Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.259:eLCの活用事例委員会報告「現場で作るeラーニングコンテンツ」

2008年02月05日 | セミナー学会研究会見聞録
人財ラボの下山さんが委員長を担当、筆者が副委員長を担当している日本イーラーニングコンソシアム(eLC)の活用事例委員会の第二回会合を先日開催しました。今年はeラーニングっぽくないeラーニング事例を見つけて紹介しようと下山さんと相談していたのですが、前回のコラボノートに引き続き、今回も狙いどおり「eラーニングっぽくない」事例となりました。

今回はノウハウ継承ツール『SoftSimulator』の概要について株式会社テンダの常盤木様より、またツールの活用事例については株式会社アシストの池上様よりお話いただきました。

■日時:2008年1月15日(火) 15:00~17:00
■会場:東京八重洲ホール
■テーマ:
  現場力向上を具現化するSoftSimulator
  ~株式会社アシストでの成功事例~
■発表者:
  株式会社テンダ 市場・製品開発本部 常盤木 龍治様
  株式会社アシスト 支援統括部 教育部 部長 池上敬子様


株式会社テンダ常盤木様よりの説明
常盤木様は、もともと金融系のシステム開発や運用を担当をしていたそうです。その頃、システム操作法の教育が徹底していないため、せっかくの新しいシステムがユーザーに活用されず、情報システムへの投資効果が上がっていないケースにしばしば遭遇したそうです。そんな問題意識から、システムの操作法の教育を問題解決するツールを考え、辿り着いたのがこのSoftsimulatorだったそうです。

集合研修+操作マニュアルの教育からの脱却
ITの投資効果は他の設備投資と比較して見えにくいものです。特に見えないのが、プロセスを定着させるために実施するユーザー部門の教育です。前述のようにユーザーがシステムを使えなければ、どんなによいシステムを開発しても投資効果は期待できません。しかしユーザー教育は集合研修とマニュアルに頼るのみの状態が続いていました。

しかし、集合研修で操作方法のトレーニングを実施しても対象者のレベルはマチマチです。5分で理解できる人から30分手取り足取り教育してやっと分かる人もいます。

操作マニュアルを作る側のベンダー側の体制も極めて生産性の悪い状態が続いていました。「画面ショット」をコピーしては、それをWordに貼り付けることを誰もが疑いなく続けており、「実際のシステム開発よりも、ドキュメント類の作成の方がやっかいなんだよなあ~」と愚痴をこぼすシステム開発者も多いとか??

明らかに「集合研修+操作マニュアル」の教育手段に頼ることに問題があったにも関わらず、その方法論を変えるツールがありませんでした。その状況を変えるために開発したのがSoft Simulatorだったそうです。

Soft Simulatorとは
一言で言えば、Windows上で動作するシステムであればなんでも取り込める電子操作マニュアル作成ツールです。教えたいシステムを操作するだけで自動的に画面やマウスの動作を取り込むことが可能です。そこに吹き出しのコメント等をつけるだけで「動く」操作マニュアルが完成するので、ユーザー部門でコンテンツを作ることができます。よって外部ベンダーに膨大なコンテンツ開発費を支払う必要もなく、情報システム部門も新たな仕事を増やすこともありません。

また、デジカメで撮影した映像をスライドショーでパソコン画面に表示し、それをSoft Simulatorで取り込めば、パソコンの操作以外のコンテンツも開発できます。

そして取り込んだ操作マニュアルを、シミュレーション形式のコンテンツとして活用したり、紙マニュアルで印刷したり、CD-ROMに焼くことも可能とのことです。ツール詳細はテンダさんのWebサイトをご覧ください。
http://www.softsimulator.jp/index.html

最後に常盤木さんがおっしゃっていた「お金持ち企業のためのeラーニングから脱皮したい」「LMSを導入したけれど、使っていないお客さんをなんとかしたい」という主旨の言葉が筆者にとっては非常に印象的でした。

ユーザ兼販売代理店であるアシスト池上さんからのプレゼン
アシストさんはパッケージベンダーです。昔、アシストカルクやアシストワードでパソコンソフトを使い始めた世代にはちょっと懐かしい社名ですよね。アシストさんは、このSoft Simulator販売代理店でもありますが、今回はユーザーの立場で具体的な活用事例をご紹介いただきました。

O業務プロセスの周知徹底
業務プロセスや処理ルールを統一し、それを利用者へ周知徹底することで有益な情報の蓄積が可能となったそうです。具体的には、営業訪問ログの(つまり営業日報)とコールセンター業務のシステムの操作教育コンテンツをご紹介いただきました。

中でも営業訪問ログ教育の徹底は、様々な会社で応用できそうな取組みでした。筆者がかつて営業をしていた頃は、紙で訪問記録等を記入し、それに毎週上司からハンコとコメントをいただくといった事をやっておりましたが、今はどの会社でも電子化してまよね(多分)。しかし「書かない営業は書かない」「書く内容や分量が人によってまちまち」といった事は、紙を電子に代えてもあまり変わりません。そこで、アシスト様では書くこと自体の周知、書く内容の統一化を図るため、訪問ルールの記入方法の操作マニュアルを作り徹底したそうです。これにより営業訪問ログの記入率は大きく向上したことです。

Open office.org徹底教育
Open office.orgとは無料で入手できて、自由に利用できるワープロや表計算・プレゼンツールなどを統合したオフィスソフトです 。アシスト様では全社をあげて、Open office.orgの活用を推進しています。昨年の3月には、社内約1100台のパソコンのうち約700台をMicrosoft Officeから,OpenOffice.orgへ移行したとのことです(下記URL参照)。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070315/265301/
それと連動して、利用者のシステム使いこなしを促進するために、Soft Simulatorで「OpenOffice.orgの動くTips集」を開発したとのことです。


システム担当者の「業務の見える化」
多くの人が始終使うシステムであれば、それなりに業務フローや操作手順が確立しています。一方で特定の人しか使わないシステムや、緊急時の対応など頻度の低い業務は「○○さんしかやり方が分からない」といった属人化が進みます。しかし、費用対効果を考えると、マニュアルを作るまで対応できないシステムも多く、どの会社でも苦慮されているものと思われます。アシストさんではこうした「レアな業務」をSoft Simulatorを用いて手順書化することで、業務の見える化を実現し、属人的な仕事を少なくしているとのことです。

まとめ
eラーニングにおける内製化も、教育部問が外部委託費を削減するために泣く泣く「内製化」するという効率フェーズから、現場のユーザーが自分達の業務プロセスを早く無駄なく伝えるという効果のフェーズに移行しつつあるのだなあと実感した研究会でした。

と、同時に、このように「現場がガンガン教育できちゃう」状態が進展すると、今までの人事教育部門や職能教育部門の役割も再考しなくてはいけないのかも知れません。翻って考えると、我々のような教育事業者の活動も大きな変革を迫られているのだと認識した次第です。

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