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Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol210:LEC大学に改善勧告

2007年01月26日 | 大学のeラーニング
先週、2004年日本初の株式会社立の大学として開校したLEC東京リーガルマイ
ンド大学(東京都千代田区)に対し、文部科学省は学校教育法に基づく「改善勧
告」を大学設置・学校法人審議会に諮問するというニュースが流れました。
改善勧告というのは、2003年の学校教育法改正で新たにできた仕組みなのですが、
本件が初めての適用となります。

規制緩和と教育の質保証、大学とは何か、等かなり根深い問題を内包した今回の
改善勧告ですが、意外と知られていない事の一つに、LEC大学には「通学しない
と学べない通信教育課程」があります。LEC大学には通学課程と通信教育課程の
2つがあり、通学の方をメディアプラス制、通信の方をメディアフレックス制と
呼んでいます。後者のメディアフレックス制が在宅で学習できず「通学」する必
要のある「通信制」です。「どうして?」と思われる方は下記のLECのWebサイト
をご覧ください。
http://www.lec.ac.jp/about/ed_process.html
LEC大学については、ネット上でも色々な意見がUPされていますが、批判、肯定、
中立の3つの意見が掲載していあるページを紹介しますので、参照ください。

批判「ウィキペディア~LEC東京リーガルマインド大学」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%
AC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E5%A4%A7%E5%AD%A6

(上記の記事は、中立的な観点に基づく疑問が提出されているか、あるいは議論
中です。そのため、偏った観点によって記事が構成されている可能性があります。
と冒頭に断り書きがあります。)

肯定「法律文化」株式会社大学への招待
http://www.lec-jp.com/h-bunka/invitation/kabushikigaisya_daigaku.html
(上記の記事は、LECの反町社長自らがお書きになった論文のため、中立的かど
うかは判断の分かれるところかと思います。)

中立「俺の職場は大学キャンパス」
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50282439.html

上記Blog記事の最後に
『※ところで今回、「株式会社立大学がやっぱり問題を起こした!」というニュ
アンスの報道がいくつもありました。もう記事が消されてしまいましたが、例え
ばNHKは「"株式会社大学"改善勧告へ」というタイトルのニュースをサイトに掲
載していました。まるで、株式会社立大学すべてに問題があるかのようなタイト
ルです。今回問題を指摘されたのはLEC大だけですから、他の株式会社立大学が
少々気の毒でした。』
という文章があります。これには激しく同意です。学校法人だってダメなところ
は数多くあるし、株式会社立だって立派に学校を運営しているところもあるから
です。

【追加】
メルマガ執筆時には明らかになっていませんでしたが、改善勧告の内容が文部科
学省のWebサイトで明らかになりました。

うーん凄い

LEC東京リーガルマインド大学に対する勧告等について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/01/07012417.htm

これにあわせて(もしかしたら一連の流れはこのためになのか?)株式会社立大学
を特区だけでなく全国に解禁しようという流れにSTOPがかかることになったようです。

Vol204:「サイバー大学始動」

2006年12月07日 | 大学のeラーニング
今年最初のメールマガジンで「ソフトバンク大学創設へ」というニュースをお伝
えしましたが覚えてますでしょうか?
http://blog.goo.ne.jp/sanno_el/e/551a98133ab9b6ef62b3a411c1f4b032
このソフトバンクによる「サイバー大学」が11月30日に文部科学省より正式に認
可を受けました。(下記、文部科学省の大学設置・学校法人審議会平成19年度開
設予定大学等一覧を参照のこと)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/t_d19/06112215.htm

今までも、信州大学や早稲田大学等でインターネットだけの大学や大学院が開講
しておりますが、今回のサイバー大学は
・学生の定員が多い(1学年数千人規模)
・設置母体が今まで教育事業を本業としていない株式会社立である
など、従来の大学と異なる特徴があります。
上記答申の中でも、そうした「新しさ」からか、で様々な留意事項がついていま
す。とはいうものの、個人的には、あまり既存の枠組みに囚われるのでなくソフ
トバングの真骨頂である「予想外」な展開を期待しております。

例えば、
「在学中の成績によって通話料が安くなる」とか
「卒業生は生涯携帯通話料金無料」

・・・そんな事はないか
サイバー大学Webサイト
http://www.cyber-u.ac.jp/index.html

vol199:最近NIMEのサイトが凄い

2006年11月02日 | 大学のeラーニング
怒涛の公開
最近NIME(メディア教育開発センター)のサイトが凄い事になっています。さま
ざまな教育シーンにすぐにでも活用できそうなeラーニングのシステムやコンテン
ツ、はたまたASPサービスまで次々と無償公開しています。しかもどこかの携帯屋
さんのように「0円です」と言っておきながら、「21時以降のご利用は月200分に
限定させていただきます」と小さく断り書きをすることもありません。
これが無料?とびっくりするようなクオリティのものもあるのに、NIMEのTOPペー
ジからこれらを紹介しているサイトに辿り着くのが至難の業だったりするためか、
「知る人ぞ知る」状態になってしまっています。

ということで、今回は最近公開されたものを中心に内容とURLをご紹介します。

オンライン英単語学習教材「COCET3300」
http://cocet.nime.ac.jp/
一言で説明すると、英単語を覚えるeラーニングです。
NIMEさんのメールマガジンの紹介によると、

>>>>>以下NIMEメールマガジン(第6号)より>>>>>>>
「COCET3300」は、国立高等専門学校46校が参加する「高専I
T教育コンソーシアム」とNIMEが共同開発したオンライン英単語学習用
教材です。全国高等専門学校英語教育学会(COCET)が編集した理工系
学生に必修とされる英単語3300語を収録し、「見る・聴く」「確認する」
「テストする」の機能を使って和訳、リスニング、スペリングの学習ができ
ます。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

とにかく一度使ってみてください。もちろん英単語覚えただけで、英会話ができ
るようになる訳ではありませんが、とても完成度の高いFLASHのドリルコンテンツ
になっています。

CLAD(Contents of Learning Ability Development)
http://clad.nime.ac.jp/
こちらは9月オープンのコンテンツです。下記Webサイトの説明によると、「社会
の人材ニーズとして、大学・高等専門学校の卒業生に求められる知識・スキルな
どの能力開発のためのeラーニング学習システム」とのことです。
現在
・ 人間力系コース ------ 情緒力
・ ビジネス系コース ---- 会社と社会
・ 技術系コース -------- Linuxスキル判定等6コース
・その他のコース ------- コンピテンシーチェック(問題解決力、実行力)
が公開されています。位置づけは、学生を対象とした職業能力開発コースのよう
ですが、一部のコンテンツは一般の社会人でも十分使えると思います。ちなみに、
教材の構造や学習目標の定義の仕方を見ると、おそらくUさんあたりが開発に絡ん
でいるのではないかと推察しています(~_~)。

READ(Remedial eLearning for Ability Development)
http://read.nime.ac.jp/wbt-v1/login.do
CLADが就職を意識した「出口の実力養成」とするならば、READは「入り口の実力
養成」つまり、大学や高専に入学してきた新入生向けのリメディアル教育サービ
スといった位置づけです。
内容は
・ 数学(三角関数、指数関数、対数関数)
・ 物質工学(金属材料、半導体材料、無機材料、有機材料、複合材料)
・ 生物(基礎生物、生命科学)
等。実は最初に紹介した「COCET3300」も、このREADの1コースのよう
でした。

草の根eラーニング
http://kusanone.nime.ac.jp/
実は一般にはあまり知られてませんが、「草の根eラーニング」は経済産業省系の
ものと文部科学省系の2つの流れがあります。メディア教育開発センターで担当
しているのはもちろん後者のほうですCLAD、READと異なり、草の根eラーニングは
在学中の学生でなく、卒業後の若者の就業対策ということで推進されています。

K-tai Campus
http://k-tai.nime.ac.jp/pc/
NIMEではコースコンテンツでなくシステムも公開しています。K-tai Campusは、
大学等での利用を想定した、携帯電話を用いた情報流通システムです。簡単に言
うと、昔の大学の掲示板(休講情報とか追試の案内とかが張り出されていたけど、
最近はあるのかなあ?)を携帯で実現したものです。今後、アンケート作成・自
動集計などの機能も追加する予定になっており、講義単位から学校内単位に至る
幅広い領域での利用が期待されるとのことです。

リアルタイム評価支援システムREAS
http://reas2.nime.ac.jp/cgi-bin/WebObjects/top
簡単に言うと、ネット上でのアンケート作成・運営・集計ができるASPサービスを
無料で使えるというものです。eラーニングのみならず、さまざまな授業評価、研
修評価のために活用できそうです。
ただし、利用の範囲を「教育機関・研究機関等に所属する個人が非営利な教育・
研究目的で使用する場合」としているので、一般の企業研修等で活用するのは難
しそうです。
実は、この仕組みを先々週から公開しておりますTARA-REBAeラーニングのアン
ケートを集計するのに使わせてもらっています。
(実物はこちらhttp://www2.hj.sanno.ac.jp/tarareba/tarareba2.htm
まだまだアンケート回答が少ないので、ぜひ回答してみてください。

といった具合で夏から秋にかけて、次々とリリースされています。ぜひ有効に利
用しましょう。

Vol.198:桜美林学園でのスタッフ主導による大学eラーニング導入事例

2006年10月26日 | 大学のeラーニング
eラーニング導入のキッカケ桜美林学園「eラーニング・イニシアティブ」の軌跡

前回のメルマガで、現在筆者は大学職員、大学講師、大学学生の3つの立場を行
き来しながら日々を送っているとお伝えしましたが、もう一つ忘れていました。
現在特定非営利活動法人日本イーラーニングコンソーシアムの活用事例委員会と
いうところで副委員長をやらしていただいております。そこでは委員長の人財ラ
ボの下山さんと一緒に、eラーニングを導入している企業や大学にメンバーと一緒
にお邪魔してお話を聞かせていただくという活動を細々と続けております。

下山さんとは会うたびに「こんどいつ訪問しましょうかねえ」とか「どこか訪問
先見つかりましたか?」という会話が飛び交っております。今年に入って2回連続
で下山さんが訪問先をアレンジしているので、そろそろ私が見つけなければなら
ない。どうしよう。。。そ、そうだ。今私が在籍している桜美林大学ならきっと
受け入れてくれる筈。ということで、桜美林学園でのeラーニングの導入について
お話をうかがいに行くことになりました。

という極めて私的な事情が、訪問先決定プロセスの本音なのですが、実はこの桜
美林学園、昨年より情報システム部門が中心となって「eラーニングイニシアティ
ブ」という大学横断プロジェクトを結成し、eラーニング導入を検討してきた、大
変興味あるケースなのです。加えて、話題のOpen SourceのCMS(コースウェアマ
ネジメントシステム)Moodleを活用している点も見逃せないということこもあり、
視察訪問にうかがった次第です。


訪問日:2006年10月16日
場所:桜美林大学町田キャンパス(http://www.obirin.ac.jp/
参加者:活用事例委員会メンバーを中心に16名
ご説明いただいた方:桜美林学園情報システム部長 品川昭様(写真)

1.桜美林学園の概要
桜美林学園は、1921年に学園の創設者・清水安三先生が中国北京の朝陽門外に崇
貞学園を創設したのが始まりです。終戦後日本に戻り、高等女学校・英文専攻科
を設立。その後中学校、大学、大学院等を次々に設立し現在に至っています。英
語教育や学園発祥の地の言語である中国語教育で高い評価を得ています。

また、2007年度よりリベラルアーツ学群を開設するなど、リベラルアーツカレ
ッジとしての魅力ある大学づくりに積極的に挑戦し続けています。さらに大学院
教育においても、老年学や大学アドミニストレーション専攻等、特色のある社会
人教育を展開し、学生だけでなく社会人や他の高等教育機関からも注目を集めて
います。

2.eラーニング導入のキッカケ
以前より、科目によっては個々の先生がバラバラの仕組みでeラーニングやイン
ターネットを活用した授業を展開していたそうです。このままの状態では「様々
な仕組みを使わなくてはならないため学生が混乱するのではないか?」「コンテ
ンツの共有化や再利用を考慮しなくてよいか?」という声があがるようになって
きました。そうした問題意識から全学的なeラーニングの仕組みを検討・導入する
ことになったそうです。

3.eラーニング・イニシアティブ
桜美林学園でのeラーニング導入の最大の特徴は、「情報システム部門」が中心と
なって緻密な導入検討プロジェクトを推進してきたことにあります。プロジェク
トのコアメンバーは6~7人で、情報システム部、教務系のスタッフ、教員等が
バランスよくプロジェクトに参加しています。

こうしたプロジェクトメンバーの構成により、経営面での必要性はもとより、IT
環境・組織体制・授業方法・教材整備等、様々な角度から入念な検討ができたも
のと推察しています。

また、プロジェクトのことを「eラーニング・イニシアティブ」と呼んでいます。
プロジェクト名を単に「eラーニング導入プロジェクト」とせず「eラーニング・
イニシアティブ」とすることで、取り組みの新鮮さをアピールしています。たか
がネーミング、されどネーミングです。

4.スコープ(どんなeラーニングレベルを達成するのか?)
私立大学情報教育協会によると、eラーニングの導入には5つのモデルがあるそう
です。桜美林学園では最初から一番高いレベルを狙わず上から三番目のレベルで
ある「学習履歴に基づいた個人指導」の達成を目指しているそうです。無理をせ
ず、かといって安易に走るのではない「ほどほどの線」に当初の目標を定めてい
るところが実際的だと感じました。

5.検討項目
そうしたスコープの達成のため、導入に向けての検討項目は7つの大項目(下
記)とそれを細分化した24の小項目におよんでいます。それらの項目に関する方
針を2005年の7月から12月にかけて策定し、06年の1~3月にかけて試行導入を
実施したとのことです。

~7つの検討大項目~
A.基本
B. 教材整備
C.授業方法
D.LMSの選択
E. 学内IT環境
F.組織体制
G.外部との関係

6.主な方針
ここでは特徴的ないくつかの方針をご紹介させていただきます。

A.方針
いくつかの方針の中で興味深かったのが「コストとプライシング」に関する方針
です。
・コストの柔軟性を確保するため原則として自前の資産は保有しない
・不要なコストを回避するため従量に応じた調達ができるようにする

これは、他の大学ではあまり考えない方針かもしれません。自前で持たない、必
要な分だけ調達するというシステム投資の考え方は経営的に見ても大変参考にな
る姿と言えます。
「まずは大きいサーバをドーンと購入し最新のLMSをインストール。。。」
というのがよくある失敗パターンのeラーニング導入なのですが、桜美林はそうし
た過ちをしていません。企業のeラーニング導入でも、ここまで「コストとプライ
シング」に関するポリシーを明確にしているケースは珍しいのではないかと思い
ます。

B. 教材整備
誰が作るのか、誰が保管するのか、著作権の権利帰属をどうするのか、どういう
授業を対象とするのかといった事に関する方針が決められています。ただし著作
権関連については法人著作とするのか、教員に帰属させるのか等を議論中だそう
です。

C.授業方法
オンデマンド授業に関する考え方について非常に興味深い方針が提示されていま
した。コンテンツの質(画質や撮影といった質)について、高品質なコンテンツ
は外部委託。そうでなければ可能な限り学内で編集するというものです。またカ
メラに向かっての講義は15~20分ぐらいの長さを最大とするなどの方針が定めら
れています。一律に役割を決めてしまうのでなく、ケースバイケースの柔軟性を
残しているところがユニークで実際的なアプローチといえます。

D.LMSの選定
今回の話の中で一番興味深い内容だったのが、LMSの選定プロセスです。そのステ
ップは

(1)18の国内・海外のLMSを集め、収集できる情報より9つに絞る。
(2)9のベンダーに79項目にわたるRFI(Request for information)を送付
(3)上記の回収ならびにデモプレゼンを依頼
(4)そこから下記の4つのLMS(CMS)に絞る
moodle
.Campus
WEB-CT
BlackBoard
(5)それらを試用し、コスト、納期、操作性の観点から検討

その結果Moodleに決定したそうです。
「自分達の欲しい機能」を明確にし、それをLMSの選定のための項目に落とし込み、
公正で妥当性のある選択プロセスを確立した点が素晴らしいといえます。

また、このLMSの選定あたりから、検討プロジェクトがうまく回り始めたというこ
とです。システムを決めないと具体的な活用の姿が見えてこないので、詳細な方
針を決めにくかったそうです。

7.活用状況
現在は、語学をはじめ20人の先生がこのシステムを活用した授業を実施しており、
コース数で50~60コースぐらいだそうです。学生はユニークユーザー数で600名弱。
全校生徒の8%ぐらいだそうです。2006年の4月からの活用なので、まだ数は少な
いという説明がありましたが、初年度の上期としてはまずまずの活用状況といえ
ます。
なお、この背景には英語系の授業を担当する外国人教員の中にMoodleを使ってい
た教員がおり、特に語学系ではコンピュータを活用した学習が極めて効果的であ
るとの認識から、強力な推進力となったと思われます。

8.まとめ
一緒に視察した方が「完璧な導入だ」と感嘆してましたが、私もそう思いました。
ポイントは情報システム部が中心となり、オーソドックスなプロジェクトマネジ
メントのステップに従ってユーザーニーズを明確にしていったところにあると考
えます。
大学のeラーニングの場合、ややもすると声の大きい教員の意見だけで全てが決ま
ってしまったり、あるいはTOPダウンで「やれ」と言われ、あまり考えもしないで、
ベンダーに言われたままのシステムやサーバーを導入するケースが後を絶ちませ
ん。
桜美林学園の導入検討体制およびそのプロセスは、他の大学のeラーニング導入の
まさに見本と言えると考えます。

なお、本コラムを読んで興味をお持ちになった方は、eラーニングコンソーシアム
への入会をお勧めいたします。会員になるとこうした視察訪問に無料で参加でき
るだけでなく、様々な交流の場から情報を得ることができます。
ご入会は下記のサイトより
http://www.elc.or.jp/

vol192:真夏のミニネタ三連発

2006年08月10日 | 大学のeラーニング
週刊誌に「夏枯れ」という言葉があります。8月はニュースが少ないので、週
刊誌の見出しも「人間ワイドあの人は今」といった特集が目立つようになりま
す。実はeラーニングも同じでして、今回はミニネタをあわせてお届けします。

平成18年度の現代GP採択校が決定する
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/07/06072402.htm
7月27日に、平成18年度現代的教育ニーズ取組支援プログラム選定結果が発表
になりました。このうちeラーニング関連の「ニーズに基づく人材育成を目指
したe-Learning Programの開発」は選定取組件数13件となりました。

内訳は国立大学および私立大学が各5件、公立大学,高等専門学校および共同
が各1件でした。国立大学の比率が減ったことが今回の大きな特徴かもしれま
せん。個人的には信州大学の「e-Learningによる単位制度実質化」という取組
みに注目していますが、どれもおもしろそうです。

「大学における営業秘密管理指針作成のためのガイドライン」
http://www.meti.go.jp/press/20060608002/20060608002.html
こちらは6月8日に発表されていたのですが、最近までその存在を知りませんで
した。「営業秘密」という言葉を大学の文脈で用いるとちょっと変な気がしま
すが、このガイドラインは結構重要な意味を含んでいます。大学で管理する必
要性はガイドラインの趣旨通りなのですが、例えば研究業績等の権利の所在が、
大学にあるのかそれとも教員等の個人にあるのかが曖昧になりがちなのが大学
です。営業秘密を語る前に学校法人として権利のある知的財産物が何なのかを
明確にする方が先のような気がしました。

平成19年度開設予定大学等申請一覧
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/s_d19.htm
平成19年度開設予定大学等申請一覧(7月申請)が文部科学省のWebサイトにア
ップされました。思ったよりも通信制の大学が多かったのにびっくりしました。
短大1、学部1、修士課程4、博士課程1の合計7校です。これに既に5月に
公開された新設大学の3校を加え、10校が通信制開設に向けての設置申請を行
うことになりました。
もちろんそのうち、eラーニングを全面的に活用する通信制大学は、おそらく
サイバー大学だけではなかろうかと思いますが、eラーニングの普及に伴い、
通信制(遠隔教育)のネガティブなイメージが軽減されのも一因ではないかと
考えています。皆さんはどう思われますか?

Vol191:大学eラーニング戦略論事後分析レポート5

2006年07月26日 | 大学のeラーニング
e-Learning world2006直前に、大学院のレポートを書きつつ、いかにメルマガ
の記事を書く時間を確保するか?その問題解決のために、現在受講中の「大学
eラーニング戦略論」(詳細http://www2.obirin.ac.jp/~ksuzuki/data/2006Sp
ring.pdf
)のレポートをメルマガに流用する作戦の第四弾、今回最終回は熊本
大学VS青山学院ELPCOについてお伝えします。

実は、この前に北海道情報大学の授業と視察があったのですが、私事で参加で
きなかったため、パスすることになりました。北海道情報大学の関連企業のSC
Cさんには知り合いが結構いるので、もしかしたらこのメルマガを見て激怒さ
れているかもしれませんが、許してやってください。金欠かつとてもこの忙し
い中、自腹でWeekDayに北海道まで視察に行くことができなかったのです。

今回、最終回の授業では今までの「eラーニングで教育している大学」
という視点から「eラーニングを教育している大学」と趣向を変え、熊本大学
大学院社会文化科学研究科教授システム学専攻と青山学院大学総合研究所e
ラーニング人材育成研究センター(eLPCO)の活動の比較研究ということになり
ました。

青学には先日訪問し色々とお話を聞いてまいりました。玉木先生をはじめとす
るELPCOの皆様お忙しい中、丁寧にご対応いただきありがとうございました。
また、熊本大学に関しては、現在教授システム学専攻で学んでいる私の知人S
さんに特別ゲストとして授業に参加いただき、学生の視点から色々なことを教
えていただくことができました。Sさん、課題の締め切りが迫る中、授業に出
席いただきありがとうございました。

さて、早速ですが2つの「eラーニングを教育している大学」の比較というこ
とで、「受講対象者」「教育方法」「教育対象領域」の3つの視点で考察して
みたいと思います。なお両校の詳細につきましては、下記Webサイトをご覧く
ださい。

青山学院大学総合研究所
eラーニング人材育成研究センター(eLPCO)
http://elpco.a2en.aoyama.ac.jp/gp/index.html
熊本大学大学院社会文化科学研究科教授システム学専攻
http://gsis.kumamoto-u.ac.jp/

受講対象者
熊本大学では2006年より大学院として、インストラクショナル・デザイン系のe
ラーニング専門家養成を開始しています。初年度の入学者は15人、その内訳は、
すべて有職者と聞いています。また、学生の多くは首都圏等に在住しており、
熊本に住んでいる学生は1人と聞いています。

一方青学のELPCOは、青山学院の学部の学生に対してeラーニングの専門家を養
成するコースを提供しています。現在の受講者数は172人、約半分が第一文学
部の学生さんということです。また07年は科目数も倍増する等の関係から400
人ぐらいを見込んでいるということです。当然ながら全員日常的に青山キャン
パスに通う学生さんたちです。

熊大は社会人、青学は学生。熊大は修士課程、青学は学士課程、熊大は遠隔地
分散、青学は首都圏在中通学生と受講対象者が異なる点が両者の一番の違いと
いえます。そしてこの違いが教育対象領域や教育方法に対しても影響していま
す。一言で言えば学習に対する動機づけの強さの違いと言えるでしょう。

私自身、現在社会人大学院生として学習している身なのでよく分るのですが、
自腹で仕事や家庭の忙しい中、それでも学習すると決心した動機は、20年前に
親のスネをかじって大学に行っていた時よりもはるかに強いものです。たまに
はやる気も萎えますが(~_~)。

こうした対象者の違いが、次の「教育方法」にもかなり色濃く影響しているの
ではないかと考えています。

教育方法
熊大では、SOUSEKIと呼ばれる自作の学習ポータルサイトの上に乗っかってい
るWeb-CTというシステムで学ぶことになっています。学習の方法としては、講
師の講義映像を何十分も視聴して・・・という授業スタイルは今のところあま
りありません。2単位の科目の場合、だいたい15のタスク(=教室授業でいう
ところの週1回の90分の授業+予復習に近い)を持っており、その15回の
各々に小テストやディスカッションのテーマが用意されています。私は今まで
色々なWeb上のディスカッションを見てきましたが、量的にも質的にもここま
で突っ込んでディスカッションをしている授業は見たことがありません。前述
のモチベーションのなせる業なのか?とにかく活性化という甘い次元をはるか
に超越しています。

一方、青学での学習パターンは、3つの入門科目の場合、ビデオオンデマンド
の授業コンテンツ(10分区切りのもの)+毎回の確認テスト+対面授業といっ
たブレンディング形式になっています。通学している学生の強みを活かして教
室での授業をを取り入れられるところが大きな特徴といえます。

また、青学では学生の学習継続のためのメンタリングをしっかりやっている点
が大きな特徴といえます。AENでの実証実験等から、eラーニングのドロップア
ウトについての知見が蓄えられており、有効なタイミングでのメンタリングが
実施されている点が大きいといえます。

教育対象領域
同じインストラクショナルデザイン、同じeラーニングであっても、どこか少
しずつ違うような気がしていたのですが、今回その違いがおぼろげながら分っ
てきました。

熊大は、インストラクショナルデザインや学習科学、教育工学といった理論を
バックボーンをベースにより実践的な内容にしていこうと目指しているのに対
し、青学はAMLプロジェクトA2ENプロジェクトといった実践がまず先にあって、
そこからスキル体系や知識を導き出しています。
また、熊大の鈴木先生が教育学を、青学の玉木先生は経営学をバックボーンに
しているあたりも両者の違いの源にあるのではないかと推察しています。

そして、「同じ山を別のルートから登っているようなもので頂上はどちらも同
じ」といった例えで当初は考えでいたのですが、山頂も両者で微妙に異なって
いると感じています。熊大では企業経営や教育機関の中でのeラーニングの位
置づけといった政策的な視点がIM等の科目の中で重視されているのに対し、青
学では、とにかくeラーニングというものを組織でまわしていくための「運用
力」の向上に力を入れています(メンターや、ラーニングシステムプロデュー
サなど)。どちらも頂上で重要なので、奇しくもお互いにうまく住み分けがで
きていると感じた次第です。

学生が創る
最後になりますが、両者の話を聞いていて一番興味深かったのは「学生と一緒
になって作っている」という点です。教師、メンター、学生、運営スタッフが
一緒になってよい教育にしていく姿が2つの大学に見られました。今まで「教
師」「メンター」「運営スタッフ」といった教える側ばかりを考えていました
が、そこに参画している学生が学びを通じてeラーニングを作っているのだと
いうことを認識しました。

今後、ELPCOで学んだ人がeラーニングに興味を持ったのがきっかけとなって、
熊本大学の修士に進み、卒業後eラーニング業界の中で華々しく活躍するなん
ていう事が起こる日も近いかもしれませんし、ぜひ期待したいです。

vol189:大学eラーニング戦略論事後分析レポート3(東京大学)

2006年06月29日 | 大学のeラーニング
レポートが先かメルマガが先か?
W杯の開幕中に、大学院のレポートを書きつつ、いかにメルマガの記事を書く
時間を確保するか?その問題解決のために、現在受講中の「大学eラーニング
戦略論」(詳細http://www2.obirin.ac.jp/~ksuzuki/data/2006Spring.pdf
のレポートをメルマガに流用する作戦の第三弾、今回は東京大学iiiOnlineに
ついてお伝えします。

今回は現地ヒアリングに参加することができました。ご対応いただいた山内先
生、お忙しい中お時間をいただき誠にありがとうございました。
「eラーニングなんだから、訪問しても意味ないのでは?」
とお考えになる方も多いかもしれません。しかし公開されている資料から考え
るその大学のeラーニングの姿と、直接行って話しを聞くのでは大きな違いが
あります。さらに、その大学の雰囲気とか空気のようなものは行く事でしか感
じとることができないものです。(これは文章にしにくい)

余談ですが山内研究室のモダンなインテリアとその佇まいは、築30年以上経っ
た元教室で仕事をしている私にとって大変刺激的でした。・・・とても羨まし
い。ということで、今回ひさびさにヒアリングに参加することができ、大変学
ぶところが多く感銘を受けた筆者でした。

iiiOnline設立の経緯
さて、前置きが長くなりましたが、本題に入りましょう。iiiOnlineは東京大
学大学院 学際情報学府の授業をインターネット上で受講するためのサイトと
して2002年4月よりスタートしています。学際情報学府とは2000年に開設され
た学部を持たない大学院単体の組織です。
(詳細はhttp://www.iii.u-tokyo.ac.jp/まで)

この学際情報学府では実践的な経験や目的を重視し、社会人を主要な対象とし
た特別選抜を実施しています。それら社会人の受講機会の確保、大学院の情報
公開、学習過程の透明化と改善という3つの目的を掲げてiiiOnlineはスター
トしました。

iiiOnlineで用いているシステムはexcampusという、メディア教育開発セン
ターと共同で開発したオープンソースの授業配信システムです。excampusは
http://excampus.nime.ac.jp/よりダウンロードできます。(噂では次期バー
ジョンも鋭意開発中とのこと。期待しましょう。)

そもそもiiiOnlineは完全にボトムアップで始まった取組みで、前回ご紹介し
た東北大学のように、上層部の決定でやらざるを得なかったという事はなかっ
たそうです。そうしたiiiOnlineの特徴を一言でいうと、「サスティナブル
(持続可能)なeラーニング」であることにつきるんじゃないかと思った次第
です。今回の視察ではサスティナブルeラーニングのコツを3つ教えていただ
きました。

【サスティナブルなコツ1---科目数をむやみに増やさない】
科目数をむやみに増設せず、iiiOnlineで実施する授業は年間4科目(前期2、
後期2)にとどめているそうです。大学院の修了要件の単位数は30単位ですので、
だいたい2年間で12~15の科目を履修する必要があります。とすると半期
3科目の履修が最低ラインとなってきます。

社会人の場合、半期に3科目の昼間授業に出席することはかなり厳しいので、
うち1科目をiii onlineで履修できるようにしてあげたい。これがそもそもの
iiiOnlineのコンセプトで、だから4科目開設しているそうです。あくまでも教室
での対面授業をメインに考えたい。でも社会人学生への利便性も確保したい。
その結果ほどほどの科目数に落ち着いたようです。

【サスティナブルなコツ2---コスト削減】
上記の科目数を増やさないこともコストに大きく貢献していますが、1科目
(1授業にあらず)あたりの制作費も30万円以下に抑えているそうです。仕事
を極力ルーチン化し、学生アルバイトを撮影スタッフとして活用できるように
するなど、少ない人数で安定してまわせる体制が確立していました。

また、iiiOnlineのWebサイトにある実際のコンテンツをご覧いただければ分か
るのですが、http://iiionline.iii.u-tokyo.ac.jp/index.php。授業の模様を
ストリーミング再生するだけの至ってシンプルなつくりとなっています。

実は本学(産能大学)の通信教育課程でも昔はパワーポイントと同期する形で
講師の講義映像を配信するパターンだったのですが、最近は講師の講義映像だ
けのコンテンツが多くなっています。
まだ、大学では黒板を使う先生が多く、正直パワポを用いる先生はそんなに多
くありません。板書をわざわざパワポに作りなおし、先生の講義ビデオとパ
ワーポイントのスライドチェンジのタイミングの同期をとっていると時間とコ
ストがかかってしまうからです。
さらには、ブロードバンドの進展により、黒板やホワイトボードの字も十分ス
トリーミング再生でも読めるようになってきましたし、資料があるのなら、PD
Fでダウンロードし、それを印刷して手元に置きながら講義を見た方がよいと
いう意見も多いようです。

【サスティナブルなコツ3---無理に説得はしない】
こうした映像系のeラーニングを展開する場合、一番ネックになるのは「授業
の公開に協力してくれる教員が少ない」という点ではないでしょうか?この点
をお聞きしたところ「公開しなくても良いので無理に説得はしない」とのこと
でした。
また、どうしても公開したい授業の教員を説得する場合の裏技として、その授
業を受けた学生に「先生の授業はとても素晴らしので、もう一度iiiOnline上
で見ることができたらうれしいのですが・・・」とお願いしてもらうと、快諾
いただく確率が高くなるとのことでした。

様々な教育の情報化の中でのiiiOnline
iiiOnlineが開始したのは2002年。iiiOnlineは東京大学における教育の情報化
取り組みの起爆剤だったと山内先生が語っていました。現在その爆発は、OCW、
TODAI-TV、BEAT、MEET、等の様々な教育の情報化に関する取り組みに引火して
います。そうした東京大学自体の全学的な動きの中、iiiOnlineが当初掲げて
いた目的のうち「大学院の情報公開」についての役割は少なくなってきたと思
われます。

視察に行く前、筆者は「そろそろ他のシステムに移行してiiiOnline自体は終結
してしまうのでは」と考えていました。
しかし、サスティナブルという大きな武器をiiiOnlineは持っています。安定
して運用できることは、教育サービスにとって非常に重要な要素です。これか
らも細く長く身の丈にあったスペックで継続していくであろうiiiOnlineの姿
にエールを送り続けたいと思いました。

VOL188:大学eラーニング戦略論事後分析レポート(ISTU)

2006年06月15日 | 大学のeラーニング
W杯の開幕中に、大学院のレポートを書きつつ、いかにメルマガの記事を書く時
間を確保するか?その問題解決のために、現在受講中の「大学eラーニング戦略
論」(詳細http://www2.obirin.ac.jp/~ksuzuki/data/2006Spring.pdf)の
レポートをメルマガに流用する作戦の第二弾です。今回は東北大学インターネッ
トスクール(ISTU)についてお伝えします。

今回も仕事の都合でヒアリングに参加できなかった筆者ですが、当日参加した方
のインタビューメモにより、公開されている情報だけでは不明であったことが分
かってきました。視察にご協力いただいた東北大学の関係者の皆様、現地視察に
参加した方にこの場をお借りしまして御礼申し上げます。

東北大学インターネットスクール(ISTU)設立の経緯
ISTU(Internet School of Tohoku University) は、社会人学生等のスクーリン
グへの出席が困難な学生に対し教育機会を拡大するためスタートしました。
2000年8月に開催された、「21世紀の研究と教育に関する国際シンポジウムISRE2000」
で東北大学より掲げられたフォーラム宣言がこのISTU の発足のきっかけとなっ
ています。(下記参照)
http://www.bureau.tohoku.ac.jp/kokusai/exchangej/othersj/index-h1-2.html
実は、この宣言が発表されたときは、インターネットによる授業科目の配信を行
なう段取り等が具体的に決まっていたわけではなかったそうで、宣言にあわせる
形で急遽開設にむけて動き出したそうです。つまり典型的なTOPダウン方式で導入
が決定された点が大きな特徴の一つとなっています。

開設時目指したISTUの特徴
ISTUが開設時に目指した特徴としては「全大学院研究科の共通基盤であること」
「2つのeラーニング導入推進組織がある」の2点です。
通常、大学(学部)の授業からeラーニングに着手する大学が多い中、ISTUでは
「大学院」しかも当初から全研究科を対象に発足しました。これは
1)東北大は研究大学である。
2)学部の教育はeラーニングよりも対面で授業したほうがBetter。
3)学部の遠隔教育ということでは放送大学が既にある。
などの理由からだそうです。

また、ISTUでは、そうした全研究科的な推進を可能とするため、主にeラーニング
の基本方針等を検討するインターネット・スクール運営委員会と、実際のタスク
を担う大学院教育情報学研究部という2つの支援組織を置いていることも特徴の
一つとなっています。

>eラーニングは最初から成功するとは限らない
私がISTUの事を調べていて一番驚いたのは、メディア教育開発センターのWebサイト
での文書を読んだ時です。
http://www.nime.ac.jp/reports/001/jirei_1.html

そもそも、大学にしろ企業にしろ、最初から成功しているe-learningなんて
どこにもありません。どこかに問題を抱えながら、なんとかやり繰りをしながら
運用しているのが実際の姿だと思います。そして問題の部分を関係者の中だけに
隠し、改善の芽を摘むようなことをしがちになります。しかし、ISTUでは現状の
課題を見据え、それを外部に対してきちんと説明しています。この姿勢に最も感
銘を受けました。

組織の中でeラーニングを存続させるため、
より多くの受講者やクライアントに使ってもらうため、
はたまた出資者からeラーニングに対しての投資を継続させるため、
我々はつい自分たちをよく見せることばかりに注力してしまいます。
上記の文章はeラーニングに携わるもの全てに対し、
現状を直視し問題点を真摯に解決することの大切さを教えてくれます。
必読です。

今後に向けて
なかなか全研究科がeラーニングに目を向けてくれない。
コンテンツの数も伸びない。
ユーザーも想定していた学外でなく学内の学生が殆ど。
そうした課題を抱える中、ISTUでは現在建て直しに向けて新しいスタッフ
体制で頑張ってらっしゃいます。その取組みの中で興味深かったのは「広報の道
具としてのeラーニング」というコンセプトと「重点化=医学教育」です。

東北大学のWebトップページhttp://www.tohoku.ac.jp/japanese/にある「東北大
学インターネットスクール」というバナーをクリックしてみると、今まで開催し
たシンポジウム等の映像をご覧いただくことができます。学習への動機付けも学
習の大切な一要素ととらえるのなら、広報とeラーニングは結構近いものなんだと
感じた次第です。
そういえば、ARCS理論(学習の動機付けに関する考え方)のAもAIDMAの法則(消
費行動についての仮説)のAも、同じ「Attention」なんですよね。

また、重点化の中で出てきた「医学部の教育に活用したい」というのは大きな可
能性を感じます。単に学習のために使うだけでなく、遠隔医療支援等のEPSS的な
活用にeラーニングのシステムが発展していけば、僻地医療の革新や、普段なかな
か忙しくて教育研修の時間がとれない現職の医師の方にも教育の機会が提供でき
そうだからです。

失敗をきちんと見据えて、明日に繋げるeラーニングを目指すISTUの姿勢はぜひ見
習わなくてはいけないと思いました。

次回は東京大学の分析レポートの予定です。予告ですが、先ほど「大学教育の
情報化、そのフロントライン(http://utmeet.jp/events/index.html)」
という東京大学MEETのイベントに参加し、とことん感銘を受けて帰ってきたばかり
ですので、期待してください。

vol187:早稲田大学人間科学部eスクール

2006年06月01日 | 大学のeラーニング
メルマガを書く時間がない!
最近、やたらと仕事が忙しい上に、大学院のレポートラッシュが重なり、メル
マガの記事を書いてる時間がなくなってきました。加えてW杯の開幕が近づき、
サッカー情報の収集が忙しくなってきたため、ますます深刻な事態に陥ってお
ります。

そんな中ふとアイデアが浮かびました。「大学院のレポートをメルマガに流用
すればいいのだ」という作戦です。ということで現在受講している「大学e
ラーニング戦略論」
(詳細http://www2.obirin.ac.jp/~ksuzuki/data/2006Spring.pdf
の事後分析レポートを加工し、紹介していきます。今回は早稲田大学人間科学
部eスクールについてです。(先生ごめんなさい)

知ってるつもりが一番怖い
この科目では、授業の数日後に取り上げた大学の現地視察にうかがいます。今
回私は残念なことに、早稲田大学の視察に参加することができませんでした。
しかし、授業での発表のために色々と調べる過程で、今まで気がつかなかった
点を数多く発見でき大変有意義な事例研究となりました。やはり知ってるつも
りが一番怖いです。

さらに、現地視察に参加した他の履修生の詳細なメモがあったため、公表され
ている文献・資料から確認できなかった事項を明確にすることができ、大変参
考になりました。視察にご協力いただいた早稲田大学の関係者の皆様、現地視
察に参加した方にこの場をお借りしまして御礼申し上げます。

今回、早稲田大学人間科学部eスクールの事例から私が学んだことは、「講義
録からの早稲田大学遠隔教育の歴史」「映像配信型eラーニングにおける類
型」「単位毎受講料とeラーニング」の3点となります。以下それらについて
ご紹介します。

講義録からの早稲田大学遠隔教育の歴史
早稲田大学前総長の奥島孝康氏は『創立わずか4年後の明治19(1886)
年、大隈重信は、すべての国民に中高等教育を開放する意図をもって、「早稲
田講義録」を発刊。受講生(校外生と称した)は戦前に270万人に達し 、
これが早稲田大学の大衆性の世評をつくった。eスクールは、この大隈の志を
受け継ぐべく新たな挑戦である。 』と語っています。

大学通信教育のルーツとして戦前に講義録というものがあったことは以前より
知っていましたが、今回早稲田大学のeラーニングへの取組みを調べる中で、
こうした講義録以来の「開かれた大学」の伝統が受け継がれており、eラーニ
ングという新たな学習手段の普及により、庶民の教育を主眼として創設された
早稲田の精神が復活したというところにeスクールの歴史の重みを感じました。

映像配信型eラーニングにおける類型
大学eラーニングは教室授業の補完型と代替型の2つに大別できます。(補完
と代替については昨年のeラーニングフォーラム資料を参照願います
http://www.elc.or.jp/date/Conference2005winter/F1.pdf)
今回の早稲田大学は後者に位置づけられます。そして今回事例研究を通じて、
この代替型の中も「教室生撮り-教室別撮り」と、「メンターの介入の強弱」
の2つの軸による分類を考えてみました。

教室生撮り-教室別撮り
教室生撮りとは、通常の教室授業を録画し、それに簡易な編集をし講義映像コ
ンテンツを作成することを指します。一方、教室別撮りは、スタジオや学生の
いない教室等で、収録用に講義を実施し、それを編集して講義映像コンテンツ
を作成することを指します。前者は教室の臨場感を伝えることができる、コス
トがかからない等のメリットがある反面、教室では耐えられる講師の間がe
ラーニングでは冗長になってしまう等のデメリットがあります。

早稲田大学人間科学部eスクールの場合は前者を中心にしつつ、適宜後者の別
撮りを取り混ぜる折衷型です。コストと質の面で両者のイイトコドリをしたこ
の方法は大変参考になりました。

メンターの介入の強弱
単に映像を流しっぱなしにするか、それとも教師やメンターが学習に介入する
かどうかの違いです。
早稲田大学人間科学部eスクールの場合は、映像配信よりもむしろ「教育コー
チ」の学習活動への介入が学習のコアになっているとも考えられ、その点が他
の大学のeラーニングと大きく異なります。つまり、教育の重点を、従来の大
教室での授業や講義映像配信だけのeラーニングに見られるような「一律一斉
的な知識の付与」ではなく、「個別の学習者にあわせた指導」にシフトしたい。
その手段としてeラーニングがあったというのが早稲田eスクールの狙ったとこ
ろなのではないだろうかと推察しています。

単位毎受講料とeラーニング
日本の大学の中では珍しく、早稲田大学人間科学部eスクールでは授業料の単
位毎課金を行っています。これは「教育コーチ」による個別指導というコスト
のかかる教授方略を採用したことが一因と推察しています。大教室での「一律
一斉的な知識の付与」型の教育であれば、教室に50人いようが100人いようが
教育の運用コストはそんなに変わりません。しかし個別指導となると、受講者
数の増加にともなって教育コーチを確保しなければなりません。

つまり従来「固定費」だった教育コストが「変動費」に変り、それに伴い受講
料も変動費的に課金する必要がでてきたため単位毎受講料という設定に変更し
たものと推察しています。

まとめ
早稲田大学人間科学部eスクールにおける「個の学習者を尊重する姿勢」に感
銘を受けました。万人に対して広く知識を伝えていくというインターネットの
一斉同時配信性やコスト効率に着目するのでなく、個の学習者を支援するため
ネットでの双方向性に重点をおき、教育の質の向上を目指している点に、他大
学のeラーニングとの違いを認識しました。

次回は東北大学インターネットスクール“ISTU”の分析レポートの予定です。

vol186:BEATとMEET

2006年05月18日 | 大学のeラーニング
一昨年より、本メルマガで東京大学とベネッセさんが一緒にやっているプロジ
ェクトBEAT(ベネッセ先端教育技術学講座)についてお知らせしてきましたが、
今年4月から東京大学とマイクロソフトによる共同研究プロジェクトMEET(マ
イクロソフト先進教育環境寄附研究部門)も始動したようです。
http://www.utmeet.jp/index.html

で、この開設シンポジウムが開催されます。
メディア教育開発センターの吉田文先生の基調講演もありますので、上記の調
査結果について色々とお話が聞けると思います。しかも入場無料。

完全に個人的な興味関心で申しますと、このシンポジウムの最大の見所は、東
京大学副学長やマイクロソフト代表執行役社長と肩を並べで、私の大好きな西
森先生や望月先生が、会の趣旨やMEETの活動について説明なさる部分です。
「カニバケツ理論とシミュレーション型教材」等、いつもウィットに富んだ発
表をしていただけるお二方なので、BIGなスピーカに挟まれても臆することなく
飛ばしまくってくれることを期待しています。
みなさんぜひ応援に行きましょう。

以下ご案内

===================================================
「大学教育の情報化、そのフロントライン」

東京大学 大学総合教育研究センター
マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門
設立記念シンポジウム
~大学総合教育研究センター設立10周年記念~
===================================================
東京大学では、情報技術を活用した教育環境の革新と向上を目指す全学的取り
組みとして、「教育環境のリデザインプロジェクト(TREE)」を展開していま
す。
このプロジェクトの推進のため、今春、大学総合教育研究センターにマイクロ
ソフト先進教育環境寄附研究部門(MEET)が設置されました。
これを記念して下記のシンポジウムを開催します。
このシンポジウムでは、高等教育の情報化に関する国内外の調査・先進的事例
について皆さまと情報を共有し、今後の方向性を考えていきたいと思います。
この分野に関心を持たれる東京大学内外からの多数の参加者のご来場をお待ち
しております。
---------------------------------------------------
●日 時  6月14日(水) 14:00~18:30
●場 所  東京大学 本郷キャンパス 弥生講堂・一条ホール
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/yayoi/●参加費  無料
●主 催  東京大学 大学総合教育研究センター
●共 催  マイクロソフト株式会社
●協 力  東京大学教育企画室TREEプロジェクト
●お申込先 http://utmeet.jp/events/index.html
●お問合先 東京大学 大学総合教育研究センター
マイクロソフト先進教育環境寄付研究部門
TEL 03-5841-1727  FAX 03-5841-1729
e-mail sympo2006@utmeet.jp

●プログラム
<挨拶> 14:00~
東京大学 理事・副学長 古田 元夫
東京大学 大学総合教育研究センター センター長 岡本 和夫
マイクロソフト株式会社 代表執行役社長 Darren Huston

<趣旨説明>
東京大学 大学総合教育研究センター 客員助教授 西森 年寿

<基調講演I> 14:30~
「日本の高等教育の情報化の現状と課題について」
独立行政法人メディア教育開発センター 教授 吉田 文

<事例報告I> 15:20~
「映像コンテンツを活用するe-learningにおける効果的な運用方法」
株式会社ビジネス・ブレークスルー 取締役 伊藤 泰史
http://www.bbt757.com/

<休憩> 16:00~

<基調講演II> 16:20~
「TabletPCによる教育実践の現状と未来」
ワシントン大学 教授 Richard Anderson
http://www.cs.washington.edu/homes/anderson/

<事例報告II> 17:10~
「TabletPCを利用した教育ソフトウエアと活用事例」
東京大学大学院 情報理工学系研究科 助教授 五十嵐 健夫
http://www-ui.is.s.u-tokyo.ac.jp/~takeo/index-j.html

<総括>
17:50~
東京大学大学院 情報学環 助教授 山内 祐平
18:00~
東京大学 大学総合教育研究センター 客員助教授 望月 俊男
18:15~
東京大学 情報基盤センター 教授 山口 和紀

<懇親会> 同会場 18:30~
(懇親会は参加費3,000円となっております)