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しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「名もなき毒」 宮部みゆき  

2007年03月19日 | 読書
9月の暑い日の夕方、67歳の古屋明俊は犬を連れて散歩していた。
途中でコンビニに寄り、紙パックのウーロン茶を買う。そのウーロン茶を飲んで直ぐに苦しみ出し絶命する。
死因はウーロン茶に混入されていた青酸性の毒物だった。
マスコミは3月から首都圏で発生していた連続無差別毒殺事件、4人目の犠牲者の可能性があると報道する。
今多コンツェルンの広報室に勤める杉村三郎は、今多コンツェルンの会長、今多義親の娘婿である。
広報室はアルバイトの原田いずみの勤務態度に困惑していた。
そして、解雇を言い渡した後も問題が尾を引く。
杉村は原田いずみ問題解決の為に探偵の北見一郎を訪れ、そこで、古屋美知香と出会う。
美知香は古屋明俊の孫だった。

杉村三郎は「誰か」に登場した人物。
「誰か」と同じような役回りで、事件に大きく関わり、探偵役になっている。


タイトルに「毒」とあるように、人に直接作用して殺してしまう青酸などの毒の他に、シックハウス症候群や、土地汚染、そして、人間の中にある毒、などが物語の中に出てくる。
一番怖いのは、名前を付けられない毒。
名前があればそれに対処する方法も考えていけるけれど、名前がない物はどうしたらいいのか分からない。
ということが書かれているが、確かに名前がないというか、不確かな物は人間が苦手。
悪霊とか、闇とか、お化けとか。
この物語も、原田いずみという理解出来ない人物が一番怖い。きっと原田いずみ自身も自分が理解は出来ていないだろう。
自分をコントロールするすべを知らないのだろうから。
これほど激しくなくてもこの様な人はいるし、自分の中にも、そしてすべての人の中にもそんな要素が潜んでいる気がする。感情をコントロールするのは、なかなか難しい。人間は感情の生き物だから。
連続無差別毒殺事件の方もさり気なく解決していくが、事件よりもそれぞれの登場人物の、心の中の問題が重要になっている物語だと思う。
自分で毒を作り出さないようにしていきたい。

付録として、物の考え方は育った環境にも大きく左右されるが、その環境とは金銭的な面が大きいのではないかとこの物語から感じられた。
何となく、杉村夫婦は心の底からは、いつまでも上手くやっていけないような気がした。


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