ツルピカ田中定幸先生

教育・作文教育・綴り方教育について。
神奈川県作文の会
綴方理論研究会
国分一太郎「教育」と「文学」研究会

先生方へのお年玉ー5

2013-01-10 17:18:44 | Weblog

教科の中で「書く活動」をすることの意味と方法―15

      国語科編

承前

書きながら読む『ごんぎつね』指導

『ごんぎつね』の感想の詩が生まれた背景には、全文の視写、また、その文章への「書き込み」(ひとり読み)だけでなく、「初発の感想」を書いたり、授業のあとに書く「感想」も、大きな力となっていたのです。

 さらに、六の場面においては、注目させたい文章について、叙述をおさえ、そこから想像したことを書かせています。

「ごんぎつね」の読みの中での「書く活動」②

 

第六場面  ごんをうった兵十の気持ちを考えて読もう

 

☆想像して書こう 

 

「兵十は、火なわじゅうをバタリと取り落としました。」

◇バタリという感じは、何かすごく、ころしてしまって悪かったという感じがする。取り落としたというところは、兵十が無意しきのうちにおとしたような、力がぬけた感じがする。ここは、兵十が本当にもうとりかえしがつかないことだと、後かいする場面だ。ごんが死ななければ、二人ともしあわせになれただろうと思う。

◇兵十は自分をせめた。ああ、おれはごんを悪いやつだとばかり思って、うってしまった。そう思って、兵十はきっと気を失ったように手をふるわせて、じゅうを落としてしまった。

◇兵十は、もう気がとおくなるほど、なんということをしてしまったんだと思った。ごんは、かわいそうにわるいことはしていないのに、うたれてしまってほんとうにかわいそう。もう、とりかえしのつかないことになってしまった。

◇あまりのショックにじゅうをおとし、なみだがこぼれそうに体中あつくなったと思う。兵十は、さけびたくなったと思う。

 

「青いけむりが、まだつつ口から細く出ていました。」

◇かなしい終わり方だなあと思う。火なわじゅうをうったときのあとのけむりが出ているのがかなしいと思う。細くでていたので、もっとかなしい。そういう気持ちがいっぱいつまっている一行だ。

◇ごんがやさしすぎたのかな。あんなにやさしくなければ、ごんの命は助かったのに。青いけむりは、ごんをみちびいて、ゆったりゆったりのぼっていく。ごんの心は、兵十の心へ、きっと思いが通じただろう。私の心にも私の子どもにもこの思いは通じていく。

◇兵十もごんも火なわじゅうもかなしいくるしい思いをしているんじゃないか。青いけむりは、死んでいくかなしさを表している。けむりが細いのは、兵十とごんの気持ちが細く小さくなって、そのうちに消えて、何もなくなってくるようにかなしくなっていく。この最後の文は、私自身が体験しているように、心に深く残った。

◇ここは、兵十が本当にもうとりかえしがつかないことだと後かいする気持ちが出ていると思う。ごんが生きていれば、今度こそ幸せになれたと思う。「まだ」というのは、ごんをうったときからだから、そのつらい気持ちを強めていると思う。「けむりが細く」というのは、ごんの命のような、さびしい、静かな感じがする。

◇「青い」は、なみだのように思う。けむりは、たましい。はかないごんの命。この一行がさびしさを強くしている。

◇青いけむりが…の青いっていうと、ごんのたましいが、すうっとぬけていくような気がする。バタリとじゅうを取り落とした兵十もきっとたましいがぬけたようになったと思う。兵十はぼうぜんとしていただろう。

 つつ口っていうのは、小さいごんのように細い。そして、ごんは、けむりといっしょに天国へのぼっていった気がする。けむりは、ごんのたましいのように消えていく。とってもかなしい。

 作者の気持ちや、茂平じいさんの気持ちになって、考えてみた。海は、きっと作者が、この話のさいごの一行を書くとき、なきながら書いたと思う。「青いけむり」っていうのは、ごんや兵十や作者や茂平さん、この本を読んだみんなのなみだの色だと思う。「細く」っていうのは、ごんや兵十のさみしさなのだろうな。

 海から、ごんへ手紙を書きます。

  ごん、/あなたは、とてもやさしかったね。/さいしょのところは/あんまり悪いいたずらをするので/なんてひどいやつだ、ごんは/って思っていた。/でも、ずっとごんの気持ちを読んできて/さいごの場面になったとき/兵十のねらいさだめた/火なわじゅうのたまが/海の心ぞうもつらぬいたような気がしたよ。/海はしばらくの間/口がこわばってうごかなかったよ。/ごん/こんどこそ、天国で/しあわせにくらしてね。

 

 

□六の場面(ごんの死・心の交流)での学習の展開は、2時間の扱いで、次のような読みの目あてをたてて行われています。

 

(1)そのあくる日も、……のごんの気持ちを想像する。

(2)ごんを見つけた兵十の行動と気持ちを読み取る。

(3)ごんを撃ったあとの兵十の行動と気持ちを読み取る。

(4)うなずいたごんの気持ちを想像する。

(5)最後の一文の持つ感じや効果を味わう。

そういった展開の中で、

・火なわじゅうをバタリと取り落とした兵十の気持ちを想像して書く。

・青いけむりが、まだつつ口から細く出ていました……から想像できること、この一文の効果を考えて書く

 

という背景から書かれたものです。