しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「濡れた魚」  フォルカー・クッチャー  

2013年03月04日 | 読書
「濡れた魚」  フォルカー・クッチャー     上・下巻    創元推理文庫
 Der nasse Fisch           酒寄進一・訳

1929年ベルリン。
ゲレオン・ラート警部が、故郷のケルン警察から訳ありでベルリンに来る。
その理由を知っているのは、ケルン市警察の警視庁で父親のエンゲルベルトの友人、ベルリン警視庁警視総監ツェルギーベルだけだった。
ケルンでは殺人捜査官だったが、ベルリンで配属されたのは、E課(風紀課)だった。
直接上司のブルーノ・ヴォルターは、世話を焼いて親切にしてくれる。
しかし、ゲレオンはA課(殺人課)に異動したい気持ちを抑えることが出来なかった。
1か月経った頃の夜中、下宿にゲレオンの前に住んでいた住人、アレックス・イワノヴッチ・カルダコフをロシア人が訪ねて来る。
切羽詰まった様子で、無理やり部屋に入ろうとするが、ドイツ語が通じず追い返すしかなかった。
大家から聞き、翌日カルダコフが引っ越したというアパートを訪ねるが、そこにカルダコフはいなかった。
そして、夜中に訪ねて来た男が死体発見される。
運河に飛び込んだ車から発見されるが、拷問された痕があり死んでから車に乗せられたことが分かる。
身元も分からず、捜査は難航する。
ゲレオンは、密かに単独捜査を始める。





1929年のベルリンは、ナチスの台頭の少し前で、共産党員弾圧の「血のメーデー」が起きた年。
「血のメーデー」も物語の中で書かれている。
ゲレオンは警察の人間として現場にいる。
そんな政治的なことも重要な要素にはなっている。
ゲレオンの気持ちや行動は落ち着かない。
そんな現場に接した戸惑いや、何とか手柄を立てようとする焦りの気持ち。
そんな中でも素敵な女性に心惹かれて、浮かれたり。
散漫な感じがあるからか、物語も前半は少々読むのに時間が掛かる。
一気に面白くなるのは、ゲレオン自身が事件を起こしてから。
そんな事をしていいのか、とも思うけれど。
警察組織の在り方も、どこの国も同じなのかと、暗い気持ちになるが。
敵は身内にあり、か。
何だか調子が良くて、のんびりしていそうな割に頭がいいゲレオン刑事。
そんなのでいいのか、と思う所もあるが。
最後は自分の信念を見せた。

“濡れた魚”とは、事件が迷宮入りすること。
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