しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「覇者」 ポール・リンゼイ

2011年01月27日 | 読書
「覇者」 ポール・リンゼイ  上.下巻  講談社文庫
 THE FUHRER’S RESERVE       笹野洋子・訳

第二次大戦から50年ほど経った頃。
ドイツの刑務所に戦犯として収監されている、ハンス・トラウヒマンは元ナチス親衛隊だった。
トラウヒマンは弁護士ロルフ・ブルナーを面会に呼ぶ。
ブルナーは、ナチスを思わせるドイツ民主連合党のメンバーだった。
トラウヒマンは、〈総統のたくわえ〉の話をする。
それは美術品で、ユダヤ人から没収したり、没収した財産で購入したもの。
絵画は資金になるとゲーリングの山荘で保管し、〈学芸員〉と呼ばれたヨーゼフ・ラトコルブという男が管理していた。
終戦近く、ラトコルブは100点の絵画を国外に持ち出したと言う。
その中のひとつが、アメリカで内輪のオークションに掛けられるという。
トラウヒマンは、ラトコルブは売った利益を自分のものにしようとしていると考えた。
そこでブルナーに、絵画を回収してナチス復興資金にするように指示をする。
そのオークションに、国際美術研究所財団の研究員シヴィア・ロスが現われる。
シヴィアも、ナチスに奪われた他の絵画を見つけるチャンスとしてとらえていた。
そして、ある事件との繋がりから、FBI捜査官のタズ・ファロンに協力を依頼する。





隠された絵画を、探して取り戻そうとするブルナー。
絵画を隠し通そうとしているラトコルブ。
同じように絵画を追う、シヴィアとファロン。
三つ巴のようだが、実はもっと複雑。
主人公はFBIのファロンだが、FBIとしての思惑もある。
シヴィアが肩書き通りの人物とは思えず、仲間のはずだが信用しきれない。
ブルナーの手足となり動くカート・デッカーも優秀な頭脳を持ち、ファロンとの知恵比べが面白い。
デッカーとブルナーも、お互いが腹の探り合いをして出し抜こうとしている。
誰もが気を抜けずに動いているで、読む方も気が抜けない。
“ナチスの隠し財宝”というもの、ドラマチックに盛り上げる。
こんな中で、穏やかな人物が1人いると、何か怪しいと思ってしまう。
読んでいる自分も人間不信だ。
暗号やトラップや、ゲームのような面白さがある。

しかし今でも、ホロコーストはなかったという意見があり、ナチス再興のような思考が垣間見える。
優秀な人間だけを残そう、と。
何が優秀で、それを決めるのは誰なのだろう。
あながち、物語の中の話ではないのかも知れない。
世の中、しっかり見つめていないと。
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