しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「香水 ある人殺しの物語」  パトリック・ジェースキント  

2012年10月16日 | 読書
「香水 ある人殺しの物語」  パトリック・ジェースキント    文春文庫
  DAS PARFUM                    池内紀・訳

1738年7月17日フランス、パリの市場でジャン=バティスト・グルヌイユは母親に産み落とされる。
そのまま命が消えるかと思われたが、偶然に救い出される。
しかし、グルヌイユを預かった乳母は誰も長続きしない。
ある乳母は、グルヌイユから何の匂いもしない、それは悪魔が憑いているからだと言う。
匂いを発しないグルヌイユは、匂いには敏感で、あらゆる匂いを嗅ぎ分けた。
6歳の時には、嗅覚を通して周りの世界を完全に了解していた。
匂いのよって知り、匂いで識別し、記憶に結び付ける。
その才能から、香水調合師の弟子として働き、匂いに付いての知識を高めていく。
そして、無臭の自分の為に、匂いを作り出す。
そんなある日、至上の匂いを嗅ぎ、その存在を知ったグルヌイユは、その匂いを自分のものにしたいと思う。







映画『パフューム』の原作。
映画とは少し印象が違った。
地味に静かに、ゆっくりと展開していく感じ。
グルヌイユの世界には、匂いしかない。
ひたすら自分の世界だけを見つめて、その世界で生きている。
そうなった過程もはっきりと分かるので、心情も分かる。
グルヌイユは匂いしかないので、人間は見えていない。
しかし、匂いが人に及ぼす力を知り、それを利用していくことを知る。
これは人間の生存本能なのかも知れない。
匂いにも、こんなに力があるのかと、思わされる。

匂いにスポットをあてた物語は、井上夢人さんで読んだことがあるが、匂いの感覚を少し違った風に楽しめる。
しかし、匂いに対しては、誰もがグルヌイユのように敏感ではないだろう。
あんなにも思い通りには、ならないのではという疑問も。
自分の匂いは、どの程度しているのだろう。
嗅いでみたが、自分の匂いは、よく分からない。
肌より衣類の方が匂うようだ。
そう考えると、グルヌイユも衣類を身に付けている限り、匂いはしたではないだろうか。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« F1 2012 第16戦 ... | トップ | JBL 2012-2013... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事