くまだから人外日記

くまだからくまなのだ。

それでいいのだ。

【偽書】雪華残像(9G) 39

2018-01-31 18:10:32 | 【偽書】シリーズ
「そっちは私はいいよ。どうせ昼間は寝ているんだから。それより何だか今見えた人影が気になるんだ。勿論二人は部屋で休んでいてもいいよ」
「そうか。昼間は月子は眠っているからね。でも大丈夫?この天候で停電中だし、ひとりでなんて危ないわよ」
早矢は取りあえず月子を引き止める。
「でも、ほら。きっとひとりじゃないよ」
同じ階から誰かが部屋を出て扉を閉める音がした。

部屋の扉を小さく開いて三人は隙間から縦に並んで廊下を眺める。
階段を下って行く小さな人影…。仲間内で姫の次に背の低い桃恵の姿が暗闇の中に見えた様に…。

「ズルいわ桃恵ちゃん。いくらお腹が空いたからって、灯りも持たずに厨房に夕食の残り物を探しに行くなんて。何で私も誘ってくれないのかしらね」
「えっ…そこ?」
「どこからどこをどう突っ込めばいいのか教えてよ。月子」
月子と早矢は姫の発想に呆れてみせる。
「仕方がない。なら、肝試しついでに姫の胃袋を満たせるものが無いか見て来るよ」
そう言い残して、桃恵の後を追いかける様に月子は扉を開けて静かに廊下に向かうと、音がしない様に古く重い扉をゆっくり閉める。
「行っちゃった…」
「でも、もう食べるものは無いかも。明日の朝食の食材ならあるだろうけど、それは失礼よね。来客が手をつけては」
変な所はちゃんとしてるのね、姫は。
「どちらにしても、亨留(みちる)に伝えとかなきゃ。月子が肝試しに出た事は。真っ暗になると困るから、姫も一緒に行こうか?」
「肝試し?食料探し?」
「わての話聞いてた?姫。亨留(みちる)の部屋に行くのよ」
残念そうな姫の手を引いて、早矢はランタンを手にして部屋を出る。




「それにしても見え見えだろ。桃恵の奴。いきなり“明日も早いんだからみんな寝よう”とか…」
ベッドから半身を起こして詩織が呆れてる。
「まあ、本当に寝静まってからこっそり出歩かれるよりましかな?」
亨留(みちる)も同じくベッドから起き上がり、一旦消したランタンに火をくべる。
そこへ、タイミングを計った様に扉をノックする音。
「誰かな?」
「私よ。早矢よ。姫も一緒に居るわ。入っていい?」
「鍵は開いてるよ。どうやら予想通りになったね、詩織」
「本当に」







ブログへお立ち寄りの皆様へ

gooのフューチャフォンアクセス終了に伴い、gooブログ 各【偽書】シリーズへの投稿を終了する事と致しました。

他SNSへの投稿は継続しております。
ストーリーに引き続きご興味がございましたら、〔検索ワード【偽書】 〕などで検索頂けましたなら幸いです。


筆者敬白

新春ドリームマッチ2018 鬼のイヌ間にババ抜きを 14

2018-01-30 16:49:24 | 【偽書】シリーズ
「やだ、茜ちゃん、いきなり…そんな…ダメ…」
“女同士だから構わないだろ〜ほれほれ尻見せろ〜”
「やだ〜茜ちゃん、エロオヤジみたい」
「黄菜ちゃん。…みたい、じゃなくて、そのものですね。これは。そもそもわざわざセリフを書いてそれをやっている訳ですし」
“碧のお尻もウチが調べたろか?”
「ホクロはありませんから遠慮します」
「で、桃子ちゃんにホクロはあったの?茜ちゃん」
“…エッ…!!”
「どうしましたか?茜ちゃん。感嘆詞まで手書きして…」
「まさか本当にホクロがあったの?ねえ。黄菜、早く聞きだいよ〜」
“正解はCMの後や!”
「二時間ドラマの見過ぎだよ」
「CMなんてないから…。早く終わらせて、茜ちゃん。お尻寒いよ」
正月早々まさかのお尻チェックを受ける桃子。
“チェッ…。あったで…縦に3つのホクロ”
「え〜」
「ほら、僕ビーチプリンス桃太郎の言うことに嘘は無いだろ」
「信じがたいけれど、認めざるを得ないかな?」
「じゃあ、兄妹を示すエピソードはあるの?」
「あれは桃子がまだ2歳くらいだった頃、チョウチョを追いかけて田んぼに落ちて、僕ビーチプリンス桃太郎や村人達に泣きながら助けられたんだ。この泥だらけの片方のサンダルがその時のものさ」
桃太郎は懐から和紙にくるんである小さな桃の柄が描かれたサンダルを大切そうに出して4人に見せる。

「桃子ちゃんのサンダルなの?」
「正直覚えていないや」
「履いてみてよ。ぴったりなら…」
「シンデレラではありませんよ。ましてや子供用のサンダルでは履くだけ無駄ですし」
“案外履けるかも知れんで…”
そう書き、サンダルを和紙から取り出し地面に置く。
「何をするんだ」
“シャレやシャレ。履ける訳あらへんやん…ん?”
「どうしたの?茜ちゃん」
「見て。茜ちゃんの足…」
「まさか履けたとか」
黄菜が指さす茜足元には…。
「何をするんだ。桃子との思い出の品を」
苦笑いする茜の足の下では古く泥汚れたサンダルが、無理に履いた茜の足の力で鼻緒が切れ底が潰れてしまっていた。
“だからシャレやて…シャレ”
「酷すぎるぞ。悪の手先ビューティーV(ファイブ)の糞赤担当め」
“だからスマンて…”
「許さん。我が妹桃子には可哀想だが、鬼と同じ様に成敗してくれる。悪魔の化身、ビューティーV(ファイブ)め。地獄へ堕ちろ」
「なんで面倒を呼び寄せるのよ、茜ちゃん」
「黄菜こんな理由でわざわざ戦いたくないよ」






ブログへお立ち寄りの皆様へ

gooのフューチャフォンアクセス終了に伴い、gooブログ 各【偽書】シリーズへの投稿を終了する事と致しました。

他SNSへの投稿は継続しております。
ストーリーに引き続きご興味がございましたら、〔検索ワード【偽書】 〕などで検索頂けましたなら幸いです。


筆者敬白

【偽書】虹メイル・アン 〔第八話〕藍深き深海より聖者は鐘を打つ 3

2018-01-28 09:08:23 | 【偽書】シリーズ
「ルナがあの国に居た件も色々と聞きだいが、今は海底探査挺の救助が先だ。よし、ヘリポートに到着したぞ。頼んだよ、翔太郎君。みんな」
「任せてよ、難波刑事(さん)。調査乗組員は必ず助けるよ」
「全力を尽くします」
僕達は難波刑事(さん)にそう言ってヘリコプターへと乗り込む。
「うん。頼んだよ。翔太郎君。アン。そしてみんな」
難波刑事(さん)はそう言って僕等を乗せた移送ヘリコプターに手を振る。



「ふぅん。これが警察も一目置いている最新型のメイルか」
「これじゃないよ。僕の大事な仲間だよ。難波刑事(さん)の大事な仲間の正宗さん」
僕は最大限の皮肉でアン達をこれ呼ばわりした正宗誠志朗にカウンターパンチを喰らわせる。
「そうかそうか。それは失敬したな。敷島翔太郎君。俺がその“難波の大事な仲間”の正宗誠志朗だ。今回の件の協力を宜しく頼むよ」
正宗誠志朗は合理的な思考の持ち主なのだろう。
つまらない言葉のやりとりで、直面する海底探索挺救助を遅らせる事は、乗組員の生命や共同開発している他国との関係を計算しての事だろう。
「探索挺を救出したのが、海底探索計画の中心国である僕等の国のメイルであれば、官僚としての名義も立つでしょう」
カレンがそう耳打ちしてくる。
「うん。そうだね。とことん無駄をしないで最大限の成果を上げて、ここまで偉くなったのかもね」
「その通りだよ。敷島博士の忘れ形見翔太郎君」
「この小声が聞こえるの?正宗さんには」
「官僚はね、あらゆる情報を収集分析して最大限の国益を上げるのが職務。これは言わば職業病だな」
そう言って正宗誠志朗は笑う。合理的かのみではなく、そんな所が難波刑事(さん)とウマが合うのだろうか。

「では、早速現状を探索チームの地上班リーダーの技師に説明してもらうよ。そこの七人のメイルのお嬢さん達にはデータを送信してもらった方が話が早いだろう。データ送信ポートのβ(ベータ)サイドをひとつ解放して貰えるかな?」
「このオッサン、アタイ達の事をこれ扱いからお嬢さん達に格上げしてきたよ」
リンダが呆れてみせる。
「だから地獄耳だと言っているだろう。紫色のお嬢さん。変わり身の速さが役人の信条さ。俺達の目的はあくまで国益の為だよ。個人の小さな拘りを公の場に持ち込まないのも処世術さ」
そう言って正宗誠志朗はリンダに向かってウインクしてからプロジェクトのリーダーを手招きする。




ブログへお立ち寄りの皆様へ

gooのフューチャフォンアクセス終了に伴い、gooブログ 各【偽書】シリーズへの投稿を終了する事と致しました。

他SNSへの投稿は継続しております。
ストーリーに引き続きご興味がございましたら、〔検索ワード【偽書】 〕などで検索頂けましたなら幸いです。


筆者敬白

新春ドリームマッチ2018 鬼のイヌ間にババ抜きを 13

2018-01-27 12:35:37 | 【偽書】シリーズ
「ねえ、桃子。どうしてこんなガラか悪くて性格がねじ曲がってる歪んだ熱血バカや鳥頭娘な連中とつるんでるんだい?反抗期?」
“何?誰がガラが悪いやと?”
「皮肉屋ですか?私の事の様ですね。消去法で…」
「悪かったわね。熱血バカで」
「黄菜鳥頭じゃないしお猿さんでもないから…」
「すまない。すまない。言葉のあやだ。だが、僕、ビーチプリンス桃太郎が言いたいことは、悪の軍団に籍を置いている事が腑に落ちないんだよ。我が妹桃子よ」
「我が妹?」
「桃子ちゃんが?」
“悪の軍団やと?”
「私達がでしょうか?」
「ねえ、私達は悪の軍団じゃなくて正義の使者ビューティV(ファイブ)で、私は桃太郎さんの妹なんかじゃないわ。多分…」
“そもそも悪の軍団はそっちやろ”
「猿や雉や犬を使ってヤクザや犯罪組織につながっていたり、紋吉さんの彼女に自爆装置を付けて私達を狙ったりしたわよね」
「子分やその恋人を人とも思わない扱いをして正義のプリンスとか有り得ないと思うよ…そもそも猿や雉や犬は人じゃないけど」
「詭弁ですね。あなたが退治した鬼の皆様は本当に悪人だったのか疑わしいですし。鬼が悪人なら退治するだけでよい筈なのに金銀財宝を強奪し、分配で仲間割れしておられましたし」
「君達、それは誤解だよ。金銀は犬太が勝手に穴を掘って隠してその罪を紋吉になすりつけただけだ。そうと知らずに雉丸があの伊里奈とか言う勘違い女をそそのかしたんだ。この僕、ビーチプリンス桃太郎にはやましい事などかけらも無い。このビーチプリンスには」
「あくまで無関係を主張なさるんですね」
“信用出来るかい。このボケ”
「黄菜、見え透いた嘘をつく人嫌いだよ」
「桃子ちゃん。変身して一気にこの自称ビーチプリンスを倒して紋吉や伊里奈さんの無念を晴らそうよ」
「…ちょっと待って。緑ちゃん。みんなも」
「?」
「ねえ。桃太郎さん。何故私を生き別れの妹と?」
「体のいい言い逃れよね」
「妄想癖?可愛い妹がいたらいいと言う二次元房の…」
“それ、黄菜やろ”
「もし桃子ちゃんを生き別れの妹だと主張なさるのならば、桃子ちゃんにしか無い身体的特徴だとかエピソードがお有りだと思います」
「疑うのか。仕方がないな。本来は桃子の個人情報をこんな奴らに知らせたくは無いが仕方がない。桃子の右のお尻には縦に3っつ並んだホクロがある」
“どれ。見せてみ。桃”
手もみして桃子に近づくエロおや…茜。







ブログへお立ち寄りの皆様へ

gooのフューチャフォンアクセス終了に伴い、gooブログ 各【偽書】シリーズへの投稿を終了する事と致しました。

他SNSへの投稿は継続しております。
ストーリーに引き続きご興味がございましたら、〔検索ワード【偽書】 〕などで検索頂けましたなら幸いです。


筆者敬白

【偽書】雪華残像(9G) 38

2018-01-24 21:35:18 | 【偽書】シリーズ
「それより、沙夜加ちゃん。先にシャワー浴びる?私は最後でいいから」
「それとも幸ちゃんも一緒に入ろうか?」
私の言葉に幸ではなく杏が素早く反応する。
「あああ…その手があったか〜次からは幸と一緒にシャワー浴びれば停電でも怖くないや。ナイスアイデア!」
「もう。なら私は沙夜加ちゃんと一緒にシャワー浴びる。杏ちゃんは停電した部屋で独りで震えてなさい。ランタンが作る自分の影に怯えながら」
エッ…まさかそこまで怖がりなの?なら肝試しなんてもっての他ね。それでよく真夜中のバイクツーリングなんかに行けるわね。
マシンの上では別人なのね。

「杏っていつからそんなに残酷な子になったの?昔はあんな…」
「杏ちゃんシャラップ!その先はダメよ」
「あ…。と、ともかく、アタシを独りにしないでよ〜」
「仕方がないなあ。ゴメンね沙夜加ちゃん。そういう訳だから」
「そうそう。そういう訳だから、沙夜加ひとりでシャワー浴びて〜」
杏が両手を合わせて拝むポーズをする。

「仕方がないわね。なら、ひとつお願いがあるんだけど…」
「幸と一緒にシャワー浴びる以外なら」
「バスルームも真っ暗だからランタンを借りたいんだけど」
それは部屋の中が真っ暗になるという事に気付いた杏が絶句する。
「エッ…」

「なら、幸ちゃんとシャワー浴びようかな…」
私はちょっぴり杏の反応を楽しむ。
「仕方がない。使っていいよ」
「当たり前でしょ、杏ちゃん。いいのよ。いちいち杏ちゃんにお伺い立てなくても。使ってね」
幸はにっこり笑う。
夏休みのヤクザの親分さんとのサイコロ勝負といい、杏に比べたら幸は見かけによらず腹が据わっているのよね。
「では遠慮なく」
私がランタンを手にすると杏が声にならない声を出す。
「※△◆…」
「何?」
「えーと。痛い!な、何でもないよ。えへへ。どうぞどうぞ使ってよ」
杏の左横に腰掛ける幸の右手は杏の尻を思い切り抓っていた。



「肝試しでもしようか?」
杏が聞いたらブンブン大きく首を振りそうな言葉を口にするのは月子だった。
それ、杏が聞いたら卒倒しかねないからね。

「みぞれになりそうな冷たい雨に強風よ。肝試しよりそっちが怖いくらいよ」
「今見えた人を探してみたくて…さ」
「月ちゃん。探偵さんゲームは明日の朝食の後からよ。朝の8時からの朝食の後でルール説明だし」









ブログへお立ち寄りの皆様へ

gooのフューチャフォンアクセス終了に伴い、gooブログ 各【偽書】シリーズへの投稿を終了する事と致しました。

他SNSへの投稿は継続しております。
ストーリーに引き続きご興味がございましたら、〔検索ワード【偽書】 〕などで検索頂けましたなら幸いです。


筆者敬白