くまだから人外日記

くまだからくまなのだ。

それでいいのだ。

【偽書】雪華残像(9G) 45

2018-09-30 01:22:38 | 【偽書】シリーズ
「案外女子校だから、レズの気あるかもな」
ありません!まあ、亨留(みちる)は…。

「それにしても、真冬の停電とは。古い洋館に似合い過ぎてるぞ。我々ミス研の出番かもな。事件の匂いがする」
「おいおい。ミステリー小説の読み過ぎだぞ。名探偵を気取るのも程々にしとけよ。あくまで宝探しが本題なんだ」
「それなら大丈夫だろ。周りはあまりその手の謎解きが得意そうじゃ無かったし」
「あの男二人組は要注意だ。へんに目つきが鋭い時があったぞ」
「警察の極秘捜査とか」
「だからミステリー小説の読み過ぎだってば。何で警察がお遊びの宝探しを。本物の財宝じゃないんだぞ。ミステリーツアーの遊びなんだから」
「迷宮入りになった過去の殺人事件を追っている、とか」
「秘密捜査はあり得るな」
「本当に警官ならな。可能性は低いと思うが」
男子大学生達はあれこれと盛り上がっている。まあ私達の話題から逸れてくれた方がありがたいかも。


「もしや皆川様?」
「ああ。執事さんか。こんばんは」
「何か探し物でも?」
「部屋に居る姫がお腹が空いたって言い出してね」
「錦野様ですね」
「パンの残りとか無いかな?」
「そうですか。厨房を覗いてみましょう。いらっしゃいますか?」
ランタンの灯りを頼りに歩き出す執事さんの後を付いて行く月子。
「本当に暗闇でも夜目が効くのですね。皆川様は」
「うん。狼男みたいなもんだよ」
「あいにくの嵐の夜で月は見えませんが」
「私のは狼男みたく月が見えるかどうかじゃなくて、月齢が何日かだけだから」
「昼間のお姿からは想像出来ませんね」
「特異体質…って言って信じて貰えるのかな」
「勿論ですよ。私はこの目で見たものしか信じません」
「現実主義なんだね」
「はい」
執事さんは真っ暗な厨房の中に入って行く。

「さて。こう暗くては…」
「右に棚があるね。あの袋はパンじゃないね」
月子に言われて右側をランタンで照らす執事さん。
「これは違いますね」
「まどろっこしいな。勝手に光らせてもらっていいかな?」
月子が身体を発光させ、厨房は真昼の様に明るくなる。
「先程も驚かなかった訳ではありませんが、こうして暗闇で発光する様を見ては、驚かずにはいられませんね」
執事さんは眩しそうに目を細めながら辺りを見渡す。
「クッキーの箱なら有りますが、お持ちになりますか」








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筆者敬白

サウザント・クロノス・ナイツ 銀髪のノーラ 『四つのクロノス その2』 40

2018-09-27 10:15:36 | 【偽書】シリーズ
守備部隊長の判断は冷静でしたが、ひとつだけ誤算がありした。それは後門を襲った騎士騎馬隊が多人数を割いた本体で、ノーラやスペクターが率いる正面突撃隊の方が囮であり、更に剣や力自慢が集まる少数精鋭部隊だったのです。
そこへ背中を向けた守備隊が命令系統の混乱から敗走するのは時間の問題でした。戦力から言えば守備隊の方が格段に勝っており、門内へ退却せず、冷静に対処していれば、ノーラ達とはいえ多勢に無勢だったのかも知れません。
しかし白煙の中混乱した兵士に数的有利なそれを自覚出来る余裕はありませんでした。
幾人現れるのか分からない騎士団に勝手に怯えた兵士が相手では、もはやこの時点で勝負を決していたと言えましょう。

「戦意を失した者の命まで奪わなくていいぞ。武器を持てない体ならばそれで捨ておけばよい!」
「それより城門の中へ急いで進め。外に居れば援軍を待つ余裕を与えるだけだ」
ノーラとスペクターの意図は明確でした。
それは、敵兵を倒すより少数部隊の消耗を抑えて前線を突破し兵の犠牲を最小限に抑える事でした。
揺るぎない戦略と戦術。それこそが弱小部隊であるノーラの騎士団が大量の兵力を元に守備陣を引く敵部隊に勝利する唯一の手段でした。
策士と呼ぶに相応しい外様であるスペクターに対して中央の諸侯のやっかみが、かつて彼の評価を低く語られていた事を、後の者かならば知っていたでしょう。
そしてそのスペクターを右腕として、ノーラの持つそれ、四聖の加護を得た者の威光は、小手先の兵団の策略などでは歯の立たないものだったのでしょう。
最初の城門抗防戦勝敗は容易く決したといいます。

「これでは城内に容易く侵入を許してしまします」
「何が言いたい。貴兄も守備隊を統べる者ならば、自ら撃ってでるべきでは?」
「貴様…」
「おや?私はあくまで副将軍様の部下であり、貴兄の部下ではありませんよ。それともおめおめ尻尾を巻いて前線を逃げ出す守備隊長が居たと副将軍様にご報告させる気ですか?」
「くっ…。打って出るぞ。武具を持て」
慌てる様に戦支度をする守備隊長を見て、監視役の男は薄ら笑いを浮かべながらこう呟いたそうです。
「戦場(いくさば)でたかを括り武具すら身に付けぬ守備隊長など、作物を作る場に鍬を持たずにやってくる農民のようなもの。大きな実りなど期待出来ませんね…」

幾人かの配下を率いて、最後の砦として前線に出て行く守備隊長の姿を、その後誰ひとりとして見てはいませんでした。








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筆者敬白

【偽書】『エトランゼ・異邦人』 18

2018-09-26 07:46:20 | 【偽書】シリーズ
「課長、本庁から“カン”がいらしています」
「監察官が?何用だ」
「但田課長。お久しぶりですね」
若い監察官が婦警の後ろから遅れて顔を見せる。
慌てて起立し敬礼する課長。
「お疲れ様です!日比谷監察官」
「研修時代が懐かしいですね」
「あの頃は生意気を申しまして誠に申し訳ございません。あれも職務の一環でして」
「気にしていませんよ。現場の研修が上っ面だけならやらない方がましですからね」
「そんな。揚げ足を取らないで下さい」
「いや、あの時課長がおっしゃられた通りです。所轄の実情を知らずして所轄を管轄など出来ませんからね」
「今日はどのような用向きで。抜き打ちの査察でしょうか?」
「いえ。こちらには特段問題の報告は受けていませんが」
「はて、では何故?」
「実は上からある依頼を受けて参りました。課長と面識がある私が適任であろうという配慮だと思われます」
「つまり上意下達ではない」
「はい。非公式な調査となりますが、ご協力、ご教示頂けますか?」
「勿論です」
「では早速本題を。先日、この所轄管内で身元不明の少女が保護されましたね。容姿が欧米人と思われる…」
村野は驚く。あの少女の存在が既に本庁の知る所となっている事、それをわざわざ本庁所属の監察官が業務外として調査に派遣されている事。警察官としての違和感に間違いは無かった?やはりあの少女な何らかの犯罪に関わっている可能性が高いのか?
「それでしたら今ここにいる村野が調書を持参した所であります。ざっと目を通しましたが、特段得られたものはありせんでしたが。どうした村野。早くその資料を監察官にお渡しせんか」
「あ…ああ。失礼しました。刑事課の村野と申します。どうぞご覧下さい」
「日比谷です。ありがとう。拝見させて頂きます」
「日比谷監察官。どうぞこちらにお掛け下さい」
課長は署員のものよりやや上質の自分の椅子を案内する。
「ではお言葉に甘えまして」
日比谷監察官は固辞するのも悪いと思ったのか、勧められるままに課長用の肘掛け付き椅子に腰掛けて報告書を開く。
村野は横に来た課長と並んで、日比谷監察官が報告書を読み終わるのを待つ。
「報告内容は分かりました。調査ご苦労様でした。この少女を最初に診断した病院と医師と連絡を入れて頂けませんか?」
「かしこまりました。これからですか?」






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天宮の乙女達…タジリスクの聖戦(9G) 101

2018-09-25 14:06:34 | 【偽書】シリーズ
「中継地点に到着しましたよ。真田乙女殿」
「まあ。本当に揺れの少ない機体ですね。みんなが寝てしまうのも理解出来ます」
操縦士を労う様にクインは笑って言う。
「ではこれで私は次のミッションが控えておりますので」
「上官の提督と大老へよろしくお伝え下さいね」
「了解しました。武運長久を」
重力圏を離脱すべく最大火力で浮遊する輸送挺。
「武運ですか。これもまた戦いなのですね」

「長旅ご苦労様でしたお待ちしておりました。少し前、真田様宛てに通電がありました。発信元は蠍典芽…」
「ティガーからですね。ご苦労様です。頂戴しますね」
待ち受ける武官から手持ちのリバースキーに文面の転送を受けて、画面を見るなりクインは絶句した。そりゃそうよね。獅子原瑠璃…私の遺体を発見した報が第一文面に記されていては。
あれ?じゃあ今これを独白している私は死んでいるって事?それはビックリだわ。多少の事では驚かないつもりだけど。
ええとぉ…で、どうして私がそんな事に??



「死ね…」
「易々と殺されてたまるものですか。命はひとつなんだから」
「違いない。それはこちらも同じ。抜刀せよ。最大級の力を持って命を頂こう」
「詭弁ですね。対等な決闘ではないものを」
「勝てば大義敗れれば賊軍の戯言。それが戦争だと良くご存知の筈。帝国の虎と評された貴兄ならば」
「ふふ。どうやら私の命運が試されておるようですね」
「運に頼らず勝ち残るとでも」
「逆ですよ。微かな運にしがみついてでも生き延びてみせます」
「では、いざ勝負」
「皇帝よ。我に武運の誉を与えよ。来い。連邦の若き竜よ」
「歴史の藻屑と消えよ。帝国の名の元で武勲を集めし古き策略の虎よ」

【連邦の若き竜】
その時代、帝国の圧制に屈す事無く抵抗を続けた星や国の集合体をそれぞれ連邦と呼び単独の抵抗勢力とは区別して呼ばれていた。
そのひとつに属すると目される若い騎士のひとりが群を抜いて卓越した剣技をして『竜』と敬われ呼ばれていた。(キルゴリア大歴書より抜粋)


「千年史を紐解いている時間は無いの。拿捕された人々を解放する。それが今の私に課せられた使命よ」
「捕らわれの身でありながら、その身の命乞いではなく捕虜の解放を試みるとは、流石戦巫女」
「ふふ。とは言っても、今の私は手も足も出せない。せっかく脱獄したっていうのにね」







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【偽書】夏娘跳ねる 『蹴球同盟・乙女系』(夏娘2014) 17

2018-09-24 07:06:16 | 【偽書】シリーズ
「はーい。お開きでーす」
私は曲芸の見世物になってしまった同好会部員の勧誘対決の幕ひきを告げる事にした。

「何だよ。延長戦やれよ」
「決着は付けないのか?」
「パフォーマンスありきの出来レースかよ」
ギャラリーは完全決着されなかった対戦に不満の声が上がる。

仕方がないわよ。玄鳥(つばめ)さんに怪我されて部員集めが頓挫されちゃ本末転倒でしょ?本人は同好会へ加入してくれるなら、これ以上の見世物…対決の意味は無いわよね。

「バスケットボールと練習場所、どうもありがとうございました」
始ちゃんは女子バスケット部長にボールを手渡しながら礼を言う。
「面白い試合を見せてもらえたからいいよ。隣に居る生徒会長様は“タダでサーカス”でも見た気分だろうけどね」
女子バスケット部長の隣でうんうんと頷く才媛生徒会長。
本気でサーカス気分なのね…この生徒会長は…。
「最初の部員獲得おめでとう」
「私と優美と玄鳥(つばめ)さんで三人、取りあえず後二人です」
「でも五人じゃサッカーは出来ないわよ。バスケットとは違って」
生徒会長は横に立つ女子バスケット部長を見る。
「うちは二三年の女子部員だけで二十人は居るからね」
どうやら人気実力共に自信があるらしいわね。だから玄鳥(つばめ)さんが入部しなくてもそれ程困らないのかしら?

「まあ、頑張りな。この御手洗会長様を驚かすくらいに」
「あら、それって一気に十一人部員を増やすって事かしら?それともまた別の対戦で曲芸を披露してくれるのかしら?」
どうやら生徒会長さんは始ちゃんの次なる曲芸がお望みらしい。全くもう。
ひとしきりギャラリーが減りかけた時、横のサッカー部のグラウンドからサッカーボールが転がって来る。
「おーい。悪いが取ってくれー」
手を振るサッカーユニフォームの男子の声に、始ちゃんが手を上げ返して合図を送る。そして私の方へ振り返りこう言ったのだ。


「行くよ、ユーミン」

昔一緒にサッカーをしていた頃の懐かしい愛称で呼ばれた私は、急にスイッチが入る。

始ちゃんが私に小さくパスを出したのを、私はノートラップでインサイドキックパスでボールを蹴り返す。
それをジャージ姿の始ちゃんが勢い良くサッカーフィールドに向けて蹴り込んだ。

残っていたギャラリー達が口を開けてボールの行方を一斉に見送る。
それはこの上無いデモンストレーションだった。








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