ツルピカ田中定幸先生

教育・作文教育・綴り方教育について。
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『国分一太郎童謡集』より ―蝗ー

2020-10-24 08:39:50 | Weblog
     『国分一太郎童謡集』(北の風出版)より

 昔、村の子は、むちゅうになってイナゴとりをした。

「汽車道なんご」
 「なんご」は「蝗」と書く。「いなご」のことである。国分はこの童謡集に「55いなごとりのこと」「56おばさりなんご」、そして、「69汽車道いなご」と「いなご」を題材にして三つの童謡を書いている。

 「いなごとり」では、「朝つゆあるうち とれとれ いなご」といい、「おばさりなんご」では、一どに二ひきとれるから、「せめれば たまる」といなごとりの応援をしている。当時、「いなごとり」は、学校でも奨励し、時には「いなごとり競争」のようなことさえさせていた。学校でも家庭でも、いなごは現金収入になっていたのである。子どもたちが夢中になって、いなごをおいかけて、「汽車道」、いまで言えば線路、その土手まで蝗をおいかけたら、命をうばわれることもある。そんなとき、「汽車道 蝗は にげかたじょうず」と語りかけているのである。「蝗とり 行くなら 汽車道へ 行くな」と注意もしているのである。

 それを、なるほどそうか、と思わせる表現で、リズムをともなって子どもたちに童謡で伝えている。命を守る、教師国分のやさしさと責任感が感じられる。(本書181頁より)

 いなごとりのこと

 朝つゆ あるうち
 とれとれ いなご

 日がてりや はねて
 つかまらぬ
    
 羽が ぬれてる
 朝げのいなご
 もんぺが ぬれても
 かまはない。
 とばない うちに
 さあさとれ。


おばさりなんご

 子供を おぶつた
 おばさりなんご

 とびかた のろまな
 おばさり なんご

 おばさり なんごは
 せめれば たまる

 一どに 二ひきで
 せめれば たまる

 
汽車道いなご

 汽車道 蝗は(なんご)
 にげかた じょうず

 汽車が くるたび
 とびかた 練習

 羽は のびたし
 とびかた じょうず

 あしが じょうぶで
 はねかた じょうず

 からだが やせてる
 そのかわり

 蝗とり 行くなら
 汽車道へ 行くな。
        国分一太郎児童文学集6『塩ざけのうた』



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