パーでんねん

というわけで、仮ビザがパーになったんですねん。

一瞬よぎったのが「また取りにいくの～～！」

営業課がイスラエルの客先に電話して、おいらのビザがパーに
なった事を伝えると、気の毒に思ったのか飛行機チケット代及び
ホテル代を支払うといってきた。

おいら的には「そりゃそうだろ、人の都合を勝手に変えてからに！」

だが、余計なことにおいらの部署の部長が
「そんなことさ、客先がしなくて良いんだよ！もうビザを取りに
　行けばいい事なんだからさ！客先に言っておけ。気にするなって。」
と営業課に言ってしまいましたとさ‥‥。

お前がいくんちゃうやろ！誰が行くとおもっとるねん！
おっさん、あのな、ビザ取りに行くだけでも大変なんやで。
地元から、電車乗って新幹線に乗り換えて。
朝早くいかな大使館の仕事は、はよー終わってまうから、
めっちゃ早起きせなならんし。

そもそも、おっさん、あんたイスラエルは行きたくないって自分で
いいなはったやんけ！
ヨーロッパは行くけど、中近東は行かない。イスラエルは
中近東だから行かないって確か、いっとたけどあんたな、いい事
教えてあげる！イスラエルは中近東だけど中近東ちゃうで！

周りにどれだけ敵がいると思っとりますの？
それに、サッカーでもイスラエルはヨーロッパに属してるの。
知ってましたか？
息子さんサッカーやってるでしょ。よーく聞いとき！

まードイツも‥。ちゃう、どいつもこいつもパーでんねん。

そして、出張の日が来た‥‥。

もしもの場合があるという事で、行きのチケットのみを持って
帰りのチケットは持たないようにさせられた。

もしもの場合というのは、ドイツの移民局へ行く時間がもしかしたら
あるかもしれない！

という、とっても浅はかな希望らしい。

そして、ドイツへ向かう飛行機へと乗った‥‥。

チラッ

風邪をひいたおいらとは別に独人はニコニコすがすがしい。
それがなお更ムカつくねん！

そう、あれは島への出張2日目の昼。客先と共に昼飯へ。
そよ風がとても、心地よい天気‥‥‥と独人がいっていた。
おいらにしてみれば、天気は良いがまだ少し肌寒い風邪いや風。

客に連れて行かれたのは海辺の地中海レストラン。
そして、この島国の人が好きな料理があると、客先の人がいった。
なんじゃ？

それを、客先がオーダーした。運ばれてきたのはイカの姿焼き。
日本の露店でよく売ってるやつ。
客先はそのイカ焼きを皆でシェアしながら食べる為に２つオーダー。

イカ焼きは綺麗に胴部が数箇所に切り分けられているのでナイフを
使わずにフォークで簡単に切り取れる。

と、その時一人のトンチンカン丸出しの独人がイカ焼きがのっている
皿を取り上げ、これは俺のだ！といわんがばかりに一人で一皿を
食い始めた。

客先とおいらの目が合う。考えてる事はどうやら同じだったらしい。
客先も「フ～ッ」とため息を漏らしたのをおいらは聞き逃さなかった。
おいらは呆れ返り、独人が独占したイカをフォークでブスッ！と
刺すと「これ、貰うからと」と勝手にひとかけらほど奪い取った。

独人は何するんだこいつ！って顔をしてたが、おまえがアホな
だけじゃ！
トンチンカンチン、トンチンカンチン、ファッ休さん

３日目、仕事も無事終わり、ようやくドイツへ帰ることに。
島からアテネ空港。アテネ空港に着くとまだドイツ出発まで時間が
あった。
ビジネスチケットの強み！ビジネスラウンジに入り暫しの休憩。

が！誰かが人の腕をチラッ、チラッと見ている。実際には覗き込んで
見ているといった方が良いのか。
そう、この独人だ。アテネ空港についてから妙にソワソワしている。
小さな子供がおしっこを我慢していると時と同じ、あの「ソワソワ」

そして、「今何時？」と独人が聞いてきた。
やつは、時間が気になっていたらしい。おいらの腕時計を覗き込んで
見ていたのだ！
大体１時間のうちに「今何時？」を15回ほど聞いてきた。
やつの「今何時?」の勢いは飛行機に乗っても止まらない！

飛行機に乗った。アテネからドイツまで4時間。時間は誰にも
変えられない。
飛行機が飛び立つ。「ポ～ンッ」とシートベルトが取り外せる音。
独人がおいらの腕時計をチラッと見る。そして、「今何時？」

このヒゲヅラ大男、さっきから何万回聞いとんねん！
おいらは「何でそんなに時間を気にするんだ？」といった。
ヒゲヅラは「早く家に帰りたいんだよ～。」

呆れさせるにも限度がある！
おいらは「いいか！よ～く、耳垢ほってから聞けよ！今お前は
飛行機の中。ここは車の中でもアウトバーンでもない！自分で
運転してるわけじゃない。ショートカットもない！空の上だ。
4時間フライトといったら4時間！分かったか！」と言い放った。

近くでおいら達のやり取りを見ていた数人の人達はうなづいていた。

ドイツへ到着。パスポートコントロールを簡単にぬけたおいら。
しかし、なぜかヒゲヅラはパスポートコントロールで色々と
聞かれている。独人なのに‥‥。

到着ゲートをぬける。ようやく開放される。
ヒゲヅラに「じゃー」とだけ言い残し、帰宅する前に空港内トイレへ
向かった。
とその時、誰かが大声で「パパ～」と言った。
このヒゲヅラ大男が携帯で電話していた。

おいらはあきれ果て首を横にふっていた‥‥。

さみー

Yシャツと黄色のブーメラン海パン男。

ベンチが海に置いてあった。
奴はそこに寝そべるといきなりイビキをかきはじめた。

寝てやがるじゃねーか！

その日、天気は良くても結構肌寒い日だった。
おいらは、既に帰りたいモードに突入！さみーし！
この寝ているのん気な独人を置いていこうかなとマジで思った。

奴を起こそうと、奴を見た瞬間‥‥。目が開いている！
一瞬、起きているのかなと思ったが明らかにイビキをかいている。
ドッキリであってほしかった。カメラは何処？いるんでしょ？
いねー、やっぱ、いねーよ！

その夜の事。
夕飯はホテルのレストランで。この独人と一緒に1日を過ごした結果、
飯もあまり喉を通らなかった。だから、海老のカクテルのみ。
ひじょーに気疲れ。

奴はスターター、メインをオーダー。もちろんデザートも。
しかし、スターターを少し食べただけで残し、メインもほんの
少しだけ食べ、ほぼ残した。
理由は、早くデザートが食べたいから。

だそうです。デザートだけでええんやないんかい！！！

部屋に戻る。奴と一緒というのがよけい腹が立ったが。
おいらは、直ぐにシャワーを浴びた。
独人に、「シャワー使えるよ。」と言うと、奴は「髪が抜けるから
入らない。」と言い出した。

ギルガメッシュ！アブラギッシュ！

終身時間‥‥いや、就寝時間。
夜はやはり冷え込んだ。が！この毒人、ちゃう、独人いや
もうええ毒人は窓を全開に開き、ちょーデカのイビキと
ともに、寝やがった！

おいらは窓を閉め、ティッシュを耳栓代わりにして寝た。

次の日、もの凄い寒さと喉の痛みで目覚めた。
閉めていた、窓がなぜか全開に開いていた。

独人の眼が覚め、奴はおいらに
「何で、閉めたんだよ～。暑くて眠れなかったじゃないか！」

バカヤロ～～～、こっちゃめっちゃ寒かったねん！

奴のおかげで、くしゃみ大さじ三杯、喉の痛み大さじ5杯
頭痛小さじ２杯半。見事な風邪の出来上がり。
ドアホ！

ブーメラン

ギリシャへドイツ人と出張。

駐在員時代、出張の時はビジネスクラスを使っていた。
理由がある。日にちが決まっているとはいえ、やはり
何があるか分からない。

仕事が上手くいかない場合はドイツには戻れない。
客先の国に仕事が終るまで滞在しなければならない。

そうなると、格安チケットだと日にち変更不可能なので
チケット再購入
一回だけの変更可能チケットだと、いざ帰るか！と思った時に
かぎって、問題が生じる。オープンチケットは意外と高い。

ビジネスチケットの場合、多少値が張るが変更自由だし
どの時間帯でも優遇される。

そしてドイツ人がこのチケットで気分が舞い上がる。
「ビジネスだよ！ほらみて、ビジネスクラスだよ！」
やかましっ！わかっとるっちゅうねん！仕事せーや！

奴は窓側、おいらは通路側の席。飛行機がアテネに向かい
飛び立った。

出張は毎回朝早いフライトの為、なるべく飛行機の中では睡眠を
とり、仕事に備えるのがおいらの癖だった。
おいらは眠りにつく。丁度良いウトウト感。

「バタンッ、ゴンッ」
その音で目が覚めた。隣の席で、あほドイツ人が窓の日よけを
開いたり閉めたり遊んでいる。

その光景は、まるで子供。日よけを開ける、外を見る。そして
また閉める。その繰り返し。4時間のフライト中、4時間繰り返す。

独人38歳、鼻の下に髭。脂性のこの男。かわいくねー。

飛行機がアテネに降り立つ。そして、乗客拍手喝采！
これこそオリンピックエアーの醍醐味。
それを知るはずもない、このあほ独人、「へ～んなの！」だって。
ギリシャ人が変なんじゃない、この飛行機に乗って4時間も
日よけを開け閉めして、日本人の隣に座っている、あほ独人が
おかしいんじゃ！おまえのことや！

アテネから国内飛行線に乗り換え、島へ行った。
島へつくと、客先が迎えに来ていた。客先工場へ行き、ある程度
その日の仕事が終了。ホテルへ行く。
客先手配のホテル、なんと困った事が、このあほ独人と同じ部屋。
部屋がなく、どうしても同室になってしまったという事だった。

ホテル周辺は海。とても綺麗だった。オーシャンブルーとは
このことだろうなと、ふと思ってしまった。
おいら一人だけだったら、この景色はとても感動的だったのだが。

一人舞い上がっているこの独人。ビーチに行こうと言い出した。
男二人で、海辺を歩く。うーっ、胸焼けするわ！

何を思ったか奴はズボンを脱ぎだす。ズボンの下には海パン。
すでに装着ずみ。

懐かしいCMのようだ。
君の瞳はピカピカに光って～、あふれかえるほど素敵！

奴の場合は
君のおでこはピカピカに光って～あふれかえるほど不気味！

上着はなぜか脱がなかった。Tシャツならまだ
許せるが、奴は白いYシャツ。

部屋とYシャツと私ならぬ、独人の、髭とYシャツと海パン。
ヒゲとYシャツと海パン、愛する私の為…
お前の為か！

でも、おいらが驚いたのはYシャツに海パンじゃーない。
海パンの色が黄色。それもブーメランだ。ひっひっ秀樹～～～～！
そう叫びたくなった。

おいらの頭の中は、あの歌が流れた。
「ブ～メラン、ブ～メラン。ブ～メラン、ブ～メラン。きっと
　あなたは戻ってくるだろー………。」

いやや～～～～！おまえ絶対戻ってくるなや～！

予想

グッチ男に言いたい事をぶちまけたおいら。
まっ、駐在員になっていたという事は、クビになっては
いなかったという事なんやけど。

ミーティングの結果、全てグッチ男が責任を持つ事になった。
スタートアップは自分自身がやると、自信ありげにやつは
言っていた。

仕事も終わり、ホテルに帰ろうと、客先手配の車に乗ろうと
した瞬間、客先工場長のアシスタントさんが、今晩はおいらの
滞在しているホテルで、食事会をしたいといってきた。

おいらの返事は、もちろんOK。夜7時半にロビーで待ち合わせ。
アシスタント、工場長、従業員数名。
ホテル内にあるレストランで、夕飯！次の日は帰国なので
そんな時まで二日酔いには、なりたくない。そう思ったおいらは
酒なんて飲んでる場合じゃーない。食う。とにかく、食おう！
　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　しかし

中華は本当に苦手なおいら。胃が痛くなるねんな。
滞在期間中、ホテルにレストランがあるのは知っていたが
胃痛との戦いを避けたかった。だから、これが最初で最後の
レストランだった。

皆が集まり、レストランへ行く。話題はやっぱり、おいらの
怒りの制裁！彼らは嬉しく、サイコーだったらしい。
彼らは盛り上がる。そうなると、出てくるのはおきまりの紹興酒。
二日酔いになりにくい酒だが、飲まへんぞ！２杯だけ飲んだ。

いよいよ、料理が運ばれてきた。丸テーブルにドッドッド！と
テンコ盛り。魚やら肉やら普通の中華。

がっ！ビックリしたのは隣りのテーブル。そのパーティーは
子豚の丸焼きをオーダーしたらしく。豚がテーブルの上に。
こんなん始めてみたわ～～！

と、思った矢先、今度はうちのテーブル。上海蟹と北京ダックが
運ばれてきた。これもまた初めて。初めてだけに、食が進んだ。

上海だけに北京ダックというのかは、わからへんかったけど
めっちゃ、うまいんですわ！お～いし～～～これー！
蟹もちゃんと味が染み込んでいて、甘辛ダレ！こいつに決めた！
夜も更け、宴会も終了。

次の日、ホテル代を支払おうとチェックアウト。カードを
財布から取り出そうとすると、もう支払われている言われた。
客先が支払ってくれた。感謝。

客先手配の車で、空港。そして、無事帰国。そして、ふと思った。
あ～、カレー食いたいわ！

数ヵ月後、グッチ男からヘルプの電話。やつは完璧お手上げ、
製品にもならなかったそうな。

その時おいらは既にニュージーランドへ出張中。
結局、他の人が中国へ行った。

そもそも、そうなる事は予想はついていけどね！