しましましっぽ

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「愚か者の祈り」 ヒラリー・ウォー

2008年12月31日 | 読書
「愚か者の祈り」 ヒラリー・ウォー    創元推理文庫
  A RAG AND A BONE     沢万里子・訳

1953年5月3日。
アメリカ、コネチカット州ピッツフィールド市。
テニスコート隣のコルビー公園で若い女性の死体が発見される。
顔は砕かれ、胴体は切り刻まれ、身元が分かる持ち物はなかった。
事件を担当するのは、ピッツフィールド署のマイク・ダナハー警部と部下のダン・マロイ刑事。
被害者がしていたMHかHWの刻印のある指輪を新聞に掲載し、近所に聞き込みをする。
近くで若い男を見たとか、クリーム色のコンバーティブルを見たという情報はあるが、犯人には辿りつかなかった。
身元も失踪届けもなく、分からなかった。
マロイ刑事は頭蓋骨から生前の容貌の復元することを提案し、自らが試みる。
復元されたのは美貌の持ち主だった。
そこから事件は進展を見せ始める。




ヒラリー・ウォーの物語は、何も分からないところから始まるが、今回も同じ。
そして、捜査のコンビも署長と刑事だが、今回は役割が逆で、推理するのは若いマロイ刑事で、ダナハー警部は推測ではなく、事実を見つけ出せと何度も言っている。
しかしその推理が事件を突破する鍵になる。
1度、解決しそうになった事件が新たな展開を見せる、意外性のある物語。
確かに一旦解決しそうになったが、こんな犯人では読んでいる自分たちが分かるはずない、と落ち着かない気分だった。ちょっとズルイと。
それで終わらなくてよかった。

マロイの推理を聞いているとなるほどと思う。それは全て書かれていたのだ。
全然気が付かなかったので、ひたすら感心させられた。

時代を感じるのは、クリーム色のコンバーティブルの持ち主を全部調べるとあり、大変だろうな思ったら6名だった。
調べるのには午後いっぱい掛かったとあったが。
そして、それでも何も出てこなかったら、範囲を州全域に広げるという。
州だと何人居たかは書かれていなかったが、調べるのは手作業で大変だが、台数は少ないという、そういう時代なのだ。


日本タイトルの「愚か者の祈り」も、原タイトルの「A RAG AND A BONE」もマロイ刑事が復元をしている時に、奥さんのキャスリーンが思い出す、キプリングの詩から来ているようだ。
マロイ刑事の情熱が事件を解決したのだから。


ひとりの愚か者がいた。そして彼は祈りを捧げる
(まさにあなたやわたしと同じように)
ぼろと骨と一房の髪に
(わたしたちは彼女を無頓着な女と呼んだ)
しかし愚か者は彼女を美しい人と呼んだ―
(まさにあなたやわたしと同じように!)


刑事仲間にチャーリー・ブラウンがいる。日本で言う山田太郎なのだろうか。
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