しましましっぽ

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「緋色の記憶」 トマス・H・クック

2009年05月22日 | 読書
「緋色の記憶」 トマス・H・クック    文春文庫

The Chatham School Affair    鴻巣友季子・訳

マサチューセッツ州、チャタム村。
老弁護士のヘンリー・グリズウォルドが「チャタム校事件」を回想する。
1926年8月、15歳のヘンリーは父親が校長のチャタム校に新任教師を迎える為、バス停まで出迎える。
ミス・チャニングはとても美しい女性だった。
校長の息子ということで、友人付き合いがうまく行っていなかったヘンリーは教師のチャニングや英文学教師のリードと一緒にいることも多かった。
チャニングとリードが恋をした事から起こる「チャタム校事件」にヘンリーは深く係わることになる。



回想の形で、裁判の記録などから事件の全貌が見えて来る。
少しずつ分かってくる事件はミステリアスな雰囲気があり、陰謀や思わぬ事実が飛び出して来るのかと思ったが、それはなかった。
事件もそれほどミステリアスではなかった。
現在なら問題にはならない事が、時代やその町の在り方で変わって来る。
この物語はミステリではなく、少年の心の葛藤の物語。
大人の事情なんて関係ない少年は、自分の気持ちに正直に生きることが一番大切なことだと思っている。
それをしない大人は、悪い事をしていると同じなのだろう。
周りの、他人のことも考えられるようになることが大人になるということだろうか。
それが、子どもの時にあったことも後悔することになる。
後悔しないで生きていく事はないが、ヘンリーの後悔はかなり厳しい。
周りの風景や思いも丁寧に書かれて、雰囲気のある物語だった。
しかし、係わった人たちがみんな不幸になってしまう悲劇で、苦い味のする思い出だ。
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