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佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

放射線科医の日常や、診療紹介、推薦図書などをご紹介します。問い合わせ先等、詳しくはカテゴリー「はじめに」をご覧下さい。

2008.09.25 抄読会 FLAIR像で見られるくも膜下腔の高信号

2008年09月25日 08時22分59秒 | 抄読会
 大学に帰ってきてから初めての抄読会でした。ちょっと、ラクをしてpictorial essayから選んでしまいました。やっぱりまずかったみたいです。

 内容は、結構おもしろかったのでご紹介します。

 AJR: 189, October 2007 913-921
 Stephan L. Stuckey et al.
 Hyperintensity in the Subarachnoid Space on FLAIR MRI

 まずは、病的な状態で見られる場合の原因


・くも膜下出血:CTではアーチファクトとの鑑別が難しい部位に有用

・髄膜炎:造影後FLAIR像では、造影後T1WIより有用

・癌性髄膜炎

・Leotomeningeal Melanosis:メラニンのT1短縮効果による

・脂肪を含有する腫瘍:脂肪腫や、dermoidの破裂

・Acute stroke:血栓そのものの描出、あるいは、末梢で流速の低下した血管の描
出。

・もやもや病:いわゆるIVY sign。

・くも膜下腔でのCSFに対する血管(血液)の割合の増加:腫瘍による容積効果などで、CSF spaceが圧排されるような場合など。

・造影剤:病的な状態で、経静脈的に投与された造影剤がくも膜下腔に漏出して、残存する場合。



 そして、アーチファクトが原因となるもの


・酸素投与の影響:100%酸素吸入で見られたが、50%酸素では見られなかったとの報告あり。

・CSFの拍動:頭蓋底や、橋前槽、小脳橋角槽で見られることが多い。CSFのflow
が落ちる円蓋部では見られにくい。

・血管の拍動:位相エンコード方向に見られる。眼球運動も同様のアーチファクトの原因となりうる。

・磁化率アーチファクト

・動きによるアーチファクト

 このような内容でした。各画像は、論文をご覧下さい。

2008.02月 抄読会記事のお詫び

2008年02月09日 08時58分41秒 | 抄読会
 前回の2008.02 抄読会で出した画像に関するコメントをいただきまして、本当にありがとうございました。
 あまりにヒドイ問題の出し方だったことをまずお詫びします



 前回出した画像の所見は、横行結腸壁の肥厚と強い増強効果、それに横行結腸周囲の索状構造、点状構造と軽度の脂肪濃度上昇がみられます。壁の増強効果は比較的均一に強く、明らかなターゲット状の層構造はみられません(造影タイミングがいわゆるenteric phaseではありませんが・・)。
 この画像のみからいえるのは、MIZ先生、kum先生にいただいたコメントの通りで比較的深い層まで及んだ炎症を来した状態と考えられます。感染性腸炎よりは、潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性腸疾患が鑑別にあがり、血管炎に伴ったもの次に挙げられると思われます。全体的に均一な増強効果からは、線維化などの慢性炎症性変化を反映した所見が疑われます。
 
 未提示の画像ではS状結腸~直腸に同様の炎症性変化がみられ、痔瘻・肛門周囲膿瘍がみられます。
 臨床的にはクローン病と診断されていました。病理像でも、非乾酪性類上皮肉芽腫がみられていました。

 画像のみではクリアカットに鑑別できない症例を、キー画像まで未提示で(故意ではありませんが)問題として出してしまい、本当に申し訳ありませんでした。半オフィシャルブログとして記事を投稿していますが、今回の問題については個人的なファイルから出したもので、当放射線科専門医のチェックを経ていません。次回からは、吟味の上、教育的な症例を呈示しますのご容赦下さい。

2008.02月 抄読会

2008年02月07日 08時11分08秒 | 抄読会
 今月からguri先生とRyoko先生が雑誌紹介となったので、後期研修医3名が抄読会をさせていただくようになりました。
 American Journal of Roentgenology vol. 188, No. 5, May 2007
Radiology:Vol.243:No.2-May 2007
 からです。

・hiraiくんはRadiologyから
 Sebastian T.らの Multi-Detecter Row CT of the Small Bowel: Peak Enhancement Temporal Window-Initial Experience を。
 現在CT係のhiraiくん、最適な撮像条件を探求中です。 
 MDCTを用いて、正常小腸壁が最大の増強効果示すのは造影剤注入後50秒後または、大動脈のピークから15秒後とのことでした(370mgI/ml製剤を5ml.secで注入、凄いですね)。当院は4列CTですが、ほぼこの辺りの時間をねらって撮っています。

・syngoくんはRadiologyから
 Munetaka M.らの Lung Carcinoma: Diffusion-weighted MR Imaging-Preliminary Evaluation with Apparent Diffusion Coefficient を。
 ADC値を計測して、高分化腺癌が他の肺癌と比較して比較的高い値をとっていたという論文です。
 preliminary evaluationなので、なんとも言えないですが、肺のMRI(特に拡散強調画像)の撮像・評価は難しいので現時点では臨床応用も難しいでしょうか?


・僕はAJRから
 Michael M.らの A pattern Approach to the Abnormal Small Bowel: Obserbations at MDCT and CT Enterography を。
MDCTを用いて小腸の異常のパターン(増強効果、局在、腸管周囲の性状)からアプローチする鑑別法についての総説論文です。
さまざまな病期のクローン病、ループス腸炎、放射線腸炎、上腸間膜動脈血栓症を含む腸管虚血、血管性浮腫、小腸壁内血腫、悪性リンパ腫、憩室炎、神経内分泌腫瘍などのMDCT像が載っていました。



ティーチングファイルからの問題です。
20歳台男性『腹痛・発熱で緊急CTを』というオーダーです。
鑑別をお願いします。

追加記事はこちら

抄読会"Hot tub lung"

2007年12月05日 20時01分25秒 | 抄読会
今日は月に一回の抄読会でした。若手?はAJR&Radiologyの2007年4月号からのselect、hirako先生、bon先生の雑誌紹介もありました。

タイトルの"hot tub lung"は銭湯などのジェットバスに混在する非定型抗酸菌MACを蒸気と共に吸引することで発症する、過敏性肺臓炎の一種です。画像としては通常見られる過敏性肺臓炎同様で、小葉中心性の淡い結節~斑状影、モザイクパターンがほぼび漫性に認められます。(写真はAJRよりの転載です)。

Gri先生は直腸癌の深達度を、薄いスライスのMRIを撮像することで平均0.05mmの誤差で診断できる!という非常にすばらしい論文(Radiology)でした。とてもきれいな画像が掲載されていて、病理ルーペ像そっくりのMRI像でしたが、なかなかこんなにきれいに撮像することはできませんので、平均0.05mmなんてとてもとても・・・

mune先生は硬変肝に発生する脂肪含有結節をretrospectiveに検討し、その中で悪性化するもののMRI所見を検討するというものでした。in-out of phaseのサブトラクションで信号低下を認める脂肪含有結節のうち、周囲肝実質より脂肪抑制T2WIで高信号なもの、in phaseで低信号なものが悪性の可能性が高いという結果だそうです(AJR)。

hirako先生は治療の雑誌、Bon先生は核医学の雑誌紹介。専門の先生たちのコメントが勉強になりました