Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2010年7-10月号 オピニオン: 難民であること、その心と人生のありよう

2011年01月02日 | オピニオン

難民であることは、楽なことではない。人生のありようにも心の平安という側面にも強い衝撃を与える。 

最初の衝撃は、心理的なところに出る。誰しも自国の国境を越える瞬間、行が自然に変化しはじめる。人が新しい文化と習慣に対応しはじめるからで、これは人間の行動が変化するときに必ず見られる大事な機能である。新しい文化は、すべての難民の心に大きな影響を及ぼす。時が経つと、この新しい影響が優位を占め、新しい文化の流儀と難民のライフスタイルがバランスを取るようになる。 

こうした事実はさておき、元の人格と後から獲得した人格は体系的に異なる。ほぼすべての難民は行動の変化が影響して、程度の差こそあれ、精神的ストレスを抱えることになる。難民の中に頭がおかしくなったり完全に気が狂ったりする人が多々いのは、こういう理由があってのことなのだ。 

たとえば、鬱は難民に起きる精神障害の基本的要因のひとつだ。もう一つの大きな要因が不安。これらのふたつの要因は世界中のあらゆる難民が皆抱えている。こうした状態は難民が第三国に再定住してからも続くことがある。

 リビア、エジプト、イエメンといった国々では、難民は人間と見なされない。最近では、こういう人権侵害が、イタリア、イスラエルなどの先進諸国でも見られるようになってきた。エリトリア難民に対してイタリア政府がとった対応は、こうした実態を明白に語る客観的証拠として最適な例だ。他方、エチオピアのファラシャ人はイスラエルの市民として勘定に入れられていない。彼らは、元々のイスラエルの人々から明らかな差別を受けている。エチオピアのファラシャ人をイスラエルの血まみれの川岸から引き離そうとしていることは、イスラエルでエチオピアのファラシャ人に対し具体的な差別があることの証拠だ。世界的規模で難民が破滅していくのには、こうした差別が難民の心理面に大きく影響しているからだ。 

これらの話から、我々難民はどこに住んでいようとも、亡命先の国や個人的要因で、程度の差こそあれ、皆一様にストレスを抱えていることがわかる。 

カクマキャンプは、私が祖国(エチオピア)から逃げ出したあと、生活してきたところだが、ストレスの源と言ってもいい場所だ。特にUNHCR のレセプションセンターでストレスがひどくなる。最悪なのは、食料を受け取るために長い時間待っているときに、ミルクが不足して小さな赤ん坊が泣いている声を聞くときだ。あなたは自由で、こういう問題は抱えていないと思っているかもしれないが、いつ本当のストレスを感じるようになるかわからない。それはそれとして、酔っぱらった人がいかに他人に迷惑をかけるかは、想像できるだろう。また、難民のなかに、ちょっと話し合えば解決できるような些細でつまらないことのために争っている人がいるのも、想像できるだろう。 

誰かが、ぐっすり眠っている同居人を石で打ち殺したとか、あるいは別の男が、最愛の妻で子どもたちの母親である女性をナイフで切りつけたなどと聞いたら、あなたは間違いなく心に衝撃を受け、ストレスとトラウマにさいなまれるだろう。こういう状況が続けば鬱になり、最終的には精神障害をきたす。 

場合によっては、小さな子どもさえストレスを抱えているのが見受けられるが、それは大人のように永続するものではない。子どもたちのストレスの主な原因は両親そのものや親の行動から生じる。子どもを良く育てるための、ある大事な面が両親に不足しているのだ。また学校教師が子どものストレスの原因になることもある。学校環境が子どもに危険ということさえある。 

子どもたちが両親の喧嘩を見れば、必ず精神的ストレスを経験する。このストレスは長くは留まらない。仲間と遊び始めるなどして、ある時間が経てば普通はそれを忘れてしまう。しかし、一見、忘れたように見えても、そのいうストレスは成長過程で最も危険な要因になる。 

子どもたちにストレスが起きるもう一つの形は、両親が不倫をしているのを見てしまった偶発的なケースだ。彼らは精神的ストレスを抱え、この場合は簡単に忘れられないこともある。この事実をはっきりさせるため、カクマ3のダルフール・コミュニティーで起きた具体的な問題を取り上げる。補足的証拠になり得るケースなのだが、ダルフールの女性が夫のベッドで別の男性と不倫をしている現場を夫によって取り押さえられた。女性が不倫をしていたとき、娘が自宅にいて何が起きているか気づいたのだ。しかし当の男女は、娘はまだ小さいから事の真相は理解できないだろうと思っていた。だが不幸にも少女は自分の母親が罪を犯しているとわかり、家を飛び出し、この恥ずべき罪の話を父親にしたのだ。

 話を聞くやいなや、夫は刀(パンガ)を持って自分の家に戻った。家の戸を開けたとき、ふたりは情事の真っ最中だった。侵入者は裸のまま何とか逃げられたが、女性は見つかり、刀でめった切りにされた。女性は重傷を負い病院に担ぎ込まれ、このニュースは全コミュニティーに、そして周りのブロックに、またたく間に広がることになった。

 




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