月は東に

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『中村勘九郎改め十八代目中村勘三郎襲名披露第四十一回吉例顔見世』@御園座・10/11昼の部

2005-10-17 00:17:01 | 歌舞伎Review
ここ最近の金欠の原因の一端を担う(笑)歌舞伎を観てきました。

せっかくの勘三郎さんの襲名披露なのでいい席で観たいと思い、今年の1月に友人にチケットを確保してもらいました。
それでも、2階の下手側前から三列目の1等席20,000円也。22,000円の特別席は165席、全席の十分の一で、株主及び大得意様及び関係者の方々で占められてますね
2階といっても、花道は真下だし、遠すぎない距離で舞台全体を俯瞰できるし、同じ値段の1階の後方より、はるかに観易かったです。

私は8倍のオペラグラスを持っていきましたが、母のはごく普通の3倍のやつ。いい台詞のときに「貸して」と言ってくるのは、絶対にやめていただきたいんですが、お母様

↑ポスターをクリックして、出てきたポスターの右下の“拡大表示”をクリックすると字も読める大きさになって、演目と配役がわかります。


1.お国と五平
谷崎潤一郎原作の戯曲です。
男して頼りない婚約者を見捨てた女性お国。
その婚約者に夫を殺され、中間の五平をお供に仇討ちの旅に出る。
3年も男女が一緒にいれば、何が起こるかは明々白々、おまけに2人が追っているはずの仇の友之丞が、実は2人をずっと付けていて……。
今風に言えば、不倫&ストーカーが繰り広げる三つ巴のどろどろ昼ドラ(舞台はすすきが風に揺れる暮れゆく野原なんだけど)

動きが少なく登場人物は3人だけなので、ちょっと寝そうになったこともありましたが(汗)話が進むにつれ、やばい話がネタばれしていく過程は、あらすじを知っていても面白かったです。でも、3人だけで大げさな振りもなく場面が全く変わらない状態で、1時間近く演じるのって難しいだろうなー。

母があまり役者を知らないので、説明が大変。
「これ誰だっけ?」
「前は八十助。近藤サトと別れたひと」
「こっちは?」
「三田寛子の旦那」
「女方のひとは?」
「えーと、扇千景の息子で、中村玉緒の甥」
だから、上演中に話しかけんといて


2.口上
歌舞伎座での涙涙の口上に比べるとすっかり落ち着いたようです。
おふざけとか茶化しも少なくかなり真面目な口上でした。
「兄さん(勘三郎)には色々教えていただきました。夜の方も」とか「教わったことをここで全てご披露するわけにはまいりません」とか、お茶目もありましたが…。
七之助君は不祥事のこともあって、超優等生口上。歌舞伎座ではしばらく出れなかったことを思うと、名古屋で親子3人揃っての襲名口上を観られたのは、嬉しい限りです。

ここでもやっぱり母に説明。
「勘九郎の隣は?」(勘三郎だっちゅーに)
「芝翫さん。勘太郎君と七之助君の母方のじーちゃん」
「さっき出てたひといる?」(いるに決まってるだろう)
「芝翫さんの隣に三津五郎さんいるでしょ。あと七之助君の隣に橋之助さん」
「あの端っこは?」
「仁左衛門さん」
「誰?」
「…片岡孝夫」
「ああ!」
だから、口上は聞かないと話にならないから話しかけんといて

ちなみに、『組!!』で榎本武揚役の愛之助さんは仁左衛門さんの甥に当たります。愛之助さんは仁左衛門さんの兄の養子なので、血はつながってませんが……イイ男という点では似てますね
手持ちの10年前に刊行の歌舞伎本に彼の写真が載っていて、端正な顔の作りは変わらないけど、今の方が断然いいです!……愛称“ラブリン”だけど(笑/歌舞伎ファンの方はご存知でしょうが)


3.連獅子 
通常は親子2人の親獅子と子獅子だけど、中村屋では親子3人。
お見事!「なかむらやぁっっ!」て感じです
板を踏む足音は3人とも全くずれがなく、バンバンと鳴る板の気持ちいいこと。(舞台の上にさらに板を置くので、板と舞台の床の空間によって音がよく響きます)
息が合うのは血縁だからというのもあるけれど、練習も沢山してるんだろうなあ。
50歳の勘三郎さんが22、3歳の息子達と一緒に舞い踊っても、若々しいというか元気というか一番リズム感がいいんじゃないでしょうか。勘太郎君も七之助君もお父さんに追いつけ追い越せ!!
内容はいわゆる“獅子千尋の谷”。
親獅子が子獅子を谷へ突き落として這い上がってくるのを見守るという、実の親子にとっては心の入れ方もひとき違うかも。厳しい芸の世界は“千尋の谷”を地でいってますもんね。
見せ場は、最後の“毛振り”。長い獅子の毛をぐるぐる回すあれです。
これがすごかったー。3人ともほぼ動きを合わせてぐるぐるしてましたが、勘太郎君の気合の入り方がハンパじゃなかった。“力強さ”という点ではお父さんを越えていたんでは?と思うほど。
観客からもどよめきが起こるくらいの“狂い”っぷりは見事でした。
もちろん大拍手に大喝采

『連獅子』は舞台も衣装も華やかで鮮やかで綺麗。
能舞台を模した緑の松羽目の舞台に、淡黄色と黒の揃いの衣装の長唄お囃子連中に、赤と白の牡丹の花。親獅子は白い毛に黒×金の衣装。子獅子は赤い毛に緑×金の衣装。
舞台全体が着物の帯柄のようでした。
 
間にミニ狂言が入ります。
宗派の違う僧侶が、旅の道中一緒になってしまって「宗派の違う人との道中はいやだ」とごねてお互いにゆずらない。一方は太鼓を叩いて「南妙法蓮華経」、一方は鐘(実家の念仏講のと同じかな?)を叩いて「南無阿弥陀仏」でプチ宗教戦争勃発。
太鼓と鐘のリズムに乗って、交互に唱えているうちにいつのまにか唱えている文句が入れ替わってしまってお互いの相手の念仏に……。最後に「ありゃあ?」と笑いが入っておしまい。   
超短い小芝居ながらも、面白かったです。
日本のお手軽で適当な宗教観を垣間見たような気がしますねこれ、一神教だったらとっくに刃傷沙汰


4.河内山 
いわゆる“生臭坊主”が大名屋敷に乗り込んでだまくらかして大金せしめるという、知る人ぞ知る、河内山宗俊のお話。
大金をせしめて帰るときに「ば~か~め~」と高笑いをされると、悪いことしてるのにこっちも「してやったり!」。金持ちから金取るって気持ちいいと思うのは、つくづく自分て庶民だわー。でももともと歌舞伎って庶民向けのお芝居だから、こういう感想は間違っちゃいないでしょう。
仁左衛門さんがすーてーきー素顔は端正で柔和な顔したナイスミドルがダーティーヒーローって、どないやねん?でしたが、とーんでもなくカッコよかったです。
河内山宗俊て美形キャラではなかったはずなんだけど、仁左衛門さんがやるとまさに「色悪」(美形のダークヒーロー)
 
大名に礼金をほのめかすシーンで「山吹色のお茶を一服所望する」って言うんですよ。
……粋だねぇ。観客からはちょっと笑いが起こります

この演目では、七之助君が女形です。
普段のヤンチャそうな風貌からは想像できない、可憐でかわいらしい腰元でした。



昼の11時から、休憩3回入って16時ごろ終了。堪能しました~
22日は夜の部、御園座では51年振りの通し狂言『白浪五人男』を観ます。
2週間ほど前に友人から「夜まだ取れるかも」と言われて、15日か22日で頼んだら、幸か不幸か株主さんの席(笑/22,000円だからね)でキャンセルが出たので取ってもらいました。
それが一番前のど真ん中のスペシャルジェイミー席(違) 
ね、寝れない。絶対寝れない(『白浪~』だから大丈夫だと思うけど)
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