しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「ピラミッド」  ヘニング・マンケル 

2018年09月20日 | 読書
「ピラミッド」  ヘニング・マンケル  創元推理文庫   
 Pyramiden         柳沢由実子・訳

4つの短編と1つの中編からなる『殺人者の顔』以前のクルト・ヴァランダーの物語。

「ナイフの一突き」
1969年、警察官になったばかりの22歳のヴァランダー。
アパートの隣室の男、アルツール・ホレーンが拳銃で撃たれ死亡する。
自殺と思われたが、理由は分からなかった。
ほとんど外出もせず、静かに暮らしていた男に何があったのか。
だが、解剖した胃の中からダイヤモンドの原石が見つかる。
ヴァランダーは刑事ヘムベリの指導を受けながら、事件に関わって行く。

「裂け目」
1975年クリスマスイヴ。
29歳のヴァランダーとモナの間には5歳になる娘のリンダがいた。
2人の関係はリンダが繋いでいた。
警察署から帰る時、その日何度か不審者の連絡があった小さな食料品店を訪れる。
店に入ったヴァランダーは倒れて死んでいる老女店主を発見するが、その時に殴られ意識を失う。
気が付いた時は縛られ、目出し帽を被った男がいた。
強盗はなぜ逃げずにまだそこにいるのか。
ヴァランダーとその男はぎこちない会話を始める。

「海辺の男」
1987年、イースタ署。
ヴァランダーはポーランドへの高級車の密輸の犯罪集団の追跡を行っていたが、この追跡は10周年を迎えていた。
4月26日。
モナとリンダは2人で休暇旅行に出掛けていた。ヴァランダーは2人の計画を全く知らなかった。
そんな時、タクシーの運転手がスヴァルテからイースタまでの客が着いた時には死んでいたと連絡して来た。
その客は49歳のユーラン・アレキサンダーソンで、裕福な会社社長だった。
心臓発作かと思われたが、毒物が検出される。
自分で飲んだのか、誰かに飲まされたのか。
ヴァランダーは4日間、ユーランが通っていたスヴァルテを訪れる。

「写真家の死」
1998年4月。
25年前にイースタで写真のアトリエを構えるシーモン・ランベリ。
顧客はほぼ決まっていて、記念の日には写真を撮りに来る。
そのシーモンがアトリエで殺される。
それは夜中の11時43分、シーモンが密かに趣味にしている写真の細工を終えて帰ろうとしたときだった。
ヴァランダーも顧客の1人だった。
捜査にあたり、シーモンの鍵のかかった引き出しから1冊のアルバムを見つける。
それは、新聞に載る有名人の写真を悪意を持って歪めて壊したものだった。
政治家や企業家、作家などに混ざり、ヴァランダーの写真もあった。
シーモンとはどんな人物だったのだろうか、ヴァランダーは困惑する。

「ピラミッド」
小型飛行機が密かにスウェーデンに入り、品物を落とす。
その帰りに飛行機は墜落炎上し、2人の死体が見つかる。
身元確認を急ぐ中、飛行機を調べるが、それは、もう存在しないはずの飛行機だった。
一方、老姉妹が営む手芸店が放火で全焼して2人の遺体が見つかる。
しかし、火事で死ぬ前に、首の後ろを撃たれている事が分かる。
それは処刑スタイルだった。
老婦人は見た目とは違っていた存在だったのか。
飛行機墜落の謎と老夫人の殺人事件を追うヴァランダー。
そんな時、ヴァランダーの父親はエジプト旅行に出掛けるが、ピラミッドに登ったとして警察に拘束されたと連絡が入る。








クルト・ヴァランダーが刑事になってから、最初の長編「殺人者の顔」につながるまでの物語。
警察官になり、パトロール課から刑事へ。
マルメ署からイースタ署へ移って、経験を重ねていく様子。
この頃からスウェーデンと言う社会がどうなって行くのか、犯罪と世の中のあり方を関連付けて考えている。
社会問題が、毎回出て来るのは、これまでのシリーズと同じ。
“自分は何も知らない”と自分を戒めながら、成長しようとする姿も変わらない。
私生活も、あまり変わらない様子が。
大人になった人間がそんなにかわるはずはないか。
モナと結婚する前の2人の様子もある。
なんだか、最初からあまりしっくり行っていなかった2人なのだ。
父親との関係も変わらないが、2人の微妙な駆け引きのような関係が良く分かる。
なんだかんだ言っても、お互いを気にしていて、2人は似ているのだ。
しかし、ピラミッドに登ろうとする父親を頼もしく感じてしまう。

ピラミッドは登れる物もあるのだろうか。
映画『ナイル殺人事件』で登っていたのはピラミッドではなかったのだろうか。


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