くまだから人外日記

くまだからくまなのだ。

それでいいのだ。

天宮の乙女達…タジリスクの聖戦(9G) 105

2018-12-27 04:14:59 | 【偽書】シリーズ
「無事と言えば無事…だが」
「どうなったんですかぁ。クロスは。妹は…」
「今クロスをお前に会わせる訳にはいかぬ。理由はふたつ。ひとつはお前が星の儀式をぶち壊した事。そしてもうひとつは、当のクロスがお前と会う事を拒否しているからじゃ」
「そんな。クロスが私と会う事を拒否?いや、拒否出来るという事は…」
「純化仕切れていないと言う事だ…」
「なら体はまだ生きている」
「話は出来る。だがもう動く事もままならぬ。分かるか」
「よく分からないですぅ」
「半身は既に結晶化しておる。辛うじて肩や腕から上は動かせるが…」
「半身だけ結晶化?ならば失敗?」
「クロスがそうなったのは儀式に乱入したお前のせいだぞ」
「私…ですか?クロスをそんな体にしてしまったのはぁ。純化も終えられず、かと言ってもう自分では動く事もままならない体になったのは…」
「今後、クロスやお主ら家族が取れる道はふたつ。ひとつは1年後再び純化に臨み残りの生身の部分を結晶化するのか。それとも家族一同この星を去るか」
「星から放逐ですかぁ…」
「お主は現在“講義”を終えて公認された戦巫女の立場。帝国の任を得ている身。ならば放逐は他の家族とクロスだけじゃ」
「私は帝国や連邦の任を得る巫女だから…だからクロスは私に会わないと?たった二人の姉妹なのに、姉の私に会わないと?」
「お前が儀式に苦しむ妹を思い儀式を滅茶苦茶にした気持ちも分からんでもない。妹を可愛く思わぬ姉がどこにおる。だがお主のしでかした事は、クロスが務める事を決めた星の守人を不在にし、外敵からこの星の守護を欠く事につながるのだ。分かるか?」
「クロスが私を恨むのも当然ですぅ。そんな中途半端な体にした姉を許すなんて有り得ないですぅ。ごめんよ、クロス」
「この様な事態を引き起こしたお主はもうこの件には関わらせられぬ。分かるな。全てはクロスの心次第だ」
「再度守人として結晶化を進めるのか、それともぉ…」
「この星を去るか、じゃ」
「神官様…」
「明日、帝国からの迎えを呼ぶ。お主はクロスには会わずに去れ」
「会いたくてもクロスがそれを拒否するなら、どの顔をして会えと。私を恨んでいるでしょうねぇ。クロスは」
「明日迎えが来るまではこの牢で過されよ」
「フフ…戦巫女だなんて偉そうに言っても、妹ひとりにすら好かれもしないダメな巫女ですぅ」









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筆者敬白

【偽書】雪華残像(9G) 49

2018-12-26 05:23:57 | 【偽書】シリーズ
「リーダーが亨留(みちる)だから?でも桃恵がなにやらやらかしそうだけど」
「それは否定しないわ」
早矢は月子の予感を肯定する。
「フライングとか?やりそうだよね。桃恵ちゃんなら」
「あら。姫にしては鋭いじゃない」
「だって景品がかかってるんでしょ」
「そうだね。やりかねんかな。まして今は停電中。バレないと思って探索していそうだな」
「さっきはどうだったの?月子」
「中学生女子と会っていた」
「何それ?」
「桃恵お得意の子分だろ」
月子は先程の顛末を早矢と姫に語る。
「こんな辺鄙な場所に女の子ひとりで?しかも雨で停電の夜なのよ」
「よほど桃恵ちゃんを慕っている子分さんなのね」
「違うと思う」
月子と早矢は姫の予想を全否定した。
「宝の探索に女子中学生?」
「それはあくまでついでだろうね。外部と通信が取れない中で何らかの情報を持ち込んだ、と考えるべきかな」
「何の情報?」
「分からない」
「明日の朝食のお品書きかしら」
姫は大きくピントの外れた感想を語る。


「パソコンが通じないと暇?」
窓の外を見ていた私に幸がそっと尋ねる。
「暇に決まってるじゃないか〜。あーあ。私もバイクで来れば良かったよ。テレビも見れないし退屈退屈〜」
杏が横から会話(と言っても私はまだ何も喋ってはいないが)に加わる。
「うん。確かに娯楽は何も無いし、有るのはこのアルコールランプと二人の楽しい学友の漫才だけだけど、それはそれで楽しいわよ」
「何だよ沙夜加〜私と幸は漫才同級生かよ〜」
「杏ちゃんが悪いのよ」
「何でもかんでも私のせいかよ〜半分は幸の責任だろ〜同室なんだから〜」
「ドウシツ?」
一瞬幸の表情が固まる。
「同室だろ〜学園の寮でも同室なんだし〜」
「そうだね。同室だね」
「あ…。ああそうよね。私と杏ちゃんは同室ルームメートだものね〜」
杏への私の同意に気が付いた様に幸が言い訳の様にドウシツの意味をわざわざ説明してみせた。
「それにしても、この宝探しのヒント…沙夜加はどう思う?」
「ああ、あれ?まあ、明日亨留(みちる)に聞けばいいんじゃないかな?」
「何でも亨留(みちる)に頼るのは良くないぞ」
「なら杏ちゃんが考えたらどう?」
「考えても分からないから同室の沙夜加に聞いてるんだよ。知識なら沙夜加も亨留(みちる)には負けてないだだろ。幸の得意はあくまでせいぜい占いくらいだからさ」







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筆者敬白

【偽書】雪華残像(9G) 48

2018-12-16 01:42:14 | 【偽書】シリーズ
「誰かに見られなかった?」
タオルを差し出しながら、部屋の主はそう声をかける。
「たぶん。見られても困らないけど。歩いている筈の無い人間が歩いているんだから」
「そう。ならいいけれど。それよりどうなった?」
「ちゃんと細工しておいたよ」
「ありがとう」
「後3日。それで全て終わる」
「余計なオマケが付いてるけどね」
「“パーティー”は人数が多い程たのしいから」
「ふう」
「痛い?」
「疼痛だから。もう何年も前から無いのに不思議ね」
「神経は覚えているのよ。そしてアレも」
「忘れないわ」
「じゃあ行くよ。例の執事が来る前に」
「ごめんなさい」
「別に。全てはもうすぐだから」
そう言いながら振り返らずに静かに扉を閉めて出て行く背中を見ながら、その部屋の主は唇を小さく噛んだ。

辺りはまだ闇の中、部屋のアルコールランプの灯りだけが揺れて部屋の壁の色を映し出した。
残された人影を黒く残して。



「月ちゃん。感謝」
姫は月子の差し出したクッキーの箱(一応1箱だけ)を受け取ると、小さな少女の様に笑みを見せる。
「良かったわね、姫」
早矢がそう言って笑う。
「うん。そうだ。早矢ちゃんも月ちゃんも一緒に食べようよ」
「私は遠慮しておく」
「私も。アルコールランプではお湯は沸かせないから、クッキー喉に詰まらせないでよ。姫」
「やだ。子供しゃないわよ。早矢ちゃんたら」
「そうだね。姫が食べ物を粗末にする訳がないかな」
月子が姫に同意する。
「それにしても執事さんが居てくれて助かったわね。泥棒にならなくて」
「うん。タイミング良く現れてくれたよ」
「流石立派な執事さんね。来客の食べたいものを察して待っていてくれたのかしら?」
姫は都合の良い事を言い出す。
「それは流石に無いかな」
「そう?」
「そんな都合良く行かないよ。偶然だよ」
「そうか〜偶然かあ〜」
「偶然。偶然」
「まあ、姫のいいように解釈していればいいのよ」
早矢はどっちでも良いわとばかりに言う。
「そうだよね、早矢ちゃん」
「さて。所で早矢、ディナーの時に渡されたとかいう宝のヒントの紙を見せてよ」
「あら。月子が探す気?」
「桃恵がやたら気にしていたからさ。難しい問題なのかと思ってさ」
早矢からヒントの書かれた紙を見つめる月子。
「何だ?これ」
「分からない。けれど、明日の朝食の頃には亨留(みちる)がササッと解いてくれるわよ」
「きっと私達が一番乗りよね。亨留(みちる)ちゃんが居るんだから」







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サウザント・クロノス・ナイツ 銀髪のノーラ 『四つのクロノス その2』 44

2018-12-04 13:42:23 | 【偽書】シリーズ
「らしいな。同情するか?」
「分からない」
「だな」
「ボクが立場を変えて見られたら同じだろうし」
「だな」
「でもボクも教皇様をお救いする使命がある。だから東の塔の敵は倒すだけだよ。では行くよ。東の塔へ続く前庭を守護する阿修羅の元へ」

立ち上がるノーラの背を後押しする様に、一陣の風がノーラの髪を揺らせました。


「来たか」
前庭を守護するべく陣を張る兵団の監視櫓の見張りが合図を送ります。
「ス・サルバ様。帝国の奴等が参りました」
「次第に堕落していく城門の守備隊長もついに陥落か。良い気味だ。いつも男が城門を死守しているから中の女風情は楽ばかりしておるだとか差別発言ばかりで聞き飽きていた。さて、その女風情が倒された城門守備隊長の不名誉を拭うとしよう。者共、守備陣形をひけ」
ス・サルバの声が前庭に響きます。
まるでノーラ達に聞かせるかの様に。




「あれが御輿に乗った阿修羅?綺麗な人だね」
「顔はな。だがやり口は下手な男より残虐だがな」
「怖いね」
「怖いか?」
「女の人が戦で男以上に残虐になるんだよ。きっとそうなる何かがあったんだろうね」
「そうかも知れないな」
「スペクターのおっちゃんは興味は無いの?」
「無いな」
「男だから?」
「男も女も何も、戦いに参加するには大なり小なり理由がある。いちいちそれを知って戦っていては、命のやり取りなど出来んぞ、ノーラ」
「そうか。そうだね」
まるで危機感の感じられないノーラの言葉に拍子抜けしながらも、後にスペクターは妙な安心感に包まれたと懐述しています。

逆に互いに女リーダーが雌雄を決する争いに、双方の兵士騎士達は一抹の不安を隠せませんでした。
それは、敗れれば『女リーダーの軍勢に敗れた』との汚名を科せられ末代まで語られてしまうからでしょう。
この時代は今以上にまだまだ戦乱は男の世界でしたでしょうから。
ノーラと言う少女を騎士団長に選任した帝国の軍機上層部は大胆な策に出たとも言えます。
それは教皇救出の成果とは別の意味をも含み持ってもいましたし、結果としてノーラの持つ力を引き出す事でもありました。



「よくもまあ、あの混乱から逃れ、城門へと兵を進められましたな」
背の高い騎士へと傍らの宗教家の従者は語りました。
「あの“力”の覚醒と、側に付く軍師の才覚だな。そしてあのカリスマ性。朱雀が加護するのも頷ける」






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