嵐山石造物調査会

嵐山町と近隣地域の石造物・道・文化財

嵐山町の石仏13 石造物の分類とその概要11 九頭竜権現

2009年03月13日 | 嵐山町の石仏造立の背景

○その他
・九頭竜権現(くずりゅうごんげん)
 九頭竜権現はインドが起源の水神で、日本に移入されて古来の信仰と結合し九頭竜権現となった。その像容は一身に九つの頭を持つ竜神とされる。「権現」とは、衆生救済のため、仏が日本の神となってこの世にあらわれること、あるいはその神の名である。八大竜王も九頭竜権現と同体と見て良い。
 農耕民にとって水は生命である。水の恩恵を受けるためと、水害を防ぐためとの祈りを込めて、いろいろな水神が造立された。水源地・河川の堤防・井戸端に祭ることは全国的に見られる。
 嵐山町の九頭竜権現は市野川流域に4基があり、具体的には杉山の市野川左岸に3基、川島の右岸に1基がある。すべて文字塔で「九頭竜大権現」や「九頭竜大神」など刻されている。杉山の3基はそれぞれ1801年(享和元)と1846年(弘化3)、1871年(明治4)の造立で、川島の1基は2001年(平成13)の造立である。もともと市野川は自然の流路で蛇行が著しく、梅雨や台風の季節には降雨でしばしば洪水に見まわれてきた。流域に見られるこれらの石造物は、杉山や川島の農民が洪水の防止や適度の降雨を祈願して造立したものである。現在では市野川も改修が進み、洪水を見ることはなくなった。

※嵐山町博物誌調査報告第8集『嵐山町の石造物1』(嵐山町教育委員会発行、2003年3月)掲載の島﨑守男「嵐山町の石仏造立の背景」20頁


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