しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「神の子」  薬丸岳

2015年01月17日 | 読書
「神の子」  薬丸岳   光文社 上・下巻

学校に行ったことがなく自分の誕生日も知らず、18歳くらいだと自分で言うひろし。
天才的な頭脳の持ち主で、室井と言う男が支配する組織で、振り込め詐欺のシナリオを考えだしていた。
ひろしは21歳の知的障害がある稔と一緒に生活していた。
室井が稔の始末をするように求めるが、ひろしは受け入れられず、指示を伝えた伊達と争う内、稔が伊達を刺し殺してしまう。
ひろしは稔を逃がし、警察に自分がやったと自首をする。
戸籍がなかったひろしは、少年鑑別所で町田博史と言う名前になる。
少年院で町田の担当になった法務教官の内藤は、町田のIQが161以上と言う記録に驚く。
そして、感情や態度など他に少年と違う町田の態度に戸惑う。
やがて、知的障害がある雨宮が入院して来て、その少年に関心を示した事に気が付き、町田に世話をさせる。
そして、町田と雨宮を含む脱走事件が起こる。
脱走は失敗するが、その時、内藤はある異質な様子に気が付く。








テンポもよく、変な重複も中弛みもなく、上下巻一気に読み。
町田博史に存在感がとてもある。
問題解決の方法も小気味よく、頭の良さと記憶力があればこうなるのかと羨ましい限り。
感情を持たずに育った博史の、変化して行く様子もすんなりと受け入れられる。
人の心は一気には変えられないけれど、変える事は出来るのだと。
町田が磯貝に語った言葉が印象的。
それは徳山から言われた事を取り込んだからなのだが。
「自分が不幸になる事が償いじゃない。
自分が幸せにならないと、相手を幸せには出来ない」。
人の痛みは自分が幸せにならないと分からない。
反対に考えれば、幸せな人は相手を不幸にはしない、と言う事になるだろう。
『幸せ』と言う事をしみじみ考えてしまう。
他の登場人物も、それぞれが個性的。
辛い思いをしている人が多いけど、みんな懸命に生きている。

知能指数は、昔は小学校に入る時に計っていたと思うが、今はやっていないようだ。
先入観を持ってはいけないと言う事か。
裏社会の大きな組織の存在が、現実味を多少欠くような気もするけれど、それは自分が知らないだけ。
そんな映画も多いし、盗聴や監視はアメリカが実際にしているようだけど。
本当に世の中を動かしているのは誰なのだろう。


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