しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「ユージニア」 恩田陸 

2007年07月15日 | 読書
日本の有名観光地、K市の名家・青澤家で「帝銀事件みたいな」事件が起きる。
三世代が同じ誕生日の青澤家、当主の還暦祝いと祖母の米寿を祝う席で、運び込まれたお酒やジュースに毒が入れられ、その場に居合わせた、子ども6人を含む17人が犠牲になる。
生き残ったのは、青澤家の中学1年の長女・緋紗子と家政婦だけだった。
緋紗子は子どもの頃の事故で視力を失っていたので、その場にいてもなんの証言も出来なかった。
家政婦を疑う声も聞こえてきたが、少しして自殺をした青年の遺書から犯人と断定される。
この事件を当時、その場で接した少女が大学の卒論として調べて書いた物が、『忘れられた祝祭』という本になる。
その本の出版で、また新たな動きが始まる。


これは、恩田さんの「Q&A」に似た感じの、インタビューに答えるような形で全体が見えてくる物語。
「Q&A」より、こちらの方が神秘的な妖しさがある。
それは登場人物と、舞台がK市とあるが、金沢という古都が頭に浮かんでいるためだろう。
事件を追ってはっきりさせるより、心情の物語。
あっ、という結末ではないが、事件の真相は分かる。まあ、はっきりしないところもあるが。
悲惨な事件なわりに、悲しい話で後味が悪い。
緋紗子は悪女だったのか、ただ繊細なだけだったのか。

みんなでわいわい騒いでいる時に、ふっと沈黙が訪れる瞬間を「天使が通った」というのだそうだ。
しかし、同じその場にいても、「天使が通った」ことを意識する人といない人がいるような気がする。
恩田さんらしい物語だと思う。
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