金魚がまだ会社勤めをしていた頃の話です。
一応、仕事にも慣れてそこそこの立場になって新規採用の社員教育をしていたときです。
会社の就業規則とか、電話の受け答えとかを金魚が教えていたときがあるのです。
恐ろしいですよね、考えたらこの金魚が他人を指導していたなんて。
色々教えることがあったのですけど「明日から現場に出て一番大切なことを教えるのですが、ここで15分のトイレ休憩をします。次の講義が一番大切だから、遅れないように」と言って休憩にしました。
いえ、その時じつは金魚がトイレをしたかったからだったのですが。
ところが運悪く、トイレ清掃の時間にあたってしまったのです。
掃除のおばさんは懇意にしている方だったので「すんません、ちょっとお願いできますか」と言って清掃中なのにトイレに入ってすますことにしました。
新規の社員も堪えていた者が何人かいて、金魚と同じように入ってきたのです。
それはそれで良いのですが、そのうちの何人かが掃除のおばさんをからかいだしたのです。
「便所掃除はしたくないな」とか「これ罰ゲームだよ」とか言い出したのです。
当然、金魚は怒り心頭に発したのですが、ただ注意したのでは面白くないのでちょっと演技することにしました。
からかっている新規社員の横に立つと、講師である金魚に気付いたのか黙ってしまったのですが、そんな奴はほっておいて最敬礼で掃除のおばさんに礼をしました。
「申し訳ありません。講師が至らぬばかりに失礼に言葉を言っていたようで大変申し訳ありません」と最上級の言葉と態度で謝ったのです。
普段のいい加減な講師をしていた金魚が最敬礼をしたので、見ていた新規社員がビックリしていました。
「講師、この方は」と恐る恐る聞いてきたのを無視してひたすら謝りました。
「金魚さんの部下なの、あまり感心する言葉遣いじゃなかったから注意してね」と笑っておばさんから許していただきました。
キョトンとする新入社員を連れて会議室に戻り最後の一番大事な講義を始めました。
「さきほど、掃除中のトイレに入った人がなんだか失礼な言葉を吐いていたが、あの掃除のおばさんは社長のお母さんです。先代社長の奥様です」と一席ぶったのです。
「トイレ掃除は罰ゲームだとか俺はしたくないとか言っていたが仕事に好き嫌いは言えないから、肝に銘じておけ」と普段のいい加減講義とは違って少し声を荒げて言いました。
「明日から現場に出ると言う事は、みんなの背中に会社を背負っているのだと自覚しろ。
他社のトイレ掃除をしている人が、もしその会社の社長さんだとかだったら、さっきみたい事を言った社員が叱られるのではなく、会社が見限られるのだという事を考えてください。
他社で社長を退いた人が守衛のおじさんをしている会社もあります。
受付のおばさんが、社長だという会社もあります。
そんなところでさっきみたいな事を言うとそれでどんなに条件を良くしようが契約は取れません。
取れ無いどころか前の契約を解約されるかも知れません。
通常、解約には解約手数料とか色々損害条項もあるのですが、社員が相手の会社の社長さんに暴言を吐いたら逆にこちらが謝るか損害請求を受けるかも知れません。くれぐれも他社に行ったら掃除のおばさんとか受付・守衛のおじさんには気をつけてください」と言って講義を締めました。
これにはその時の新入社員全員が印象深かったようで、他社に営業に行ったときに「今年の子達はみんな礼儀正しいね、何か特別な講義でもしたの」と他社の人事担当の方からよく聞かれました。
トイレ掃除のおばさんが、先代社長の奥さんという嘘、もう時効ですけど結構効いたようです。
一応、仕事にも慣れてそこそこの立場になって新規採用の社員教育をしていたときです。
会社の就業規則とか、電話の受け答えとかを金魚が教えていたときがあるのです。
恐ろしいですよね、考えたらこの金魚が他人を指導していたなんて。
色々教えることがあったのですけど「明日から現場に出て一番大切なことを教えるのですが、ここで15分のトイレ休憩をします。次の講義が一番大切だから、遅れないように」と言って休憩にしました。
いえ、その時じつは金魚がトイレをしたかったからだったのですが。
ところが運悪く、トイレ清掃の時間にあたってしまったのです。
掃除のおばさんは懇意にしている方だったので「すんません、ちょっとお願いできますか」と言って清掃中なのにトイレに入ってすますことにしました。
新規の社員も堪えていた者が何人かいて、金魚と同じように入ってきたのです。
それはそれで良いのですが、そのうちの何人かが掃除のおばさんをからかいだしたのです。
「便所掃除はしたくないな」とか「これ罰ゲームだよ」とか言い出したのです。
当然、金魚は怒り心頭に発したのですが、ただ注意したのでは面白くないのでちょっと演技することにしました。
からかっている新規社員の横に立つと、講師である金魚に気付いたのか黙ってしまったのですが、そんな奴はほっておいて最敬礼で掃除のおばさんに礼をしました。
「申し訳ありません。講師が至らぬばかりに失礼に言葉を言っていたようで大変申し訳ありません」と最上級の言葉と態度で謝ったのです。
普段のいい加減な講師をしていた金魚が最敬礼をしたので、見ていた新規社員がビックリしていました。
「講師、この方は」と恐る恐る聞いてきたのを無視してひたすら謝りました。
「金魚さんの部下なの、あまり感心する言葉遣いじゃなかったから注意してね」と笑っておばさんから許していただきました。
キョトンとする新入社員を連れて会議室に戻り最後の一番大事な講義を始めました。
「さきほど、掃除中のトイレに入った人がなんだか失礼な言葉を吐いていたが、あの掃除のおばさんは社長のお母さんです。先代社長の奥様です」と一席ぶったのです。
「トイレ掃除は罰ゲームだとか俺はしたくないとか言っていたが仕事に好き嫌いは言えないから、肝に銘じておけ」と普段のいい加減講義とは違って少し声を荒げて言いました。
「明日から現場に出ると言う事は、みんなの背中に会社を背負っているのだと自覚しろ。
他社のトイレ掃除をしている人が、もしその会社の社長さんだとかだったら、さっきみたい事を言った社員が叱られるのではなく、会社が見限られるのだという事を考えてください。
他社で社長を退いた人が守衛のおじさんをしている会社もあります。
受付のおばさんが、社長だという会社もあります。
そんなところでさっきみたいな事を言うとそれでどんなに条件を良くしようが契約は取れません。
取れ無いどころか前の契約を解約されるかも知れません。
通常、解約には解約手数料とか色々損害条項もあるのですが、社員が相手の会社の社長さんに暴言を吐いたら逆にこちらが謝るか損害請求を受けるかも知れません。くれぐれも他社に行ったら掃除のおばさんとか受付・守衛のおじさんには気をつけてください」と言って講義を締めました。
これにはその時の新入社員全員が印象深かったようで、他社に営業に行ったときに「今年の子達はみんな礼儀正しいね、何か特別な講義でもしたの」と他社の人事担当の方からよく聞かれました。
トイレ掃除のおばさんが、先代社長の奥さんという嘘、もう時効ですけど結構効いたようです。