ガタゴトぷすぷす~外道教育学研究日誌

川口幸宏の鶴猫荘日記第2版改題

翻案 パリ・コミューンと少年(10)

2018年09月22日 | 研究余話
3-3
 何というにぎわしさ!朝3時頃に、ラ・ビュットの近くに集められたティエールの雇われ者たちの思うままにさせないように向かい合っている数千の兵士たちが、丘を登るつらい作業に取りかかり、シャン・デ・ポロネを埋め尽くし、曲がりくねった道を通って大砲を降ろすことに着手している。「走れ!ピエロ!警報の発令だ!」ぼくは一瞬ためらう。ぼくは自分の父親のことが心配だ。しかし彼はすばやくぼくのおでこにキスをし、引き返す。
 ぼくはブドウの木の中に走り込み、傾斜を駆け下りる。街が目を覚ます。警鐘が打ち鳴らされはじめる。太鼓が街全体に打ち響く。鎧戸が開く。人々が、家々の戸口の上の、店の戸口の上の窓から姿を見せる。グループが形成される。
 ぼくは着くのが遅すぎる。女たち、子どもたち、男たちはもうラ・ビュットに姿を見せる。ぼくは彼らと一緒にいく。ぼくたちは、馬がないのでまだどの大砲も移動させていない兵士たちの集団に、向かい合う。
 一人の将官がわめく:
「ゲス野郎!この役立たず!」
 一人の下士官が叫ぶ:
「皆!銃を地面に置け!」
 兵士たちが銃を降ろす、そして彼らから武器を取り上げた将校たちに突然飛びかかる。
 ぼくは将官の身を案ずる心持ちなどない。群衆は誰彼かまわずキスを交わし喜びを分かち合う。
 兵士、老人、女、そして子どもが馬の引き綱を切り、すでに移動させられた大砲を回収し、シャン・デ・ポロネまで再度登るのに、ぼくがパパのいるところを知らないのは残念だ。パリの大砲はヴェルサイユに似合わないだろう。