しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「最後の陪審員」 ジョン・グリシャム

2008年09月25日 | 読書
「最後の陪審員」 ジョン・グリシャム  上巻・下巻   新潮社文庫
  The Last Juror     白石朗・訳

アメリカ・ミシシッピ州フォード郡クラントン。
1970年、23歳のウィリー・トレイナーは週間新聞フォード・カウンティ・タイムズ社を裕福な祖母の援助により買収し、社主になる。
まもなく、未亡人ローダ・カッセロウが2人の幼子の前でレイプされ殺されるという残忍な事件が起こる。
犯人ダニー・パジットは、違法行為で巨額な富を築きあらゆる手を使って法から逃れている、パジット一族長の末息子だった。
警察署長も味方に引き込むパジット一族だったが、ウィリーはタイムズ紙にダニー逮捕を1面に載せる。
ダニー・パジットの無罪を主張する弁護士。
公民権を求める黒人の戦いが遅れている南部で、フォード郡史上初めて陪審員に黒人のカリア・ラフィンが選ばれる。
新聞を通して兼ねてからラフィンと深い交流があったウィリーは、ラフィンを気遣いながら裁判を見つめる。



ひとつの事件を追う物語というより、ひとつの町の物語。
1970年代アメリカ南部、架空の町の物語だが、きっと似たようなことはあったのだろう。
1970年というと最近という感じがするが、読んでいるとなんだかもっと前のことのようだ。
南部だが、西部劇のような無法な一族がいたり、簡単に銃で人を殺してしまったり。
簡単ではないのかも知れないが、犯人を捜すのに警察はあまり力がない印象。

裁判がメインにあるが、法律は人が作ったものだから、イコール正義だとは限らない、と言うことも。
陪審員は有罪無罪を決めるのは知っていたが、罪状に応じて死刑評決をするのは知らなかった。
死刑評決に至らなければ終身刑になるが、ミシシッピ州ではそれは仮釈放審査の対象になり、10年ほどで出てくることになる。
しかし、それは陪審員を始め多くの市民は知らないと言う。
被告側は一人でも陪審員を買収すれが、有罪になってもなんとかなると。
そういうことがあるのだ。

現在も権力や富のある人に都合がいい法律がある。
法律は変えていくことが出来るものだから、やはり誰かに任せるのだはなく、一人々々が意識していく必要があるという事だろう。
「考えろ、考えろ」だよな。

町の物語、田舎と都会は大きな差が見られるのかも知れない。
田舎はまだ人種差別を固持し、ベトナム戦争を批判することは愛国心に反する。
今までのジョン・グリシャムのサスペンスを期待すると、ちょっと物足りない感じがするが、ひとつの町の歴史を知るのには興味深い。
語り手はウィリーだが、主人公は黒人女性のカリア・ラフィンなのだと思う。


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