「その間に別のルートを探る訳ね」
「この人物が監視役に適任だと思うよ」
日比谷はある人物の写真付きの身上書を的場浩華に渡す。
「警察はその筋で動いているのね」
「まあね。おっと会議の時間に遅刻してしまうな」
「もう夕方よ」
「プライベートな会議だよ」
「女性?」
「さあ?」
「まさか男性とか?」
「さあね。今度会えたらその後食事でもどうだい?」
「お返事は今度会えた時にするわ」
「オーケー」
「ちょっと日比谷君。私の質問の答えはどうしたのよ?」
日比谷は的場浩華の問いをはぐらかす様質問を重ねて笑いその場を去って行く。
「あの惨殺事件以来、女性を抱けない心体になっているのに私と食事?目的は何なのよ。日比谷君」
的場浩華は振り返らず消えて行く日比谷の姿を暫く見つめていた。
「申請書類は問題ありません」
「それにしてもこんなに早く」
「要は警察や検察、裁判所に児童相談所、諸々の官庁があのブロンズ色の髪の少女を持て余しているからでしょう。そして適切な監視役が欲しかったからでしょうね。上申を促す推挙の資料が警視庁や内閣府からも上がって来るくらいですからね」
「この件は最終的にどこが」
「外交問題も絡みますから、外務省を含めた超党派省庁を内閣府が取り仕切る形で」
「また政権が変わったら水の泡ですよ」
「幸い国民もあの未曽有の大災害以降は保守政権への恭順を示していますから、当分は安泰でしょう」
「それにしても、国内テロと人身兵器とは」
「正確には人型と呼べなくもない。太平洋戦争での人間魚雷や特攻に比べれば、クローン兵器など可愛いものでしょう」
「人権もクソもあったもんじゃないな」
「ならば、非常時の警察や自衛隊にはあるんですか?」
「違いない」
背広姿の男と制服姿の人物はどちらかともなく溜め息混じりに窓の外に目を移して言う。
「雨になったな」
「その様です。天気予報通りだ」
「傘を貸そうか?」
「借りは作りたくない主義でして。ではこれで」
制服姿の人物は、そう言い残してその部屋を出て行った。
残された背広姿の男は独り言を呟く。
「この国はどこへ向かうんだ…?」
「まだ館内の傷痕が生々しいね」
仮養生程度の補修すら終わらない破損箇所が無数に残る壁や天井や床を眺めながら、男はもう一人横に立つ別の制服姿の男に言う。
「いっそ全部解体して新しく建て直せばいいのに」
「政府はあくまで“軽傷”だった事にしたいんだろう」
ブログへお立ち寄りの皆様へ
gooのフューチャフォンアクセス終了に伴い、gooブログ 各【偽書】シリーズへの投稿を終了する事と致しました。
他SNSへの投稿は継続しております。
ストーリーに引き続きご興味がございましたら、〔検索ワード【偽書】 〕などで検索頂けましたなら幸いです。
筆者敬白
「この人物が監視役に適任だと思うよ」
日比谷はある人物の写真付きの身上書を的場浩華に渡す。
「警察はその筋で動いているのね」
「まあね。おっと会議の時間に遅刻してしまうな」
「もう夕方よ」
「プライベートな会議だよ」
「女性?」
「さあ?」
「まさか男性とか?」
「さあね。今度会えたらその後食事でもどうだい?」
「お返事は今度会えた時にするわ」
「オーケー」
「ちょっと日比谷君。私の質問の答えはどうしたのよ?」
日比谷は的場浩華の問いをはぐらかす様質問を重ねて笑いその場を去って行く。
「あの惨殺事件以来、女性を抱けない心体になっているのに私と食事?目的は何なのよ。日比谷君」
的場浩華は振り返らず消えて行く日比谷の姿を暫く見つめていた。
「申請書類は問題ありません」
「それにしてもこんなに早く」
「要は警察や検察、裁判所に児童相談所、諸々の官庁があのブロンズ色の髪の少女を持て余しているからでしょう。そして適切な監視役が欲しかったからでしょうね。上申を促す推挙の資料が警視庁や内閣府からも上がって来るくらいですからね」
「この件は最終的にどこが」
「外交問題も絡みますから、外務省を含めた超党派省庁を内閣府が取り仕切る形で」
「また政権が変わったら水の泡ですよ」
「幸い国民もあの未曽有の大災害以降は保守政権への恭順を示していますから、当分は安泰でしょう」
「それにしても、国内テロと人身兵器とは」
「正確には人型と呼べなくもない。太平洋戦争での人間魚雷や特攻に比べれば、クローン兵器など可愛いものでしょう」
「人権もクソもあったもんじゃないな」
「ならば、非常時の警察や自衛隊にはあるんですか?」
「違いない」
背広姿の男と制服姿の人物はどちらかともなく溜め息混じりに窓の外に目を移して言う。
「雨になったな」
「その様です。天気予報通りだ」
「傘を貸そうか?」
「借りは作りたくない主義でして。ではこれで」
制服姿の人物は、そう言い残してその部屋を出て行った。
残された背広姿の男は独り言を呟く。
「この国はどこへ向かうんだ…?」
「まだ館内の傷痕が生々しいね」
仮養生程度の補修すら終わらない破損箇所が無数に残る壁や天井や床を眺めながら、男はもう一人横に立つ別の制服姿の男に言う。
「いっそ全部解体して新しく建て直せばいいのに」
「政府はあくまで“軽傷”だった事にしたいんだろう」
ブログへお立ち寄りの皆様へ
gooのフューチャフォンアクセス終了に伴い、gooブログ 各【偽書】シリーズへの投稿を終了する事と致しました。
他SNSへの投稿は継続しております。
ストーリーに引き続きご興味がございましたら、〔検索ワード【偽書】 〕などで検索頂けましたなら幸いです。
筆者敬白