・馬頭観世音菩薩(ばとうかんぜおんぼさつ)
観音は皆一様に温顔で、慈悲にあふれた表情をしているため、顔を見ただけではその種類を当てることはたやすくない。しかし七観音のうち馬頭観世音菩薩だけは、三面ある顔のどれを見ても仁王像のような忿怒の相をしているため、すぐにそれと判別できる。
馬頭観世音はサンスクリット語で「ハヤグリーバ」といい、これは「馬の頭を持つもの」の意味である。厳しい、怒った顔でなければ教化できない者たちに対する時に必要な姿である。馬首を頭上にのせるのは、古代インドの伝説にある転輪聖王の馬が悪魔を降伏させる力を持ち、また馬がものを食べるように、煩悩や迷いをむさぼり食ってくれるということに由来する。
怒った顔が三面(ときに四面)、手は八本あるいは六本、正面の顔は眉間に目がある三眼。頭部に馬の頭をつけているのがその特徴である。馬の頭があることから、馬を守る仏と考えられるようになり、昔は馬が重要な交通手段であったことから、旅の安全を守ってくれる仏として、また馬の無病息災を祈願する仏として信仰されるようになった。この観音は牛馬に関係をもつ職業の人たちの講集団(例えば馬持中、村中)や個人に信仰されて造立された。また時代が下るに従い、特定の死馬供養の目的で造立され、墓標的な意味を持つものも出現するようになった。造立の場所は里道の分岐点、峠道の頂上、交通の難所、斃馬捨て場、屋敷内などである。
嵐山町の馬頭観世音菩薩の分布と地区ごとの造立年代については次の分布図及び表のとおりである。
図 嵐山町内における馬頭観世音菩薩の分布 準備中
表 嵐山町内における馬頭観世音菩薩の地区別造立年代 準備中
※嵐山町博物誌調査報告第8集『嵐山町の石造物1』(嵐山町教育委員会発行、2003年3月)掲載の島﨑守男「嵐山町の石仏造立の背景」(同書10頁~12頁)より作成
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