記者兼カメラマンのTさんの最近のお気に入りは
武田花の「仏壇におはぎ」という本だ。
わたしが友人から誕生日に貰ったもの。
ご来店の際にはいつもこの本を本棚から引っ張り出して読んでいる。
ところで花さんは木村伊兵衛賞(写真の直木賞といわれている)を受賞している。
Tさんと、この賞を受賞した歴代の写真家のことなんかをポツリポツリと話す。
「いい写真を撮る人はいい文章を書く。」
花さんのエッセイには変な人がいっぱい出てくる。
書きようによっては悲惨な風景が
花さんが書くと、どこかに可笑しみを帯びたぬくもりのある風景に変わるのだ。
ひとしきりそんな話をしたあとで、急にTさんは窓の外を見る。
グランドで高校生たちが部活をしている。
「若いって・・・いいよね」
Tさんは静かにつぶやく。
「若いって、それだけで、いいよね」
「そうですね。・・・若いっていいですよね。」
若くないふたりは
何度も同じ言葉を繰り返す。