しましましっぽ

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「とらわれた二人 無実の囚人と誤った目撃証人の物語」  

2019年02月02日 | 読書
「とらわれた二人 無実の囚人と誤った目撃証人の物語」  ジェニファー・トンプソン‐カニーノ、ロナルド・コットン、エリン・トーニオ  岩波書店 
  PICKING COTTON Our Memoir of Injustice and Redemption         指宿信/岩川直子・訳  

ノンフィクション。
1984年7月、ジェニファー・トンプソンは自宅に侵入した男に襲われレイプ被害を受ける。
その時、ジェニファーの他にも同じ地域で被害者メアリー・レイノルズがいた。
彼女の目撃証言からモンタージュが作られる。
そしてロナルド・コットンが容疑者となる。
面通しでも、2人のうちのどちらかと迷ったが、ロナルドを指名する。
メアリーは容疑者を特定できなかったが、犯行は同一人物だとされた。
物的証拠はなかったが、ジェニファーの証言が決めてとなり、ロナルドは終身刑を受ける。
ロナルドは一貫して無実を訴えていた。
1986年、中央刑務所に収監されていた時、モンタージュにそっくりな男が入って来る。
そして、その男ボビー・レオン・プールは、ロナルドの事件も自分がやったと仄めかしていた。
1987年再審理が始まる。
ボビー・プールも出席するが、ジェニファーは再びロナルドを犯人だと特定する。
そして、メアリーもロナルドを指し示す。
そして1985年、DNA鑑定の結果、メアリーの所に残されていたDNAがボビー・プールと一致する。
ボビーはその事を突きつけられ、自白する。
ロナルドは11年目にして無実が証明される。
その事を知り、ジェニファーは自分の過ちを悔いると共に、ロナルドやその家族からの復讐に怯える。
やがて、ロナルドとジェニファーは顔を合わせる事になりお互いの気持ちを知る。




冤罪がなぜ作られるのか。
その地域の住民の思想や思い込みも影響する。
ジェニファーがなぜ、ロナルドだと確信していったかも書かれて興味深い。
ただ単にジェニファーが間違えたから、ではないのだ。
DNA鑑定が行なわれるようになって、多くの有罪判決が覆っていると言う。
これは許しの物語。
ロナルドが11年間の刑務所暮らしを生き延びて行く過程も興味深い。
戦う時には戦う、絶望してしまった時もある。
それでも家族事を考え、生きて行く。
他人の気持ちを想像出来るロナルドは、ジェニファーの気持ちも想像し考える事が出来た。
嘘の証言の前にどれほど怖い思いをしたのかを。
そして、許せると。
これはロナルドの人柄に他ならない。
相手の立場や気持ちを考えて、理解する。そして思いやりがある。
勿論、手放しで“誰でも許せる訳ではない”と言うのも人間的で、その通りと思う。
刑事や検察官はもっと申し訳なかったと思ってもいいと思うが。
自分の仕事をしただけと言うが、犯人を捕まえたらまっしぐらでは・・・。
ただ、その後この様な事が無くなるように、面通しの方法を変えたりしているそうだ。
ロナルドの冤罪がきっかけで、色々な事が起こった。
これも、ロナルドの人格のなせる業でもあったのだと思う。
ロナルドが許しの気持ちを持っていなければ、その後の2人の交流はなかっただろう。
そして、それを他の人の為に役立てようとする。
どこまでも立派だ。
ノンフィクションだけに、重いテーマ。
でも、前向きな2人で救われる。


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