しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「猫を抱いて象と泳ぐ」 小川洋子

2009年12月09日 | 読書
「猫を抱いて象と泳ぐ」 小川洋子     文藝春秋

チェスの世界でリトル・アリョーヒンと呼ばれた人物の物語。
まだリトル・アリョーヒンと呼ばれる前、7歳の少年の心を捕らえたのは、象のインディラ。
インディラは小象の時にデパートの屋上にやって来たが、降りる時期を逸し、37年の生涯を屋上で過ごした。
そのことが書かれている立て札と形見の足輪を見て、少年は空想を膨らませる。
ある事件をきっかけに、少年はバス会社の独身寮の管理人、マスターからチェスを教えてもらうことになる。
マスターはとても太っていて、廃車になったバスを改造して住んでいた。
傍らにはいつも白と黒のまだら模様の猫、ポーンがいた。
少年はチェスの海に泳ぎだす。



タイトルに惹かれて手にした1冊。
ジャンルも分からず、読み始めるが、すぐに物語に引きこまれた。
チェスは出来ないけれど、そんな自分も宇宙を感じられた。
静かだが、とても強い意志が働いている世界。
優しい人達がたくさん登場する。
言葉を発しなくても、分かり合える関係。
そんな関係にとても憧れる。
その人にとって何が望みか、どんなことが幸せなのか、他人が推し量るのは難しい。
自分の価値感で考えてしまうから。
それでも、なにかのきっかけで気が付かせてあげて、それで変わることもある。
人との優しいつながりが確かめられる物語。
人間の強さ、優しさってこういうことなのだと思う。

「大きくなることは悲劇」と考えた。
小さくありたいと願い、そのまま小さくあり続けたリトル・アリョーヒンは、きっと幸せな人生だったのだろう。
でも、もう少しミイラとの関係を後押ししてくれる人がいたら、と思わないでもない。
ラスト、2人を会わせてあげたかった。

タイトルの「猫を抱いて象と泳ぐ」はこの物語の内容をとてもよく表したものだった。
今はタイトルから、たくさんの場面が思い浮かぶ。
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