〜戦巫女の間のストーリー) 21 第1章枯れ野の薔薇 20

2020-03-06 11:58:07 | 【偽書】シリーズ
「町の外れで女騎士がならず者を切り捨てたそうだ」
「何でも先輩の騎士を愚弄したとか」
「クイーンの臣下にとんだ無礼を働いたものだ」
「しかし、あの騎士団に女など居たか?」
「確か男だけ八人程だったと記憶しておるが」
「おかしな装束の者や若い騎士は居たが…女だと?」
「しかもかなり若い娘だったとか」
「だが、剣技はかなりの物だったらしい」
「新しい騎士か。面白い。だがひとたび戦になればひとたまりも無かろう。相手はならず者とは訳が違うぞ」
「よせよ。不穏なご時世だ。戦になれば我ら城下の民が最初に泣きを見るのだから」
ヴィエラの話題は瞬く間に町の酒場のネタとなりました。
それは新たな敵を作るには格好のネタでもありました。


「オヤジ。この前納品した酒の数間違えてやしないか?注文の二倍はあるぞ、まったく。もうろくしやがたか?」
「いえいえ。ダンク様。お代は注文分で結構でさ。残りの半分はうちの店からのサービスって事で。聞きましたぜ。こちらの若い騎士様がならず者を成敗したと」
ヴィエラの話題は町の隅々にまで広がっていた様です。

「ダンクよ。今回はヴィエラの騎士祝いとしてありがたく受け取っておけ。オヤジよ。次からは余計な気遣いは無用だぞ」
「あ、団長」
「これは団長様。この度は新たな騎士様おめでとうございます」
「だ、そうだ。これは今回の酒代だ」
「ダンク様。まいどあり。では、団長様失礼致します」
酒屋の店主は待たせてある小さな馬車へ乗って町へ戻って行った。
「団長。それにしてもあの女、どれだけ酒があれば足りるんでしょうね」
「さあな」
「ついこの前まで一滴も飲めないとの触れ込みだったのに…まさかそれはブラフ?」
「嘘をついて何の得がある。多分まともに酒を口にした事が無かったのであろう」
「飲む度にガイロックスが絡んで返り討ちに遭ってるなんて、俄には信じられないや」
「ダンクよ。世の中には日々新たなる気づきが起こるものだ」
「はあ…」
「それより、本日は手合わせ致そうか」
「願ったりだ。お願いします。団長」
「手加減しないぞ」
「こっちこそ」
ヴィエラを除けば最年少の騎士はガイロックス張りに高笑いして宿舎へ戻って行きました。

「さて。午後は王宮付執政官との面談だな。何の話になるのやら」
ギルバートは晴れ間の覗く空を眩しそうに見上げました。


第一章枯れ野の薔薇 終





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