しましましっぽ

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「ネメシスの使者」  中山七里

2020年09月19日 | 読書
「ネメシスの使者」  中山七里   文藝春秋    

平成25年8月10日。
熊谷市佐谷田の住宅で1人暮らしの65歳の女性、戸野原貴美子が殺されて発見される。
壁に犯人が書いたと思われる〈ネメシス〉と文字があった。
戸野原貴美子が通り魔事件を起こした軽部亮一の母親だと分かる。
軽部が女性2人を殺し方法と、貴美子の殺され方が同じだった。
これは軽部亮一に対する復讐なのか。
一方、死刑判決が当然と思われたが、判決は無期懲役だった事に対する司法に対する復讐とも考えられた。
事件を担当するのは、埼玉県警の渡瀬警部。
軽部の裁判を検事として担当した岬恭平もこの事件に注目する。
やがて第二の殺人が起こる。







被害者の無念を晴らす為の殺人なのか。
ネメシスには「復讐」の意味が広まっているが、正しくは「義憤」。
事件とは直接関係にない第三者が正義の鉄槌を下しているという解釈も出来るということだ。
そう考えると、狙われるのは加害者の家族の他にも、死刑判決をしなかった裁判官や弁護士も考えられる。
そんな風に物語が広がって行く。
事件そのもののストーリーを追う他に、死刑存廃論や、刑務所についての色々な規定についても多い。
正確を期す上で、必要なことなのかも知れないが、少々それが面倒くさく感じる。
事件そのものの描写やその後の遺族の様子などで悲惨さや残酷さが胸に迫るが、ストーリーだけを取ると以外と単純。
犯人の真の目的も、途中で分かるので、驚く事もなかった。
そして、渋沢裁判官の考え方にもすっきりしない。
もし、渡瀬のように面会したなら、死刑にした方が良かったと思うのではないだろうか。

死刑制度については、自分は反対の方。
それは冤罪があるから、とこの物語の中でも出て来るのだが。
ただそんなに単純に考えられる事ではないと、今回読んでいて思った。
ただ、裁判の結果と市民感情が離れていると言うのは確かにある。
これが正しと言う結論が出るものではないのだろうが、論議を重ねていくことは大切なのだろう。
知らなかった事もあり、それは勉強になった。
死刑執行は判決を受けてから6か月以内、とか。
そんなない早く執行された事はないだろう。
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