月は東に

Get Out Of That Rut & Savor Life

『クラウディアからの手紙』@愛知厚生年金会館・2/21ソワレ(追記あり) 1F-P-21

2006-02-23 03:10:56 | Stage Review
オットには「10時ごろには帰れると思う」と言ってあったけど、公演が終わったのが9時半事前に全然時間を調べておりませんでした。「今から帰る」ってTELしたらなんかオットの機嫌が悪いんでやんの。

18:30~19:40 休憩15分 19:55~21:30

といつもの如く上演時間は、入口や館内に貼ってあったんですけどね。
会社の定時が18時で、チャイムと同時に飛び出てドトール飛び込んでコーヒーとミラノサンドAをかっこんで、18時半ジャストに会館へ飛び込んだので、終演時間なんか知るかい
「休憩時間に気づけ」とオットに言われたけど、休憩時間はトイレに並んで入って済ませて時間がつぶれるのよ、女性は

『クラウディアからの手紙』公式ブログ→コチラ
太平洋戦争の終戦を、朝鮮で迎えた蜂谷彌三郎さん、久子さん夫妻。
日本に帰国しようとした彌三郎さんは、スパイ容疑をかけられソ連の強制労働収容所に送られます。氷点下40℃の想像を絶する過酷な環境での過酷な労働。
そして、クラウディアさんとの出会い。クラウディアさんとの37年間の生活。
ペレストロイカでソ連が崩壊し、日本との連絡が取れ、久子さんが今でも自分のことを待っているということを知る。でもクラウディアさんを置いては帰れないと彌三郎さんと、彌三郎さんを日本に帰そうとするクラウディアさん。
……そして51年ぶりの帰国。
こんな実話が元になった今回の舞台、休憩挿んでの約3時間はあっという間でした。

舞台はすごくシンプル。最小限の小道具とライティング。
コンテンポラリーダンス(?)によって表現される時間の経過と場面転換。
ダンスは最初「なにこれー?????」……でも時に笑いを取ったり和み系だったりして、ちょっとうとうとしてしまいそうな部分もあった(汗)物語の進行に、適度なスパイスになっていたと思います。

落ち着いた色の着物姿で、凛と毅然と夫を待ち続ける久子さん@高橋惠子さん。
小花柄のやわらかい色合いの洋服で、ばたばたとよく動き回る(笑)強くたくましい陽気なクラウディアさん@斉藤由貴さん。
この2人の真逆な佇まいが印象的でした。
斉藤さんの早口言葉にびっくり!(ごめん観たひとにしかわからない)

帰国のシーンでは実際の映像が流されました。
鳥取駅での51年ぶりの再会。しっかり抱き合う蜂谷夫妻。
すっごい反則だわ………これで泣くなっつーのがムリ。

「人の不幸の上に自分の幸せを築くことはできない」

クラウディアさんの言葉です。

異国の地でどんな状況にあるのかわからない夫を見捨てて、自分だけ新しい伴侶を見つけて新しい生活をおくるわけにはいかないと思った久子さん。
愛しい妻が祖国でずっと自分を待っているのを知っても、長い間自分を支えてくれたクラウディアさんを置いて、自分だけ妻の元へ帰るわけにはいかないと思った彌三郎さん。
51年夫を待ち続ける久子さんの存在を知って、自分が彌三郎さんを独り占めするわけにはいかないと思ったクラウディアさん。
ともすれば、人間性を失いかねない過酷な状況下で、人生の大半を過ごしてきた3人。
そんな彼らが持ち続けた人間らしいひとを思いやる心。
これがフィクションでなく実話だなんて、奇蹟以外の何ものでもないと思いました。

彌三郎さんが帰国されたのは平成8年。たった10年前。
彌三郎さんは生きて帰ることができました。彼の辿った帰国までの人生を想うと軽々しく言うことではないんでしょうが、彼は幸せなひとだと思います。
民間人・軍人問わず、いまだに消息の知れない人々が大勢いますから……。
戦後60年。若い人たちの中には、日本がアメリカと戦争していたことを知らない(学校で習ってるはずなのになー)ひとも多いようですね。
“10年前”の出来事が60年前に終わった戦争に繋がってることを思うと、“太平洋戦争”が風化するには早すぎます

舞台の感想じゃないなー、これ
“実話”がベースになってると、そっちに目がいっちゃうわ
とってもいい作品でした(なんて簡単なまとめ



彌三郎さん@佐々木蔵之介さんの台詞で「僕の今の心境です」って言って

立ちわかれ 稲葉の山の峰に生ふる 松としきかば 今帰り来ん(在原行平)

という和歌を口ずさむシーンがあります。

すっげー偶然。
というのも、この時期通勤電車で読んでた本がコレ↓
お能の見方

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この中に、行平のこの歌が出てくるんですよ(古今集収録で百人一首の16番。ご存知の方も多いですよね)
謡曲『松風』の題材になっている和歌なので、お能の本に出てくるのはごく普通のことなんだけど、びっくりしたわーおまけに、高橋さんが『松風』を謡い出すし~。

パンフに和歌は載ってたけど、それについての説明は載ってないみたいだし、『松風』に関してもなーんも説明なし。ほんのワンフレーズだから気にするほどのことでもないのか……。原作本には載ってるのかもしれません(私は未読

でも、和歌の意味と『松風』の内容を知ってると、この舞台一味違うんだけどなー。


《追記》
これ書くの忘れたら何にもならんわ。
この舞台を観ようと思った理由が、音楽が溝口肇さんだったからなのよね。
劇中の曲はよくわからないけど、エンディングのテーマ曲はよかったです。溝口サウンド全開
15年ほど前から彼のファンでして……最初に勝ったのがコレ。
彼の曲の中では、このアルバムの2曲目の“You Are There”が一番好きです。
視聴できるのでよろしければどぞ。
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4 コメント

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深く気高く潔く (わんた)
2006-03-10 06:07:57
おはようございます。

そうですよね、実話として、

実際に日本が通ってきた道程として捕らえなければですね。

彼らという存在の尊さにばかり目が行ってしまって

そこまで考えが至りませんでした。





そして和歌と松風の意味を知らずに見てきた人間がここにも。

こういうとき知識のベースがあるともっと深く楽しめるんでしょうね。

もうちょっと視野を広げなきゃ
返信する
うう… (みちとせ)
2006-03-10 22:13:46
水無月さんもごらんになったのですね~…

私も大阪で観ました。

わんたさんところでも書き込んできたのですが

私は亡父がシベリア抑留兵だったので

観ながらもいろんなことを思いました。

父は私に「シベリア抑留時代は楽しかった」と

よく話していました。

収容所で夜、「宮本武蔵」を諳んじて捕虜の中で人気者になったり、

広い農園でトマトを作った話なども楽しく聞きました。

でも、強制労働中にトロッコに轢かれて耳がちぎれたり、

運び込まれた病院でもろくな医者がおらず、見た目は五体満足でしたが、父は終生、耳が不自由でした。



楽しかった、だけだったはずがない!

なんだかね、そういったことを改めて思いました。

良いことじゃありませんが、生涯、ロシアをあまり良くは言わなかった父、

♪ここはお国を何百里~、という歌を好きだった父を、

年取ってからの子である私は、前世紀の遺物のように観てましたが、

確かにその歴史を生きてきた父からすれば、

「楽しかった」のも、それでも良い印象を持ち得ないのも、

知らない私たちからはなにも言えない事実なんでしょうね…。
返信する
わんたさんへ (水無月)
2006-03-12 22:14:53
実話がベースになってると、私はどうしても純粋に舞台を楽しめませんねー

実際のとこどうよ、とか、その後はどうなのよとか、よけいなことばっかり考えます。



和歌と謡曲については、ホントすごい偶然

でも、パンフに何の説明もないのは、ちょっとねー

説明するほど重要な部分じゃないのかもしれないけど
返信する
みちとせさんへ (水無月)
2006-03-12 23:05:57
お久しぶり~。元気でしたか?



「楽しかった」と言えるお父様は強い方ですね。

それ以上に辛い記憶の方が多いはずなのに。



蜂谷夫妻やクラウディアさん、そしてお父様のように、厳しい時代を生き抜いた人々特有の稀有な魂は、今の平和な時代では更に特別な輝きを放ちます。

当事者はあくまでも“人間として当たり前の心を持って”生きてきたつもりなのに、奇蹟のようにもてはやされる。

そういうこともあってか、多くを語らない人が多いようです。



戦争を知らない私たちは彼らの話を聞いて語り継ぐべきなんでしょうが、出来事は伝えることができても、様々な想いまで伝えることは不可能に近いですね。
返信する

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