真空管フォノイコライザーアンプのアンプ回路部の紹介です。
回路構成
1チャンネルの回路図です。
左の入力から順に、増幅回路、RIAAイコライザー回路、増幅回路、レベル調整回路、バッファー回路の構成となっている。
・1段目、2段目の増幅回路は両方とも同じ構成で、カソード抵抗にコンデンサーをパラにして、無帰還型(フィードバック無し)としている。歪み特性の結果から、無帰還でも充分な性能を有している。
ロードライン図を示す。
赤い線が1段目の静特性、2段目の静特性、動特性を示す。黒い線は、1段目にイコライザー回路が接続された場合の動特性だ。
3.6mAの電流を流して、歪が少ない動作点を選んだのが良い結果に繋がっているようだ。
・3段目のレベル調整回路は、1段目、2段目の増幅回路から、カソードのコンデンサーを外し、カソード抵抗を追加した構成だ。カソード抵抗による電流帰還量により、レベル調整が可能だ。
回路全体のゲインが45dB(178倍)となるように、カソードに9.1KΩの抵抗を追加して、28dBから9.4dBまでゲインを下げている。
・ゲイン配分
1段目増幅回路:27.6dB +RIAAイコライザー回路:-20.4dB +2段目増幅回路:28.4dB +レベル調整回路:9.4dB =45.0dB(177倍) (実測値:43.8dB)
1段目と2段目の増幅回路でゲインが違うのは、1段目では後段にRIAAイコライザー回路が接続するので動特性でのプレート抵抗値が減少するためだ。
なお、本イコライザーアンプの後段にプリアンプを利用する場合は、レベル調整回路を省いても良い。2段目の増幅回路のプレート出力を、4段目のバッファー回路のグリッド入力に直接接続する。
参考にした単行本では、レベル調整回路の前に各種の信号入力、ボリューム調整を付加して、余ったゲインを利用している。今回の自作ではイコライザーアンプのみの機能として、高音質を目指している。
・4段目のバッファー回路は、カソードフォロアーで出力インピーダンスを下げている。
カソードフォロアー用には、普通、真空管12AU7が採用されるが、E88CCも同様に電流が流せるタイプで、また出力インピーダンスも下げられる。更に、同じ真空管4本を使えるメリットは大きく、E88CCを採用した。
出力のコンデンサーは2.2μFと大容量の値を選んでいる。後段のメインアンプの入力インピーダンスが10KΩでも、低周波域の周波数特性が落ちないようにした。
音質向上
抵抗とコンデンサーは、回路の一部に高音質素材を選んで採用した。目指したのは混変調の無いヌケの良い音、アタックを感じる音だ。
・抵抗
抵抗の被膜の誘電率、材料の磁性体等が音に影響を与えるようだ。理由のつかないものは採用しなかったので、以下のスケルトン抵抗のみの利用となった。
2Wのプレート抵抗、最終段のカソード抵抗: 福島羽葉電機のスケルトン抵抗 (抵抗の被膜を除去して、抵抗体上に生じる容量成分を無くしている。)
・コンデンサー
誘電正接 (tanδ、ESR)が小さく、耐電圧が高いコンデンサーを選んだ。ただ、その特性のコンデンサーを部品専門WEBサイトで探すと、非常に高価だ。また、データシートも掲載されていない。
結局、Panasonic、日本ケミコンの産業用コンデンサーを採用した。
段間の0.1μ、1.0μ、2.2μFコンデンサー: PanasonicのECQUAシリーズ メタライズドポリプロピレンフィルム
RIAAイコライザーの0.047μ、0.015μFコンデンサー: PanasonicのECHU(C)シリーズチップコン メタライズドPPSフィルム
1段目、2段目のカソードのコンデンサー470μF: 日本ケミコンのPSGシリーズ 導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ
なお、入力部の220pFのコンデンサは、MMカートリッジの周波数特性改善用に付加してある。(NISSEIのポリプロピレンフィルム)
エージング
最初は高域のみの厚みのある音から始まり、徐々に低域が出始めて音が落ち着いてきた。その後、充分な量のしまった低音になるまでに、1週間以上掛かった。多分、PanasonicのECQUAシリーズ フィルムコンデンサーが長いエージング期間を要したと思っている。
実装
1チャンネルを1枚のPWB(aitendoの真空管ユニバ基板 UP-MT9P-B)に実装した。PWBにソケット用穴が空いており、真空管のソケットを挿入して金具でねじ止めしてある。PWB裏面には、ソケットの足があるので、空中配線を含む部品実装がある。
回路図から部品配置の実装図を作成したのだが、真空管アンプ特有の以下の3条件が重なり苦労した。
・2つのアンプ回路がそれぞれ真空管の円周の対象の位置にある。
・1.0μ、2.2μFコンデンサーが大きい。
・ソケットを固定する金具が大きい。
3度目の実装図作成でなんとか配膳できた。
逆作用ピンセット
ブリント板への部品のはんだ付けでは、右手にハンダごて、左手にハンダを持つと、部品をはんだ付け位置に固定できない。
そこで、逆作用ピンセットを部品固定に利用した。部品を確実に挟むために、先端にはシリコンチューブを取り付けた。
2製品(HOZAN、goot)を購入して判ったのだが、HOZANの方が先が細い。1本だけならHOZANの方だ。(1mm経のシリコンチューブ使用)
チップコンのはんだ付けには、必須だった。
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