その日も急に雨が降り出して風が吹いた
ここに来る時はなぜかいつも風が強い
桜が殆ど葉桜になった頃
僕は1時間だけ行方不明になる
それは、急行の止まる駅から2両編成の電車に乗り換えて一駅
何年かに一度、僕はこの場所を訪れる
昔は何故か恥ずかしくて隠れるように来た場所
誰かに見られるのが恥ずかしく、逃げるように去った場所
木立を抜ける風音だけが聞こえる
都会の外れに時間が止まった様な場所が何故か残されていて
僕はここでいのちを見つめる
あの頃はまだ駅も無く、本当に残された場所だった
帰りの電車まで30分。
腰掛けてゆっくりと話しかける静かな時間。
何処からか子どもの歓声が風に流されて聞こえてきた
もう十数年も前の
やっぱり葉桜の頃だったかな
秘密の時間はあっという間に過ぎて
帰りの電車の時間だ
又来られるかな
絶対に来よう
そう決めて電車に乗る