しましましっぽ

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「テミスの剣」  中山七里

2020年10月27日 | 読書
「テミスの剣」  中山七里  文春文庫   

昭和59年11月2日台風の接近に伴う大雨の夜。
埼玉県浦和市で不動産会社の久留間夫婦が刺殺される。金庫がこじ開けられ強盗殺人とみられた。
捜査にあたった浦和署のベテラン鳴海刑事と若手の渡瀬刑事は、久留間が高利貸をしていた帳簿を発見する。
埼玉県警との合同捜査の中、その情報は隠し、独自に帳簿の客を調べる。
そして、事件発生から20日後、25歳の楠木明大を逮捕する。
楠木にはアリバイがなく、金庫には指紋も付いていた。
楠木は否定するが、犯行を頭から信じる鳴海は、休ませる時間を与えず、暴力も使った強引な取り調べを行う。
鳴海ほど、楠木が犯人と言う確信を持てない渡瀬だったが、鳴海の指示で『良い刑事役』として甘言を与える。
疲れ果てた榎木は渡瀬の言葉を拠り所に、自白していく。
裁判では無罪を主張するが、楠木の家から久留間の血が付いたジャンパーが見つかった事が決め手となり、死刑判決を受ける。
その後、楠木は獄中で自殺する。
渡瀬は割り切れない気持ちを抱えたままとなる。
それから5年後、渡瀬は迫水二郎と言う強盗殺人犯を逮捕する。
その迫水の犯行が久留間夫婦の事件と似ている事に気が付く。
榎木は冤罪だったのか。






中山七里さんの作品は登場人物がリンクする。
順番に読んでいる訳ではないので、突然気が付いたりする。
渡瀬刑事も古手川刑事が出て来て、あの上司か、と。
渡瀬刑事の若い時に起こった事件。
真っ只中に居た渡瀬の苦悩と選択。正義とは何か。組織とは何か。
そんな話も沢山盛り込まれているが。
組織と言うか、自分の仲間を守る事が1番重要になっている、今の世の中。
自国至上主義もそのひとつだろう。政治でもそれがまかり通っている。
それに嫌悪を感じる自分は、そんなに悩まずに正しい事は認めて欲しいと思った。
「真っ当な刑事になる」と渡瀬が決心したように、真っ当な人たちが真っ当に生きられる社会になって欲しい。
中山さんは「どんでん返しの帝王」だそうだが。
この物語のどんでん返しは、ちょっと無理をして、取って付けた感じ。
正義の顔をした人が悪人はよくあるが、この職業の人がと思うと、人が信じられなくなって嫌だ。
それに目撃証言も、28年後に気が付くなら、その当時の方が気が付く要素が沢山あったはず。
余りも都合良過ぎ。
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