心と言葉を考えるシリーズ。わけあって最初のほうは数学のお話。
ゼノンという人が考えた「アキレスと亀のパラドックス」というものがあります。これは運動というものについての考察からでてきた「不思議な話」です。以下に概略を示します。
A君とB君が同じ直線上を競走する。A君は2m/sの速さで走る。B君は1m/sの速さで歩く。ただしB君はハンデキャップをもらってA君の1m先からスタートする。よーいドンで一斉スタートしたらこの後どうなる?
中学生なら連立方程式
x = 2t
x = t + 1
を解き、1秒後にA君がB君に追いつき、その後追い抜く、と回答することでしょう。
(↑これが理解できない方には今後辛い議論になってしまいますが・・・)
ここで「ちょっと待った!」と言ったのがゼノンさん。
スタートしてA君がB君のスタート地点に到達したとき(0.5秒後)、B君は少しだけ前(0.5m、A君のスタート地点から1.5m)に進んでいる。そこから再スタートしてA君がB君のいた地点に到達したとき(0.25秒後、トータルで0.75秒後)、B君はさらに少しだけ前(0.25m、A君のスタート地点から1.75m)に進んでいる。以下繰り返しで、A君が「B君のいた地点」に到達したとき、B君はほんの少しだけかもしれないけど前へ進んでいる。じゃあいつまで経ってもA君はB君に追いつくことができないんじゃないのか?
イメージだとこんな感じ。
A・・・・・・・・・・・・・・・B・・・・・・・・・・・・・・・・・ start
↓0.5秒
・・・・・・・・・・・・・・・・A・・・・・・・B・・・・・・・・ 0.5秒後
↓0.25秒
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・A・・・B・・・・ 0.75秒後
A~Bの間にある「・」の数はどんどん減っていくけれど、減るだけであってAとBの前後関係は変わらないのでは?
そう、この考え方だと「A君はB君に追いつくことができない」という結論になり、実際に実験してみるとA君がB君を1秒後に追いつくことと矛盾してしまうのです。これが「不思議な話」。
これに対して高校3年生なら、
A君が最初にB君のいた地点に到達するまでには0.5(=1/2)秒かかる。そこから次のB君の地点までは0.25(=1/4)秒かかる・・・
トータルの時間を無限の足し算で考えるなら
S = 1/2 + 1/4 + 1/8 + ・・・
であり、Sは1に収束することが証明されている(この証明はここではパスします)。よってやはりA君はB君に1秒後に追いつく。
無限回の足し算が有限の値になっちゃう場合があり、今回のケースもその場合に当てはまる、という論法です。一見すると正しそうな話ですが、ゼノンさんはこの論法に反駁することはできないのでしょうか?
~高校数学がわかる方へ~
A君がB君のいたの地点にたどり着き、次のB君の地点へたどり着く・・・というステップを繰り返しているワケです。
ここで各ステップにかかる時間は数列 {ak}を用いて
ak = 2^-k (k∈N)
という等比級数で表現できます。スタートしてからステップnまでに経過した時間のトータルSnは
Sn = ∑(k=1からnまで)ak
= ∑(k=1からnまで)2^-k
等比級数の和の公式を適用すれば
Sn = 1 - 2^-n
ここでn → ∞ のとき 2^-n → 0 なので
Sn = 1 (n → ∞)
となる。
本文の議論をある程度抽象化すると、こういう数学の言葉で書き表わせます。無限級数は有限の値に収束することがある、と。この「無限と有限のかけ橋」の部分に問題はないのでしょうか?
ゼノンという人が考えた「アキレスと亀のパラドックス」というものがあります。これは運動というものについての考察からでてきた「不思議な話」です。以下に概略を示します。
A君とB君が同じ直線上を競走する。A君は2m/sの速さで走る。B君は1m/sの速さで歩く。ただしB君はハンデキャップをもらってA君の1m先からスタートする。よーいドンで一斉スタートしたらこの後どうなる?
中学生なら連立方程式
x = 2t
x = t + 1
を解き、1秒後にA君がB君に追いつき、その後追い抜く、と回答することでしょう。
(↑これが理解できない方には今後辛い議論になってしまいますが・・・)
ここで「ちょっと待った!」と言ったのがゼノンさん。
スタートしてA君がB君のスタート地点に到達したとき(0.5秒後)、B君は少しだけ前(0.5m、A君のスタート地点から1.5m)に進んでいる。そこから再スタートしてA君がB君のいた地点に到達したとき(0.25秒後、トータルで0.75秒後)、B君はさらに少しだけ前(0.25m、A君のスタート地点から1.75m)に進んでいる。以下繰り返しで、A君が「B君のいた地点」に到達したとき、B君はほんの少しだけかもしれないけど前へ進んでいる。じゃあいつまで経ってもA君はB君に追いつくことができないんじゃないのか?
イメージだとこんな感じ。
A・・・・・・・・・・・・・・・B・・・・・・・・・・・・・・・・・ start
↓0.5秒
・・・・・・・・・・・・・・・・A・・・・・・・B・・・・・・・・ 0.5秒後
↓0.25秒
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・A・・・B・・・・ 0.75秒後
A~Bの間にある「・」の数はどんどん減っていくけれど、減るだけであってAとBの前後関係は変わらないのでは?
そう、この考え方だと「A君はB君に追いつくことができない」という結論になり、実際に実験してみるとA君がB君を1秒後に追いつくことと矛盾してしまうのです。これが「不思議な話」。
これに対して高校3年生なら、
A君が最初にB君のいた地点に到達するまでには0.5(=1/2)秒かかる。そこから次のB君の地点までは0.25(=1/4)秒かかる・・・
トータルの時間を無限の足し算で考えるなら
S = 1/2 + 1/4 + 1/8 + ・・・
であり、Sは1に収束することが証明されている(この証明はここではパスします)。よってやはりA君はB君に1秒後に追いつく。
無限回の足し算が有限の値になっちゃう場合があり、今回のケースもその場合に当てはまる、という論法です。一見すると正しそうな話ですが、ゼノンさんはこの論法に反駁することはできないのでしょうか?
~高校数学がわかる方へ~
A君がB君のいたの地点にたどり着き、次のB君の地点へたどり着く・・・というステップを繰り返しているワケです。
ここで各ステップにかかる時間は数列 {ak}を用いて
ak = 2^-k (k∈N)
という等比級数で表現できます。スタートしてからステップnまでに経過した時間のトータルSnは
Sn = ∑(k=1からnまで)ak
= ∑(k=1からnまで)2^-k
等比級数の和の公式を適用すれば
Sn = 1 - 2^-n
ここでn → ∞ のとき 2^-n → 0 なので
Sn = 1 (n → ∞)
となる。
本文の議論をある程度抽象化すると、こういう数学の言葉で書き表わせます。無限級数は有限の値に収束することがある、と。この「無限と有限のかけ橋」の部分に問題はないのでしょうか?