しましましっぽ

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「潤みと翳り」 ジェイン・ハーパー 

2021年06月17日 | 読書
「潤みと翳り」 ジェイン・ハーパー  ハヤカワ・ミステリ文庫   
 Force of Nature             青木創・訳

オーストラリア、メルボルンから車で3時間の所にある国立公園のジララン山脈。
ここで親族会社のベイリーテナンツの合宿研修が行われた。
男女別で5人のグループで、4日間の行程で森を歩くものだった。
集合地点に男のグループは予定の正午より35分前に到着するが、女のグループはなかなか現れなかった。
合宿の企画運営のエグゼクティブ・アドベンチャーのパークレンジャーが探し始めるが見つからない。
暗くなって、女性たちがやっとお互いを支え合いながら姿を現す。
しかし、そこには4人しかいなかった。
参加していたのは、ベイリーテナンツ会社の会長、ジル・ベイリー。
社員のアリス・ラッセル、ローレン・ショー、ブリー(ブリアナ)・マッケンジーとベス(ベサニー)の双子の姉妹。
アリス・ラッセルが行方不明になっていた。
4人の話だと、一行は2日目に道を間違え彷徨、打ち捨てられた小屋を見つけそこで夜を明かす。
起きたらアリスはいなくなっていた。
その前に争い事があり、アリスは不満を募らせていたので、1人で勝手に行ったのだと思った。
持ち込み禁止の携帯電話をアリスは持ち込んでいて、それもなくなっていた。
そのアリスから、連邦警察官のアーロン・フォークに朝の4時半にボイスメールが入っていた。
ボイスメールは雑音の後に、遠い声が短い言葉をささやく。「・・・・・彼女を苦しめて・・・・」と。
アーロンは、ベイリーテナンツを捜査していて、アリスは証拠の書類を集めてくれる協力者だった。
男のグループには、捜査対象のベイリーテナンツの最高経営責任者でジルの弟のダニエルもいた。
アーロンは同僚のカーメン・クーパーとアリスの捜索に加わる。






『渇きと偽り』の続編。
アーロン・フォークは、今度は本来の連邦警察官としての仕事をする。
しかし、上からのプレッシャーが強く、駒の1つとして扱われている様子。
そのプレッシャーを、アリスにも与え、今回の原因にもなったのではと心を痛める。
物語は現在と、女たちのグループの行動を順に追ったものとの同時進行。
会社の同僚たちだが、個人的にも繋がりがある。
それぞれ家族の問題もあり、複雑でかなり深かった。
謎解きの楽しみもあるが、それぞれの関係も興味深く、考えさせられる。
「彼女を苦しめて」も、アーロンは分からないがこちらは分かる。
多分、アーロンが考えただろう事とは全く違っていたことを。
アーロンと父親の話も、カーメンによって進展が見られ、そんな所も続編として良かった。
ジララン山脈には、過去にマーティン・コヴァック事件もあり、不気味さを加える。
構成がしっかりしていて、最後まで楽しめる。

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