夕焼け金魚 

不思議な話
小説もどきや日々の出来事
ネタ控えです
最近は俳句ばかりに

氷女 後編

2015-01-21 | 創作
私は、目撃者から事実というか現象を聞く事から始めました。
最初に氷女を見たという婦人に会いに行った。婦人は、マンションの最上階にいて私と管理人を見ると少し安心したような顔をした。
「夫が死んでから、日中は私と孫娘しかいないので、心配で」
「大丈夫ですよ、ここはセキュリティーが万全ですから」
「そうは言っても、あの女の子は入って来ましたよ」
「奥様が見たのは、子供だったのですか」
「はい、小学1年か2年生くらいの子供だったのです。ベランダで、赤い服を着てこちらを見て見ていたのです」
「それで、奥様はどうなさったのですか」
「最初は孫娘の友達かと思って、隣の部屋に孫娘を呼びに行ったのですよ。そうすると孫娘は知らないと言うので、もう一度この部屋に来たら誰もいなくて」
「では、玄関から出て行ったと言うことでは」
「それはありませんわ。隣の部屋からも玄関は見えますから、少なくとも私には誰も玄関からは出て行きませんでした」
「そうですか、それで部屋に戻ったらもうベランダには誰もいなかったということですか」「そうです」と言われて、私は一度ベランダを見させていただきました。
ベランダは、人工芝が敷き詰められていたが、一カ所だけ音が違うところがあった。
管理人に聞くと非常口だという。合成樹脂製の蓋があって、スライドして非常口が現れた。五段程の鉄製の階段があり、それからはコンクリート製の螺旋状の階段が現れた。
「これなら子供でも通れますね」
「はい、途中に扉があって中からは開きますが外からは開かない構造になっていますから、下に行くことは出来ますが登ることは出来ないのです」
「と言うことは、上から下には行けると言うことですか」
次に二度目に見たという奥様に会いに行ったのです。その時もすぐにベランダに出たと言うのではなく、自分の娘に友達かと聞いてから、もう一度ベランダを見たらいなかったと言うことだった。ここでも、ベランダには非常口がありそこからなら、子供が出入りできるという。
「これなら、この非常口から子供が出入りしたのが原因なのでは」と管理人に言うと「そうですね、気付きませんでした。出来れば皆様の前で仰っていただけませんか」と言われるのです。文書一枚出せば、それで解決と思われましたが入居者全員を集めての集会で、説明させられました。色々質問が出たのですが、ほとんどが氷女の言い伝えの事でした。集会が終わって、管理室で一服していたときです。
「非常口のことは皆さんもご存じだったのでは」
「はい、すぐに分かりました」
「では、子供が出入りしたと言うことも分かっていたのでしょう、なのになぜ私に説明させたのですか」
「実は、貴方にも質問が出ましたがどこの子がそんな事したのかと聞かれたでしょう」
「はい、そこまでは警察じゃないから分かりませんけど、何処の誰かまで必要ですかと逆質問したら、そこまではと言われましたよね」
「そうです、貴方ならそこで質問を断れるのですが、私共だとその質問に答えなければならなくなって」
「何か問題があるのですか」
「氷女を見たと言った部屋のお子様に誰か来ていたのって聞いたのです」
「どの部屋か分かったのですか」
「はい、どの部屋の子も203号室の子と言うのですが」
「203号室の子がどうかしたのですか」
「いないのですよ、203号室は此処が出来たときからずっと空き室で、なぜか誰も買わない部屋。子供なんていたこともない部屋なのです。そこの子と遊んでいたと言われたら、そちらの方が問題になって、できれば203号室、一度見ていただけますか」と言われた。
管理人はこの事を言いたく無かったのか、それとも私を203号室に連れて行きたかったのか。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 氷女 前編 | トップ | 黒い屋敷は »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

創作」カテゴリの最新記事