帰省
父母も逝きたまさか思う古里は手招き続け人を待ちおり
育ちいし生家に向かう細道に雑草あふれ行く手を阻む
寸毫の流れに道も消え果てる時の重さと残酷教え
父母作り麦芋植えし山畑は森に変わりて時の狼藉
イノシシもマムシも多し森の中我が耕せし残滓も留めず
学齢に満たずに手には鍬や鎌骨身のつらさ思い出のうち
一炊の夢にもしかずちちははの開けき畑元に還りて
空の下山の高みに段々と芋麦植えし頃もありやと
時代とはかくも変わりし一代の事実もおぼろ消え去るばかり
古里はただただよわい重ね着て時の跋扈に捉われたまま