しましましっぽ

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「琥珀の望遠鏡 ライラの冒険シリーズⅢ」 フィリップ・プルマン 

2009年02月23日 | 読書
「琥珀の望遠鏡 ライラの冒険シリーズⅢ」 フィリップ・プルマン  新潮社
 The Amber Spyglass  His Dark Materials

ライラはコールター夫人に連れ去られ、眠らされていた。
朦朧をした意識の中で、ライラは死者の世界にいるロジャーと話し、助けに行くと約束する。
ウィルは2人の天使バルサモスとバルクとライラを探し、無事救出する。
ライラはロジャーに会いに死者の世界に行く決心をしていて、ウィルもそれに従う。
メアリー・マローン博士は、ダイヤモンド形の骨格を持つ知性のある生物ミュレファと出会い、ダストを見る事が出来る琥珀の望遠鏡を作り出す。
ライラとウィルは真理計を使いながら自分たちがすべき事をしていく。



第2巻から想像した展開とは違った第3巻。
ダストの謎が解明され、ダストを巡る戦争になるのかと思ったら、あまりはっきりしないで、違う方向に行ってしまった感じがする。
謎は提示するだけで、曖昧なままの部分も多い。
第3巻で出てくる、死者の世界や、ミュレファとダストの関係はこの巻だけで解決しているのだが。

第3巻は死者の国と死者のありかたが中心になっているようだ。
ライラがイヴになる、というのもそれほどの驚きもなく、結局、ライラがイヴでウィルがアダムで2人が愛情を感じたことにより、ダストに変化が起こったのか、正常になったのかは分からないが、世界が変化し始めるという。
12歳同士で愛と言われても、何となく深みを感じないのだが。
キリスト教に逆らった解釈が色々と取り入れられているのようだが、キリスト教の教えもひとつではないし、どれが冒とくするものなのか、いまひとつ分からないのだが、最近はそういう物語も多いと思う。
児童書ということだが、問題解決の為にはあっさりと人を殺し、戦う場面も残酷な感じがして、こちら方がこれでいいのだろうかと思ってしまった。
愛する者を守る為には自らの命を捨てても戦う必要がある、というのは宗教の教えだ。
家族の愛にも触れているのだが、ライラと両親の関係は、子どもを守るためにと突然言われてもそれまでの行動を考えると、中々納得出来ない。心情の変化が分からない。

第3巻まで来て今更だが、何故にライラがこの物語のキーになる少女だったのだろうか。
何かその理由があるのかと思ったら、特に深い意味合はなかった。
天使や魔女や幽霊や異形の生物、死者の世界を含む別の世界、真理計に魔法の短剣、ファンタジーの要素が満載だが、3巻を通じての大きな流れがどこかで滞ったような感じ。
結局別の世界のつながりや人間の善悪のことなど、何だったのだろう。
楽園は自分たちがいまいる場所で自分たちで作りなさい、ということなのか。
読み切れていないのかも知れない。

死に対しての考え方は、手塚治虫さんの『火の鳥』の命のありかたと似ている。
しかし、生きている間に語るべきものを持たないと、暗い世界からは抜けられないらしい。
だからしっかり生きなさい、ということかも知れない。
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