しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「ガラスの独房」 パトリシア・ハイスミス

2007年09月28日 | 読書
トライアンフ建築会社の主任技師、フィリップ・カーターは請け負った仕事の資金横領の罪で10年の刑を受け、刑務所にいた。
責任者だったウォレス・パーマーは死亡したので、フィリップは自分に押し付けられた罪を晴らせなかった。
ごく普通の男のフィリップには刑務所の暮らしは戸惑うことばかりで、囚人仲間とはうまくいかず、看守にも虐待される。
虐待から受けた傷と治療では、モルヒネ中毒の医師から、同じモルヒネ中毒にさせられる。
刑務所では暴動で何人かの囚人や看守が死亡する事件も起こる。
フィリップは妻のヘーゼルとの面会と手紙だけが救いだったが、面会に来たトライアンフ建築の副社長、グレゴリー・ゲイウィルは
へーゼルと弁護士のディビィッド・サリヴァンの不倫を臭わす。
6年半で出所したフィリップは自宅へ戻る。



普通の男だったフィリップ・カーターが、刑務所に入れられた事により変わっていく。
面会に来る妻ともお互いの立場が理解出来ずに、溝が段々深くなっていく。
自分を守る為に価値観が変化していく、というか何かが麻痺して行く感覚。
人は育った環境で性格が決まっていくというが、大人になってからも全く違う環境に入ると変化していくのだろう。
自分の性格を変える、弱い所を直していくというのは意志が弱いと結構難しい。
しかし否応なくそんな環境に投げ込まれてしまったら、変わらざるを得ない。
フィリップを見ていると、気の毒だが怖い。
気持ちひとつで人間、どうとでも行動出来る。
ある意味、理性より感情の方に支配されてしまったと言えるかも知れない。
現社会からは離れた世界感を持って現実社会に生きていくとこうなるという物語。
かなり怖い話だ。

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