蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

チェスターの想い出  (bon)

2023-03-09 | 日々雑感、散策、旅行

            昨日3/8は、国連が定めた「国際婦人デー」でした。この季節、黄色いミモザの花の盛りで、
     イタリアでは「ミモザの日」として、このミモザの花を贈る習慣があるそうです。
             今日、いよいよWBCですね。楽しみです。

 

 中世の面影を残すイギリスの城郭都市「チェスター」は、ロンドンから車でM1
-M6経由で約4時間弱のところにあります。(東京から名古屋くらいのところ) 
 西暦79年頃、ローマ人がウェールズとの戦争に備えて要塞を建設し定住した
ことにはじまるこの都市は、400年頃には、その城壁を拡張し要塞都市を形成
したのだそうです。そのメインストリートは、15世紀から17世紀初頭に建て
られたチューダー様式と呼ばれる建物で、白と黒で縁取りされた窓や様々な模様
の美しい装飾、鋭く尖った屋根の建物が並び、二階が全てバルコニーとなって隣
同士が繋がって回廊状の歩道「ザ・ロウズ」となっているのです。
 チェスターの街          チェスター大聖堂
     
           (共にウイキペディアより)

         イーストゲート時計塔
         (tripnoteより)

        ザ・ロウズ  
        (tripnoteより)

 この街に、私は 今から46年前の1977年に訪れましたが、その印象は強く残って
いて、今でも鮮明に覚えています。 50年近くも経って、今この街を思い描いたの
は、この街に連れて行って下さった会社の先輩I氏が、
この2月に93歳で他界された
との報を受けたからです。

 I氏は、私より10歳も先輩のかたで、当時ロンドンに会社の支社を開設するため
に奥様と共に赴任されていて、おひとりで開設準備から日本からの訪問者のアレンジ
など忙しく奮闘されていました。 I氏は、恰幅の良い長身でスラリとした紳士で、
言葉使いなども丁寧で、それこそ「英国紳士」でした。技術分野の方で、私とは
主従関係になったことはなかったのですが、仕事の関係で面識はあり、10年も先輩
であるのに優しく接していただいていました。

 この年、私は技術部門のトップであったM氏(故人)の名代として、ミュンヘン
で新しい開発システムを発表するという名誉ある機会を得て、日本からロンドン
経由でミュンヘンに入る計画を立て、初めてのヨーロッパはロンドンからだった
のです。

 ロンドンのヒースロー空港には、朝6時ころの着でしたが、忙しいI氏は、空港で
私を出迎えてくださったのです。I氏の車で市内のホテルに案内され、そこが滞在中
の私の居場所となったのです。 ホテルに到着するやI氏から思いもかけない指示
が与えられたのです。

「今日9時ころの到着便で、日本から政府関係者3名が来られるので、すまないが
空港に出迎えをしてくれないか。私は、他の用があって手が回らないので。」
「客人の到着に間にあうよう、タクシーをこのホテルに来るようにしてあるから
・・。」 えッ、今初めてのロンドンに着いたばかりなのに、その空港に今度は
客人を出迎える命を受けたのでした。厳しいご指導!

 果たして、ホテルの部屋に電話がかかり、運転手から「指定の便は到着が1時間
ほど遅れている、どうするか?」 えッ、そんなことを言われても・・と驚きと
困惑が同時に脳裏を占有し、とっさに、「便の遅れはどのようにして確認したのか?」
と真偽をたしかめて、遅れに合わせた時刻に再度ピックアップするよう伝えたの
です。

 部屋で寛ぐどころか、あれこれ空回りの思いをめぐらしているうち、再度運転手
から電話が入りヒースロー空港に向かったのです。 無事お客人をお迎えしてホ
テルまで案内し、お役目を果たし終えたのでした。
 英国紳士バリの先輩はなんて人使いの荒い方なのかとも一瞬よぎりましたが、
お一人で切り盛りされている大変さを垣間見たのでした。

            

 先輩の家にお招きに預かり奥様の手づからの夕食をごちそうになったのです。
お宅に着くと「靴のまま入ってください」といわれ、外国の家であると再認識した
のでした。 I氏からは、突然の客人出迎えの労をねぎらってくださったばかりか、
始終優しいもてなしをいただき、次の日曜日に家内と一緒にちょっと遠出をして
「チェスター」まで行ってみよう。そんなお誘いを受けたのが、このチェスター
の想い出につながるのです。

 チェスターの古いしかし美しい街を奥様と3人で見学し、帰路の途中では豪族の
とてつもなく広い邸宅跡タットンパークやバラ園などに立ち寄り、素晴らしい想い
出を作ってくださったのです。
 ロンドンでは、全く観光で過ごしました。この遠出の他、市内は一人で大英博
物館やビッグベンなどを見て回り、用もないのに2階建てバスに乗ってみたり楽しい
数日でした。

 今にして思えば、この海外出張は、M氏の名代として、ミュンヘンでの発表が主
たる目的で、M氏は私が入社後間もない頃の職場のトップの座の方で、I氏よりも3
つ上で、ひょっとして、M氏から電話が一本入っていたのかもしれないなと思われ
るのでした。

            

 このことのほかにも、多くのよき先輩・上司に温かく見守られた会社人生に改
めて尽きぬ感謝に満たされるのです。

     自筆ペン画をアマチュア無線交信証にしました。
        

 

 

ロンドンデリーの歌(イヴリー・ギトリス)

 

 

 

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