しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「てのひらの闇」 藤原伊織 

2007年06月22日 | 読書
タイケイ飲料の宣伝部・制作担当課長、堀江雅之は退職勧奨を受け、後2週間で退職することになっていた。
それが、突然、会長の石崎博久に呼ばれる。
堀江はCM制作会社に勤めている時にタイケイ飲料のCMに係わり、その時にあったミスが元でその会社をクビになる。
その時タイケイの宣伝部長だった石崎が堀江をスカウトして入社させてくれたという縁があった。
ミスの責任を自分が1番に被ろうとした堀江の態度に感じるものがあったからだという。
石崎は、自分が撮影したというビデオを見せ、CMに使えないか考えて欲しいという。
それは、幼児がマンション5階のベランダから転落するのを、一人の男が受け止めて助けるというものだった。
そのビデオを見ていて、おかしな点に気付いた堀江はその点を指摘し、CMには使わない方がいいという判断を石崎に伝える。
何故かその返答に安堵したように見えた石崎は、その日の夜自殺する。
堀江は、石崎の自殺の理由を知ろうと動き始める。


ハードボイルドで、主人公の堀江は自己破滅的な行動をとったり、剣道の達人だったりするのだが、
藤原さんの描く主人公はなぜか爽やかで礼儀正しくて、そしてロマンティスト。
ちょっと行動と合わない感じもするのだが、強いヒーローだ。
暴力団も絡んだこの物語は、裏社会の怖さを覗かせているし、結構バイオレンス。読んでいて身体のあちこちが痛くなる。
しかし、この物語の興味は石崎の自殺の理由を探るというサスペンスの方。
そして、他の登場人物も魅力的だし、会話も楽しめた。
面白かった。

藤原伊織さんは先月亡くなった。ご冥福をお祈りします。


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