月は東に

Get Out Of That Rut & Savor Life

『染模様恩愛御書』@大阪松竹座・10/15昼の部、10/26昼の部 その①

2006-10-30 05:03:29 | 歌舞伎Review
15日はオットと観ました。オット「なんで数馬は死なへんのや」私「そうだねえ。一緒に燃えるか、後追ってもよかったよねえ」…………すいません、オニ夫婦で(汗)


なんてこと言いつつも、どでかいポスターを買っちゃたわよ↑↑↑↑↑↑↑それも2枚とも(笑)



染模様恩愛御書(そめもようちゅうぎのごしゅいん)
細川の男敵討(ほそかわのかたきうち)

【みどころ】
この作品は『蔦模様血染御書(つたもようちぞめのごしゅいん)』という外題で明治22年11月、市村座で初演されました。当時は、本火を使った演出で大評判となりましたが、衆道(男色)という主題や、見せ場である大火事の演出の問題により長らく上演が途絶えていました。今回、その幻の傑作が、若き花形俳優の果敢な挑戦により新たに甦ります。
【あらすじ】
大川友右衛門(市川染五郎)は、浅草観音参詣の折、美しい若衆姿の印南数馬(片岡愛之助)を見染めます。数馬が細川家の小姓と知った友右衛門は武士の位を捨て、細川邸に中間として奉公するようになります。ある日、友右衛門は数馬の寝室に忍び、二人は衆道の契りを結びます。
数馬から横山図書(市川猿弥)という父の敵があることを打ち明けられた友右衛門は、数馬と互いの腕の血をすすり合い兄弟の義を結び、敵討ちの助力を約束します。
ところがこの様子を、かねてから数馬に心を寄せる腰元のあざみ(市川春猿)が見つけ、細川候(市川段治郎)の知るところとなります。
お咎めを蒙ると思いのほか、友右衛門の数馬への思いと、数馬の孝心の篤さに感銘を受けた細川候に、逆に士分に取り立てられた友右衛門は、いずれこの御恩に報いようと決心します。
ある日、細川邸に起こった火事はまたたく間に燃え広がり、このままでは細川家の宝である、将軍より拝領した御朱印が灰燼に帰すのも時間の問題となります。ここに馳せ参じた友右衛門は、御恩に報いるのはこの時をおいてないと火中に飛び込み、ついには自らの腹をかき切り、御朱印をその中に入れて……。
                                みどころ・あらすじ共に松竹歌舞伎サイトより



BLBLと煽りまくる松竹と煽られまくりの私達。
ところが蓋を開ければ“忠義と敵討ち”という筋がちゃんと一本通ったお芝居でした。
ただし、男と女まして女同士からは生まれなるべくもない、男同士の恋情の、愛情(love)へそして情愛(affection)への変化というエッセンスがあってこその“忠義と敵討ちの物語”なんだと思います。


【構成について】
講談師による解説は、グルーヴ感があってよかったですね。義太夫では聞き取りにくいときもあるし、イヤホンガイドだけでは情緒がないですもん。
台詞はわかりやすく、舞台転換も鳴物だけで場繋ぎをせず、花道での演出や講談師の台詞の合間になされてて、スピーディーに感じました。
ストーリーは起承転結単純明快。二幕十二場と細かい割にはすっきり纏まっていて、でも濃密な3時間を楽しめたと思います。
でも、あえて言うなら、すっきり纏まりすぎだったかなあ
スピーディーなのは構わないんですが、一定のテンポを保ってさらさらと流れていくお行儀の良さはちょっと気になりました。エピソードが多いので、詰まった内容に密度を感じるものの、もう少し遊びや奥行き、いい意味でのややこしさがあってもよかったかも。
要は、もっとドロドロでろでろぐちゃぐちゃした部分を期待してたのよ(笑)
業とか妄執とか因縁怨念、ひとの心に巣食う魑魅魍魎、暗い底なしの淵で彷徨う魂といったものを、歌舞伎というフィルターを通して妖しく美しく描いて欲しかったなー。
ま、私の嗜好とは違うところで物語が展開されてただけのことですが


【舞台装置・効果について】
ストーリーや構成同様、こちらもすっきりさっぱり(笑)
もうちょい色があってもよかったんじゃないかと思うものの、数馬やあざみの綺麗な衣装が映えて人物が際立ってた効果を考えると問題ないんでしょうね。
ライティングが歌舞伎の平面的なものではなく、スポットの多用で色々な方向からの光が、臨場感立体感を作り出していたように思います。
廻り舞台の活用に関しては、同じ和テイストの『吉原御免状』のものが非常に良くて印象に残ってるのでノーコメント。かかってるカネとヒトに格段の差があるものを比べちゃいかんけど
火事場のシーンは現代ではあれが精一杯かな。消防法で、本火の使用に限界があるから仕方ないですね。
きらきら火の粉は素敵 
ああいう劇場全てが舞台って感じの演出は大好きです(だからねえ、蜷川さん/笑←10/29の記事参照)
わくわくどきどき感いっぱいで楽しいし(今回は火事だから非常に語弊があるけども)きらきらみたいなのが降ってきたら記念品になるし(笑/そこかい)
あと、友右衛門の焼け焦げ感はリアルでしたね。走り回ってるときの衣装に付いた火の粉はもちろん、死んで戸板に乗せられた遺体からかすかに昇る煙の具合がまたなんとも……


【殺陣】
通常の歌舞伎より遥かにスピードアップで見応えありました。
染五郎さんは映像の時代劇作品とか新感線の舞台で歌舞伎以外の殺陣は慣れっこだろうから、太刀裁きが速くなろうとお構いなしでしょうが、ほぼ歌舞伎オンリーの猿弥さんや愛之助さんの殺陣も全く無問題。
特に猿弥さんは見事 大変失礼だけどお身体のフォルムからは想像できない太刀裁きの速さで(笑)かつ豪快で、いのうえ歌舞伎に是非!って感じ
愛之助さんは流麗。肩衣脱いで脇差に大刀を携えたままの殺陣は難しいと思うけど、図書の刀をかわし飛び違えるさまは実に軽やかでした。
染五郎さんはもちろん言うことないです
もうちょっと長い時間観ていたかったなあ。三つ巴の敵討ちの場面、あっという間に終わりだもんね



②へ続きます。たぶん今日の深夜にはUPできる……かな
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6 コメント

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待ってました! (あ~る)
2006-10-30 07:31:14
待ってました!

張り切ってコメント書きに参上します~(^^)

「すっきりまとまりすぎ」については同感。友右衛門の求愛を受け入れる前の数馬の迷いとか、1ヶ月以上も返事をせずにいた理由(母の死だけじゃなくて)とか、それでも恋心を押さえられない苦悩とか、そういうのをガッツリ見たかったんですよね、私も。

でもそこまで描くと3時間半じゃ済まなくなるし、笑い要素が少なくなって御贔屓筋にはさらに辛いものになったかも。途中でラブコメ路線に転換したことからして、なにわのお客様にはどんな悲劇にも「笑い」が必要なんだなー、と思いました。思わぬところで生温かく笑われるよりも、意識してドカンと笑わせるほうがいい、と思ったんでしょうね。

「舞台装置・効果」セットはシンプルでしたが、水無月さんの言うとおり、役者の存在が引き立っていましたね。余分なものがないからこそ、黒子が表に出ることがなかったのも良かったんじゃないかと。

「咲き乱れる一面のカキツバタ」はもう少し強調してほしかったな。

火事場の「赤い幕・炎の映像・赤白のキラキラ・本火少々」は舞台ならではの演出で素敵だったし、印象に残りました。蜷川さんのは昨年5月の「メディア」を見ましたが、四六時中、水(池)の中で物語を展開させる、その意図が分からなかった。意図も意味もあるんだろうけど、観客にはあまり関係ない気が…。

「友右衛門の死体っぷり」、ほんと見事でした。「火がついてる感」は光ファイバーかLED(発光ダイオード)か?くすぶってるのは生石灰(水で発火)を少量仕込んでいたとか?結構長い時間動かずにいる、「生命のない人形」のような染さま自身の死体演技もお見事でした。

「殺陣」は迫力があって面白かった!あざみ→数馬→友右衛門の順で殺陣のスピードがアップしていきましたね。伝統的な歌舞伎は「お約束」感がある、もっとゆっくりしたもの?(比較対照:平成中村屋の義経千本桜)

コメントにあるまじき長文でスマンです。続き楽しみにしてますー!!
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はじめまして! (てりあ)
2006-10-30 11:29:54
水無月さま、はじめまして。

いつも拝見させていただいておりましたが、「染模様恩愛御書」のレポを始められたのを機に、ご挨拶にまいりました。

私もいろいろ、ぶつぶつ言いながら(笑)楽しんだ舞台でしたが、ずっと歌舞伎をご覧になってきた方の感想が聞きたいと思っておりました。そうそう、と頷きつつ、なるほどなあ・・・と関心しつつ、読ませていただいております。

「染模様~」のレポ、続きを楽しみにしております。^^
返信する
まとまってきましたね。 (とみ)
2006-10-30 12:26:05
>水無月さま

ワタクシも書きかけましたが,フォーマット決めて1200字程度にまとめてしまいました。職業病や…。

恐ろしいことに1200字程度の見方しかしていないことに気がつきました。修行のやりなおしです。そこは,暖かい皆様の突っ込みや吹っかけられた議論で補っていただいています。

お忙しいとは思いますが,もしよろしかったら,蜷川さんへの怒り,やり場が無かったお受けいたしましょう。

なんで蜷川さんの弁護してるかわからんようになりながらも,援軍が来たりするのです。

ワタクシは染愛は全面賛成。殺陣,ギャグ,出血,濡れ場,殺し場のこってり不足という立場です。

染愛にも賛否両論あって,危うく反対派の砲火を浴びせられそうになりました。くわばらくわばら。

こちらで気晴らしさせていただきますね。

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あ~るさんへ (水無月)
2006-11-04 23:14:32
マジで長いな!(笑)
TB&リンクありがとうございます。

この作品は色々考えさせてくれますよね。
あーでもないこーでもないって沸いてきます。
復活狂言とはいえ新作と言ってもいいものなので、再演の度に試行錯誤切磋琢磨して、もっともっと良くなってできあがっていくのだと思います。
現在の歌舞伎の演目も、400年かけてそうして形になってきたんですよね。
『染模様恩愛御書』は生まれたて。
今後の展開が楽しみです
返信する
てりあさんへ (水無月)
2006-11-04 23:29:21
はじめまして!
コメントありがとうございます!

最初はぶつぶつ言いたくなるんですが(笑)ツボを押さえて観ると実に楽しい作品でした。
まだまだ成長・改良の余地があると思うので、再演を繰り返して、今後もずっと残る素敵な作品になっていってくれればいいなと思います。

感想の続きが②で止まってしまってます
どうか見捨てずに気長にお待ちください~
返信する
とみさんへ (水無月)
2006-11-04 23:51:59
1200文字に纏めるほうが大変だと思いますよ!
私もできるだけ短く纏めたいんですが、どうも枝葉末節が長くなって結局だらだら書き綴ってしまいます

蜷川さんの演出はちょっと肌に合わないなと思う部分もあったんですが、あくまでも部分で、作品全体に不満を持つことはなかったんですよ。
今回は最後にあんな状態になっちゃったので、全部台無し。
俳優陣の熱演を思うと残念です。
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