○明王(みょうおう)
・不動明王(ふどうみょうおう)
如来・菩薩の次の位に置かれるのが明王である。明王のうち、不動明王は最も良く知られ、その代表的存在である。大日如来の使者とされ、その姿は忿怒の相で、体は童子の形、右手に剣、左手には羂索を持っている。髪は束ねて、一部を編んで左肩から胸にたらし、がっちり座っている。これが不動明王の基本的な姿であるが、現存するものの中には両眼を見開き、りっぱな体格の立像もある。不動明王としての要点は、忿怒相、右手に剣、左手に羂索、後背に炎の四点が挙げられる。
忿怒の相は、外に向けられるばかりでなく、自分自身の我欲・執着に向けるものでもある。剣は煩悩を切り捨て、光背の炎は煩悩を焼き滅ぼす意味がある。羂索は煩悩を縛りあげる縄であり、迷える衆生を救助するための網と考えられる。
嵐山町では座像が三基、立像が二基それぞれ確認されている。
・馬頭明王(ばとうみょうおう)
馬頭明王は嵐山町では唯一、文字塔が一基確認されている。古里他十一ヶ村の馬持中による造立である。観音が一様に慈悲相であるのに対し、馬頭観世音菩薩は忿怒相であるところから、馬頭明王とも呼ばれた。よって、この造立目的は馬頭観世音と同様のものと見ることができる。
※嵐山町博物誌調査報告第8集『嵐山町の石造物1』(嵐山町教育委員会発行、2003年3月)掲載の島﨑守男「嵐山町の石仏造立の背景」(同書13頁)より作成
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