普段はほとんど関心すらない大学ですが、少し前あたりから新聞などの情報が通り
過ぎる時、そういえば昔とはだいぶ変わっているな! と感じることがあります。
もちろん教育内容など、大学そのものの中身ではなく、流れというかトレンドみたいな
外回りの変化なんですが、一般の大学ももちろんですが、女子大学についても大きく
様変わりして来ていると思われるのです。
そんな感じから、キチっとしたデータ分析などではなく感覚的な印象を列記してみました。
日本における大学は、明治10年(1877年)創立の東京帝国大学(東京大学)以降明治
30年には京都帝国大学が創立され、その後日本の各地に国立大学が設置されるほか、
明治初期には、これらの官立学校の他、私塾の伝統から生まれた福沢諭吉の慶應義塾や
新島襄の同志社、法律に特化した専門分野に、専修学校、明治法律学校、イギリス法律
学校他が次々と登場しましたが、大正8年(1919年)施行の大学令により、一斉にそれ
ぞれ「大学」として認定されたのでした。 専修学校は専修大学に、明治法律学校は明治
大学、イギリス法律学校は中央大学さらには、法政、日大、早稲田、同志社など全22校が
認可されています。
現在日本に大学はいくつあるか? については次のグラフにありますように、この
50年間で大学数、学生数とも約2倍に増加しているのですね。
大学の数、学生数の推移(1971年~2021年)
(教育業界ニュースより)
最近のデータによれば、2024年で、大学数は813校(国立86、公立103、私立624)と
あります。また、学生数については、下記のグラフのように、18才人口は、1992年の
205万人をピークに、急激に減少傾向にあるものの、進学率が上昇しているため2017 年
まで増加し、63万人をピークにその後減少傾向になると予測されています。
学生数の推移 (1980年~2040年)
(文科省より)
さらに、今年(2025年)1月時点では、18歳人口は109万人にまで減少し2040年には
74万人になると推定されています。昨年(24年)63万人だった大学進学者は40年には
46万人まで減ると推計されています。昨年の大学数813校のままだとすれば、定員の3割
近くが埋まらなくなる計算となります。
文科省の中央教育審議会(中教審)の大学のあり方答申(2025.2.21)では、大学の
統廃合や定員削減を進める必要があるとしています。日本私立学校振興事業団の報告では、
24年度の募集人員に入学者数が届かなかった(定員割れ)私立大の割合は過去最悪の
59%に達したとあります。 大学や短大を運営する学校法人の2割が経営困難に陥ると
見られ、具体的な方策をこの夏ごろまでに策定するとあります。(文科省)
学生募集に苦しむ私立大が地元自治体に公立化を要請する事例が起こっているという。
学生の減少はすなわち支援金支給の額の減少につながり、自治体からの援助を求めている
わけですが、自治体側からすれば、大学の存続で若者の流出や地域経済の衰退を食い
止められるとの期待がある。また、公立化以外の道を模索する動きもある。例えば、
市や県、企業と連携した人材育成を目指すといった形で・・。
このような状況は、女子大についてもより深刻のようです。1875年にはお茶の水東京
女子師範学校が開校し、私立では、1901年の日本女子大学があります。その後の女子大は、
人文、家政系が中心で開校されて来た傾向にありますが、女性のキャリアの選択肢が
広がるにつれ、女子大の存在感が薄れる傾向となってきているようです。また、共学
志望の高まりに加えて総合大学に「女子枠」を設置して取り込みを図る大学にも押され
気味となり、逆に女子大の看板を下ろして男子を呼び込んだり、理系学部を新設して
生き残りを図る動きが加速しているという。
女子大数の推移(1948年~2023年)
(安東由則教授論文より)
昨年度(2024年)の女子大数は71校で、1998年度の98校から男女共学への転換で2割
減となっている。今年も5校が男子を受け入れるそうです。
一方、女子の大学進学率が上昇し、男女共学の総合大学に目を広げる女子が増え、
総合大学にも「女子枠」を設けて女子の割合が増えているそうです。早稲田では、90年代
初め女子の割合が2割程度であったのが現在は4割にまで拡大しており、東大でも女子が
増えているそうです。
これまでの女子大は、社会の要請を受けて理系学部の新設や、デジタル、環境などの
学部を新設して女子学生を呼び込もうとしています。 '22年には奈良女子大に、‘24年
にはお茶の水女子大に工学部が設置されています。この傾向は、今年安田女子大は理工
学部、大妻女子大はデータサイエンス学部、来年には昭和女子大に総合情報学部を計画
するなど他の女子大も建築デザイン学部など目白押しです。
以上見てきましたように、今大学は苦境にあり、今後を見通せば大学の適正数の見直し
や学部の編成見直しなど必然の感じもします。また、これら少子化の影響は比較的小さい
と思われる国立大学も、2004年の国立大学法人化以降、支援予算額が減少され、より
自立の道が求められてきましたが、その経営においては、外部資金の調達や企業との
共同研究等においても、時代の流れに沿う研究などは効果的であるかもしれないが、
基礎研究等すぐには事業化に向かない研究は将来的に重要であっても取り組み難い実態
があるのですね。
一方では、通信制のマンモス大学「ZEN大学」が、今春開学しています。入学定員は
3500人に上るとあります。学校法人「日本財団ドワンゴ学園」が運営するすべてオン
ライン(インターネット)で単位取得できるのだそうです。授業料は年38万円で国立大
標準額約54万円より3割安く「経済的な理由や地域的な理由で、『学びたいのに学べない』
学生を受け入れたい」としています。
通信制は、1947年に学校教育法によって制度化されて、法政大、慶応大など6校が
開校していますが、現在では50校に及ぶそうです。当初は、郵送テキスト形式が主流
だった通信制も、その後テレビによる放送大学へ、現在はインターネットによりオン
ライン授業だけで卒業が出来るのだそうです。
通信制といえば、学生は働きながら学ぶ社会人が主体だったけれども、ZEN大学への
出願者はその64%が高校3年の「現役生」だそうです。
数年前に、コロナ禍で、オンライン形式が見直されたこともあり、今やオンラインは
定着しているかに見えますが、果たして大学をオンラインだけで卒業して、人格形成や
人間コミュニケーションなどリアル学生生活で得られる部分は欠落してしまうのでは
ないかと懸念されるところではあります。
以上、極めて上滑りの感が否めませんが、この50年を見ても大学周りの状況は大きく
変化してきていることが分かりました。時代が進むにつれて物事には「効率化」が求め
られますが、本当にこれだけが重要であるのかどうか、疑問に思えるところが多くある
のです。古い体質が抜け切れていないのかもしれませんが。
私らの頃の大学の授業料は、年9000円でしたね。それを半期ごとに納める式でした。
もっとも、新卒の初任給も2万円弱が相場でしたから・・時代の比較にはなりえませんが・・。
嗚呼玉杯に花うけて