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しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「99%の誘拐」 岡嶋二人

2006年03月26日 | 読書
昭和51年、カメラ・OA機器メーカー、リカードの開発事業部長・生駒洋一郎は、43年に起きた息子・慎吾の誘拐事件の手記を残して病死する。
5千万円の金塊を瀬戸内海フェリーからに海に投げ落とす受け渡し方法で、犯人は金塊を手に入れ、慎吾は無事戻る。
昭和62年、犯人の手に渡ったと思われていた金塊が瀬戸内海の海底から発見される。
なぜ、犯人は金を手に入れないまま慎吾を解放したのか。
誘拐は、当時半導体の会社・イコマを吸収合併したリカードが仕組んだ事だったのではないかと噂された。イコマの社長・生駒洋介は誘拐で手放した5千万円があれば、合併はしなかったと思われるからである。
昭和63年、リカードの武藤社長の孫・葛原兼介が誘拐される。
犯人の要求は10億円のダイヤの原石。その運搬役に指定されたのは、リカードに入社していた生駒慎吾だった。
犯人はコンピューターのプロ中のプロで、それを駆逐して兼介を誘拐監禁し、すべての交渉の指示も行っていた。
コンピューターには素人の刑事の代わりに、誘拐の電話が掛かってきた時たまたま居合わせた、リカード、中央研究所の所長・間宮富士夫が捜査に協力していた。
間宮は生駒洋介の部下で、慎吾の身代受け渡しにも同行していた人物だった。


犯人は誰か、読者には分かっていて、話は進んでいく。
犯人の方に感情移入されているので、何かトラブルが起こったらと心配する犯人と共に不安になったり、間宮が何か気づくのではないかとどきどきしたり。
パソコンを使った、頭脳的犯罪で、身代金の受け渡し方法も、2つともなるほどと感心出来る面白さだった。
最後まで、頭脳戦でいくのかと思ったら、最後は、慎吾がプロ並みのスキーヤーと言う設定があり、蔵王をスーキーで滑り降りたりして、しまうのだが。
ひとつ分からなかった、ダイヤが消えた謎の最後には明かされる。
ラストは意外とあっさりしていて、もうひと捻りあるのかと思った。
犯人が本当に望んだ事はなんだったのかが、はっきり分からない。ダイヤはどうするのだろう。満足したのだろうか。そこまで知りたかった。
それと、誘拐された兼介に何かプレゼントがあるのかと思った。内緒だと言ってダイヤモンドをちりばめたアスカの王冠を贈るとか。
兼介には怖い思いをさせただけで終わってしまったから。
まあ、物を贈っても変わらないかもしれないが、これも武藤に対するひとつの復讐なのだろうか。兼介は武藤の宝物だから。
犯人はそれほどセンチメンタルではないと言う事。犯人はこれで何を得たのだろう。
しかし今だったら、きっと警察の中にもコンピューターのプロがいて、もっと違った結末になっていたかも知れない。諦め切れずに捜査している、馬場刑事が可哀相に思える。
警察、形無しの話だ。
しかし、文句なしの面白さだった。


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