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しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「月と蟹」  道尾秀介 

2012年07月03日 | 読書
「月と蟹」  道尾秀介        文藝春秋 

小学5年の利根慎一は母親の純江と父方の祖父昭三と、鎌倉市に近い海辺の町に住んでいた。
2年前、父親の政直の会社が倒産したのが切っ掛けだが、その政直は癌で1年前に他界した。
慎一の友人は、富永春也と葉山鳴海。
数年前に鳴海の母親は、研究の為に昭三の漁船に乗っていて事故に遭い命を落とし、昭三は片足を失っていた。
ある日、慎一と春也はヤドカリを祀り、ヤドカミ様として願いを掛ける。
慎一の願いが叶い始める。




慎一の心の動きを追った物語。
感情を外に出すことをしない慎一の思いは、心の中で勝手に膨らみ歪んで行く。
自分が中心の世界、自分が1番大切な世界。
主人公は小学5年だが、心の中は大人と同じ。
きっと、大人になってもその性格は変わらないだろう。
自己嫌悪に陥りやすい性格かもしれない。
慎一と春也が遊ぶ様子も、あまり心がこもっていなく、形だけのよう。
慎一は、春也を大事な友達と思い込もうとしているようだ。
それが必要なことだから。
形だけだから、簡単に崩れていくのだろう。
そんな慎一の気持ちに、いまひとつ共感が出来ない。
ヤドカリを焼くことで、願いが叶うと言う思いも。
子どもは残酷なことをするものだが、これは生贄の考え方。
馴染めない。
子どもの誕生日に、子どもと居ることを優先しない母親にも馴染めない。
こういう時期や、暮らしもあるのだろうと思うけれど。
暗く沈んだまま、明るい陽射しが見えないで終わってしまった感じ。
虚しく寂しい。

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